(読み)リ

デジタル大辞泉 「理」の意味・読み・例文・類語

り【理】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]おさめる きめ ことわり
学習漢字]2年
玉石を磨いたときに現れる筋のある模様。広く、筋の通った模様。「肌理きり地理文理木理連理
物事に備わった筋道。「理性理想理非理由理論一理義理窮理原理合理事理条理情理心理真理生理定理道理背理物理無理倫理論理
きちんと筋道を立てる。「理会理解推理
きちんと整える。おさめる。「理事理髪理容管理経理受理修理処理審理整理総理代理調理料理
中国哲学で、宇宙の根本。「理気
自然の理を研究する学問。「理科
「物理」「理科」などの略。「理工理化学文理
[名のり]あや・おさ・おさむ・さだむ・さとる・すけ・たか・ただ・ただし・ただす・とし・のり・まさ・まろ・みち・よし
[難読]肌理きめ

こと‐わり【理】

《「断り」と同語源》
[名]
物事の筋道。条理。道理。「彼の言葉はにかなっている」「盛者じょうしゃ必衰の
わけ。理由。
「いみじう―言はせなどしてゆるして」〈能因本枕・三一九〉
[形動ナリ]当然であるさま。もっともであるさま。
「いかで都へとたより求めしも―なり」〈奥の細道
[類語]論理的理路整然ロジカル道理事理条理論理理屈筋道道筋辻褄つじつま理路ロジック合理合理的理詰め中正方正適正真正純正フェア正しい正当至当正道本筋正則公正まっとうまとも合法合法的ノーマル

り【理】

物事の筋道。ことわり。道理。
㋐不変の法則。原理。理法。「自然の
㋑論理的な筋道。理屈。ものの道理。「の通らぬ話」「を尽くす」「盗人にも三分の
中国宋代の哲学で、宇宙の根本原理。→理気
[類語]論理的理路整然ロジカルことわり道理事理条理理屈論理筋道道筋つじつま理路ロジック合理合理的理詰め中正方正適正真正純正フェア正しい正当至当正道本筋正則公正まっとうまとも合法合法的ノーマル

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精選版 日本国語大辞典 「理」の意味・読み・例文・類語

り【理】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物事の筋道。不変の法則。ことわり。道理。また、理屈。
    1. [初出の実例]「国家為政、兼済居先、去虚就実、其理然矣」(出典:続日本紀‐和銅二年(709)正月壬午)
    2. 「理は万民の悦び非わまた諸人の難ぎたり」(出典:幸若・腰越(室町末‐近世初))
    3. [その他の文献]〔易経‐繋辞上〕
  3. 理性。
    1. [初出の実例]「御心のたけさ、理のつよさ、さしもゆゆしき人にてましましけれども」(出典:平家物語(13C前)一)
  4. 物の表面にあらわれたこまかいあや。文理。きめ。〔韓非子‐解老〕
  5. 仏語。真理としての普遍的なもの。また、現象の背後にあって現象たらしめているもの。事(じ)に対する。
    1. [初出の実例]「然理則今昔雖異、只是一理」(出典:法華義疏(7C前)一)
    2. 「教の権に対して暫く実証の処を理といへる」(出典:貞享版沙石集(1283)一〇)
  6. 宋儒の説で、人倫を含む宇宙間の根本原理、あるいは存在の理法。
    1. [初出の実例]「人物の生は理同じうして気異なり」(出典:山鹿語類(1665)四一)
    2. [その他の文献]〔語孟字義‐上・天道〕
  7. 理科、物理学などの略称。
    1. [初出の実例]「東京文部省にて、法理医文諸科に於て博士号を授かりし者三十許名」(出典:一年有半(1901)〈中江兆民〉一)

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普及版 字通 「理」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音]
[字訓] おさめる・すじ・きめ・あや

[説文解字]

[字形] 形声
声符は里(り)。〔説文〕一上に「玉を治むるなり」とあり、〔韓非子、和氏(くわし)〕に「王乃ち玉人をして玉を理(をさ)めしむ」とみえる。玉に文理があり、磨いてそれをあらわすことをいう。人の皮膚にも肌理があり、地にも山川の文があるので、天文に対して地理という。人情を情理といい、道理の存するところを天理という。理気二元が天地の道とされた。

[訓義]
1. おさめる、みがく、ただす、ととのえる。
2. 玉のあや、すじ、きめ。
3. みち、ことわり、わかつ、是非、さが。
4. 獄官。

[古辞書の訓]
名義抄〕理 タダス・タダシ・ミチ・ノリ・トトノフ・ヲサム・マツリゴト・ヤム・ツクロフ・マサ・スヂ・ヨシ・ワカル・シワ・コトワル・コトハリ・アヤ・メノママヨシ/料理 シツラフ

[語系]
理・里・(吏)liは同声。里は田社のあるところで、経営的な農地。その条理の整然たるところから、玉の文あるものを玉理・文理という。吏治。ともに治理の意において通じる。農穀を治めることをliといい、また同系の語とみられる。

