体用(読み)タイヨウ

デジタル大辞泉 「体用」の意味・読み・例文・類語

たい‐よう【体用】

文法で、体言用言
たいゆう(体用)

たい‐ゆう【体用】

本体とその作用。たいよう。
連歌俳諧で、山・水辺・居所に関する語を分類して、その本体となる「峰」「海」などを体、その作用・属性を表す「滝」「浪」などを用としたこと。
能楽で、基本的な芸と、そこから生じる風趣。

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精選版 日本国語大辞典 「体用」の意味・読み・例文・類語

たい‐ゆう【体用】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ゆう」は「用」の呉音 )
  2. 本体とそのはたらき。たいよう。
    1. [初出の実例]「夫衆生為別報之軆、国土為共報之用。軆用不一、所以応知」(出典:教行信証(1224)四)
    2. 「燈をはなれて光なし。波をはなるる水なし。体用(タイユウ)不二なり」(出典:地蔵菩薩霊験記(16C後)八)
  3. 連歌や俳諧で、山類、水辺、居所などの語彙のうち主体的なものを示す体(たい)と、作用的・属性的なものを示す用(ゆう)とに分類していう語。その付け方によって体付け、用付けと区別して、いろいろ制限がある。
    1. [初出の実例]「体用の事」(出典:連理秘抄(1349))
  4. 能楽論で、本体とはたらき、すなわち基本的な芸とそこから生まれる風趣。また、主であるものと従であるものとを示すこともある。
    1. [初出の実例]「能に体(タイ)、用(ユウ)の事を知るべし、体は花、用は匂(にほひ)のごとし」(出典:至花道(1420)体・用の事)

体用の補助注記

は、和歌では使われないので、仏教の「体用相」、また「詩人玉屑」の影響によるもの等、種々の説が行なわれている。


たい‐よう【体用】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 本体とそのはたらき。たいゆう。
    1. [初出の実例]「体用大奇、我大師薄伽梵其人也」(出典:性霊集‐八(1079)為弟子僧真体設亡妹七々斎并奉入伝燈田願文)
    2. 「遍計(へんげい)・所執は都(すべ)て体用(タヒヨウ)なし」(出典:米沢本沙石集(1283)三)
  3. 原理と、その応用や実際面での運用。
    1. [初出の実例]「我英国の盛大なる国典并に法律の体用来歴に就て益々見聞を広めん事を渇望せん」(出典:英政如何(1868)一八)
  4. 文法で、体言と用言。
    1. [初出の実例]「凡て言に体用の別あり。体とは動かぬ言を云、用とは活くを云」(出典:柳園叢書本言語四種論(1824))
  5. たいゆう(体用)

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改訂新版 世界大百科事典 「体用」の意味・わかりやすい解説

体用 (たいよう)
tǐ yòng

中国哲学思想・レトリック運用のための概念範疇。その基本形式は〈甲は丙の体,乙は丙の用〉または〈甲は乙の体,乙は甲の用〉つまり〈甲は体なり,乙は用なり〉という風に体用が対挙されることである。因果概念がたとえば風と波の関係をいうのに対して,体用は水と波の関係を示す。しばしば実体とその作用(または現象)と解されるが,もっとゆるやかに〈体とは根本的なもの,第一次的なもの,用とは従属的なもの,二次的なもの〉としておく方がよい。中学(中国固有の学問)を体とし西学を用とする,というような言い方も多いからである(中体西用論)。本来はカラダとそのハタラキの意味であったと思われるが,それが抽象化され範疇化されるにいたったのは六朝時代の仏教哲学界においてであり,宋代には完全に一般のものとなった。宋学朱子学)もそれなくしては成立しえなかったと思われる。なお旧中国の思惟では,因果範疇よりも体用範疇の方が優勢であったように見うけられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「体用」の意味・わかりやすい解説

体用
たいよう

中国哲学上の概念。本体と作用の略称本質とその現象の意。現象の内奥にその根源者・本質をみようとする考え方はもと老荘思想にある。その考え方は、仏教が流入して「事」と「理」と表現され、とくに華厳(けごん)哲学において論議が深められた。体・用論が中国思想史上、主要な課題となったのは、宋(そう)代以後の近世哲学においてである。存在の本質を「本体」(たとえば性)といい、その発現を作用(たとえば情)という。これが「未発」「已発(いはつ)」の時間論と結合して、存在と時間の関係をめぐる論議が実践論の主要課題となった。朱子学と陽明学の体用論が代表的である。朱子学では実存者の背理可能性を考察して、本体と作用、未発と已発を分けて、まず未発の本体を涵養(かんよう)して已発の作用を制御することを説いた。陽明学では実存者の自力能力を確信して両者を分割不可能とみて渾一(こんいつ)論を説いた。この両論を軸にさまざまな体用論が提起されたが、これは中国哲学の貴重な遺産であり、後に与えた影響はきわめて大きい。

田公平]

『荒木見悟著『仏教と儒教』(1963・平楽寺書店)』

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普及版 字通 「体用」の読み・字形・画数・意味

【体用】たいよう

本体とその作用。〔大学章句、補伝五〕力を用ふること久しくして、一旦豁然(くわつぜん)として貫するに至りては、則ち衆物の表裏粗、到らざるは無く、吾が心の體大用、らかならざるは無し。

字通「体」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「体用」の意味・わかりやすい解説

体用
たいよう
ti-yong

中国の六朝以後,仏教において頻繁に用いられた概念であるが (したがって,元来は「たいゆう」と読む) ,宋以後には,いわゆる宋学や明学の儒者にも多用された。基本的な意味は,本体と作用 (または現象,属性) で,両者は表裏一体とされる。宋学では,「」を体,「」を用として,その理気説の重要な概念としているが,特に有名な命題としては,程頤 (ていい) の「体用一源」,朱子の「全体大用」がある。

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