日本大百科全書(ニッポニカ) 「倉岳」の意味・わかりやすい解説
倉岳
くらたけ
熊本県南西部、天草(あまくさ)郡にあった旧町名(倉岳町(まち))。現在は、天草市の東部にあたる地区。旧倉岳町は1960年(昭和35)町制施行。2006年(平成18)本渡(ほんど)市、牛深(うしぶか)市、有明(ありあけ)町、御所浦(ごしょうら)町、栖本(すもと)町、新和(しんわ)町、五和(いつわ)町、天草町、河浦(かわうら)町と合併し、天草市となった。倉岳の名は山岳信仰の山、倉岳(682メートル、天草の最高峰)による。旧町域は天草上島の南部に位置し、八代(やつしろ)海に臨む沿岸地区から樹枝状に北に延びている小規模な沖積低地、あるいは段丘礫(れき)層からなる台地を除けば、地域のほとんどを火山岩の貫入のある堆積(たいせき)岩からなる低山性の山地で占められている。しかし、山林率は県平均の半分にも満たず、産業の中心は、ブタの飼養を副業とした稲作農業に、新たに加わった花卉(かき)(寒ギク)、野菜(レタス)、果樹(ミカン)などの園芸農業と、八代海を漁場とする海面漁業(船引網、刺網(さしあみ)漁)、棚底(たなそこ)湾を養殖水域とした養殖漁業(真珠、マダイ)とにある。天草五橋完成(1966)後、国道266号、それに接続する主要地方道、一般県道の整備が急伸し、繊維製品などの工場進出もみられるが、様相を大きく変えたのは漁業で、とくに夏から秋にかけてのタイ釣りシーズンには、まさに観光漁業そのものになる。雲仙天草国立公園の一部に含まれる。
[山口守人]