[熟語]
理運理繹・理解・理会・理外・理学・理官・理気・理紀・理義・理拠・理窟・理決・理構・理国・理債・理財・理産・理糸・理事・理趣・理処・理訟・理心・理人・理水理数・理勢・理正・理曹・理喪・理想・理対・理致・理治・理知・理当・理道・理能・理髪・理非・理分・理平・理法・理名・理命・理由・理要・理乱・理路・理論
[下接語]
一理・覈理・学理・管理・肌理・義理・究理・窮理・空理・経理・玄理・原理・公理・校理・合理・佐理・至理・事理・辞理・手理・受理・修理・順理・処理・鋤理・訟理・燮理・条理・常理・情理・心理・真理・審理・人理・推理・生理・性理・政理・整理・摂理・節理・絶理・理・奏理・綜理・総理・大理・代理・談理・地理・治理・調理・通理・定理・哲理・天理・統理・道理・背理・非理・膚理・物理・分理・文理・弁理・法理・脈理・妙理・無理・名理・木理・幽理・乱理・料理・倫理・連理・論理

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改訂新版 世界大百科事典 「理」の意味・わかりやすい解説

理 (り)

〈天〉や〈道〉とならぶ,中国思想史上の重要な概念。本来,理は文字自身が示しているように,璞(あらたま)から美しい模様を磨き出すことを意味した。《戦国策》に〈鄭(てい)人,玉のいまだ理(みが)かざるものを謂(い)いて璞となす〉とみえている。そこから〈ととのえる〉〈おさめる〉,あるいは〈分ける〉〈すじ目をつける〉といった意味が派生する。《詩経》信南山の詩に〈われ疆(きよう)しわれ理す〉とあるのは,田畑に縦・横の境界線を引いて区画することをいい,おそらくこれは現在の文献のなかで最も早い理字の用例であろう。このように理は初め動詞として使われたが,次に〈地理〉〈肌理(きり)〉(はだのきめ)などのようにひろく事物のすじ目も意味するようになる。それが抽象化され,秩序,理法,道理などの意に使われるようになるのは,次の段階のことであろう。

 《墨子》非儒篇に〈不義には処(お)らず,非理は行わず〉とあるのは,理が道徳的規範の意で使われた早い例である。《孟子》告子上篇にも理は義と併用されている。《荘子》では自然の理法としての理があらわれ,天と結びついて〈天理〉となったり,〈道〉と並列的に使われたりしている。道と理の違いは,前者が統名(包括的概念)であるのに対し,後者細目(個別的概念)であると考えられていた(《韓非子》解老篇など)。《荀子(じゆんし)》にはおびただしい理字の用例があり,先秦の理の観念をほとんど網羅しているが,理を礼楽制度(文理といわれることもある)ととらえるところに荀子の思想的な独自性がある。

 その後,理は仏教によって深化されるが(とくに華厳(けごん)教学),宋代に理を第一原理とする思想があらわれ,理はそれ以後,中国思想史の主役となった。程頤(ていい)(伊川)と朱熹(しゆき)(子)によって大成された新儒教(朱子学)がそれで,そこではすべての存在するものはに,その秩序は理に収斂しゆうれん)され,この理と気の2本の柱によって世界や人間のありようとあるべき姿が説かれた。道学や理学と自称したこの教義における理とは,存在するもの(気)に秩序を与える原理であるが,理は個々の事物に内在しつつ一なる理=太極(たいきよく)によって統括されている。この構造を〈理一分殊(ぶんしゆ)〉と呼ぶが,その一なる理は朱熹においては,頭上に君臨する何か実体的存在のごときものとして考えられていた節がある。また,理の内実は結局のところ仁義礼智信の倫理的規範であり,個我の解放を推し進める人々には人間の欲望を抑圧する元凶と映り,たとえば清の戴震(たいしん)などから〈理は人を殺す〉という批判を浴びた。
理気説
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「理」の意味・わかりやすい解説


中国思想における重要概念の一つ。その字義は物事の筋目、事物の条理法則をいう。理という語は『論語』『老子』にはみえず、『孟子(もうし)』にはわずかに「条理」の語がみえるだけで、戦国後期の『荘子(そうじ)』(外篇(がいへん)、雑篇)、『荀子(じゅんし)』『韓非子(かんぴし)』などに多くみえる。『荘子』では道がすべての事物にあるという主張から、道と事物とのかかわりを問題にしながら万物の理が説かれている。『荀子』にも「事理」「物の理」がみえ、『韓非子』では道を法として展開するとともに、道と理との関係を規定して、理が個物化・特殊化の原理であることをいっそう明確にした。こうした理の観念は漢代の『淮南子(えなんじ)』で深められる一方、戦国末から漢代にかけて道家の思弁の影響を受けた儒家文献において、『楽記』の天理・人欲の論、『易経』説卦伝(せっかでん)の「窮理尽性」の説がつくられ、後世に多大の影響を与えた。

 理の概念は、魏晋(ぎしん)の玄学において有・無の議論とかかわって本体的な解釈を施され、六朝隋唐(りくちょうずいとう)期の中国仏教学のなかで、体用の論理を根底に置きながら、後の宋(そう)学の理につながる完全に本体的な形而上学(けいじじょうがく)的概念となった。とくに華厳(けごん)教学では「理事無礙(りじむげ)」「理法界」という、究極の境地を理の世界としてとらえる宗教哲学が生まれた。宋代の新儒学においては、理は気と並んできわめて重要な役割を果たした。程朱学では、一物に一理があり、「理一分殊」と称し、性即理の説から、事事物物の理を窮めることによって己に内在する理の発現を図るという「格物窮理」説を唱えた。これは、理を個物の原理と同時に普遍原理とすることによって、存在法則と道徳規範との一致を説こうとするものであった。朱熹(しゅき)(朱子)以後、こうした理の性格や理気の関係をめぐり、さまざまな考え方が出された。

[大島 晃]

『小野沢精一他編『気の思想』(1978・東京大学出版会)』『山田慶児著『朱子の自然学』(1978・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「理」の意味・わかりやすい解説



Li

中国哲学用語。物の真実な存在を規定する唯一性をいう。古代には人の性や絶対普遍の道に対し,個々の物の真実を規定するものをいったが,次第にすべての物の実在を規定する普遍的理が考えられ,12世紀頃から,いわゆる理気二元論の立場の朱子学では,性は形而上的本質であって,普遍的であるとともに形而下の個物の実在を規定するとし,また存在論的な「所以然〈しかるゆえん〉の故」と実践的な「所当然〈まさにしかるべきところ〉の理」とを説く。これに対し陸王学は理一元論の立場を取り,物は普遍的な一理によって規定されるとし,したがって「心即理」という体認を唱える。その後,形而下のにこそ理があると考えられるようになり,経験的原理,原則の概念に近づいている。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【礼】より

…中国で礼といえば,日常の礼儀作法にとどまらず,冠婚葬祭の通過儀礼はもとより,家,地域社会,学校,朝廷といった場における作法や式次第も包括する。特定の時と場にふさわしい,対他的な身体行動を規範化したもの,といえるだろう。のみならず,こうした個人の身体行動を超えて,国家を維持し運営してゆくためのシステムの総体もまた,礼の名で呼ばれた。《周礼(しゆらい)》は《儀礼(ぎらい)》《礼記(らいき)》とならぶ〈三礼(さんらい)〉の一つであるが,この古典的礼書には,宇宙の秩序になぞらえて官僚制度や文物典章が整然と記述されている。…

【悪】より

…〈悪〉という字の〈亜〉は古代の住居の基址を上から見た形で,押さえつけられたいやな感じをあらわすとされるし,北京語の〈悪心〉は,胸がつかえたときの不快感をいう。 悪とは何かという問題は,昔から倫理学の難問とされてきたが,西洋と東洋ではかなり違った考え方が見られる。西洋では,古代キリスト教の教父たちがこの問題と取り組んでいる。…

【朱子学】より

…中国,南宋の朱熹(しゆき)(子)によって集大成された思想体系。朱熹自身は自己の教義を〈道学〉〈理学〉〈聖学〉〈実学〉〈義理の学〉などと呼んだ。これらは本来,北宋時代に興った新儒教の一派の自称であって,朱熹はその教義のもっとも正統な後継者をもって自任していたのである。…

【心学】より

…そのため禅心学は無の哲学をその中核に保有する。これに対抗して宋の程朱学(朱子学)は理学(性理学,道学)を主唱した。彼らは禅心学を,定準なき心に安易に依存し容易に私意妄行に陥り,これでは主体性を確立し人格的に自立することも不可能であり,経世済民の責任を担うこともできない,と激しく非難した。…

【性即理】より

…北宋の程頤(ていい)(伊川)によって提唱され,南宋の朱熹(しゆき)(子)によって発展させられたテーゼ。程伊川と同時代の張載(横渠(おうきよ))は〈心は性と情とを統括する〉と述べたが,伊川―朱子によれば,性(本性)は理であるのに対して情(感情,情欲としてあらわれる心の動き)は気であるとされる。は本来善悪とは関係のない存在論的なカテゴリーであるが,朱子学では心を形づくる気は不善への可能性をはらむとみなすので,情=気の発動いかんによっては本来的に天から賦与されている善性=理がゆがめられるおそれがある。…

【中国哲学】より

…中国では文化の担当者が政治家・官吏であったため,学問が現実生活の必要に密着しすぎ,理論としての体系を構成することが不十分であった。哲学もまたその例外ではなく多くの場合,道徳学・政治学の域にとどまることが多かった。…

【程頤】より

…このときに書かれたのが,その思想の総決算というべき《程氏易伝(えきでん)》(《易経》の注釈書)であった。彼の思想はひと口に〈理〉の哲学といわれるが,理と気を峻別し,一事一物に宿る理の追求(窮理)を学問の根底にすえた。また,〈性即理〉説にもとづいて人間性のたえざる純化と向上を説き,その修養法として〈窮理〉と〈居敬〉の双修を提唱した。…

※「理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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