元服曾我(読み)げんぶくそが

精選版 日本国語大辞典 「元服曾我」の意味・読み・例文・類語

げんぶくそが【元服曾我】

  1. 謡曲四番目物喜多流。宮増作という。曾我十郎祐成は、親の敵を討つために箱根の寺の別当に預けてある弟箱王の五郎時致を連れ出して、曾我に帰る途中自分の手で弟を元服させる。そこへ別当が来て祝い重代太刀を五郎に与え、兄十郎はこれを祝って男舞を舞う。

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改訂新版 世界大百科事典 「元服曾我」の意味・わかりやすい解説

元服曾我 (げんぷくそが)

(1)幸若舞曲曲名曾我物に分類される。成立年時不詳。箱根権現稚児であった箱王は,源頼朝に随行した親の敵,工藤祐経(すけつね)の面体をひそかに知ろうとするが,かえって祐経に気づかれ,重代の小刀を与えられる。その後,兄の曾我十郎祐成は,弟箱王の剃髪の前に会っておこうと箱根に登る。そのとき,兄弟は敵討への固い決意を確かめ合い,共に箱根を下り,北条時政を烏帽子(えぼし)親として元服する。幸若舞曲の他の曾我物同様,仮名本《曾我物語》に近い内容であるが,兄弟対面の場面などに,真名本の描写に近いと思われるところもある。幸若に先行すると思われる同名の能があるが,本曲とも《曾我物語》とも異なった点もある。幸若や能は,《七十一番職人歌合》や能《望月》からうかがわれるように,現行の《曾我物語》とは別系の曾我兄弟の語り物から派生したと考えられる。
執筆者:(2)能の曲名。四番目物現在物宮増(みやます)作。シテは曾我十郎。曾我十郎は,工藤祐経を父の敵とねらっていたが,弟の箱王のいる箱根寺の別当(ワキ)を訪れる。別当は,箱王を父母の依頼で出家させるために預かっていたのだが,十郎の願いを聞き入れ,箱王(子方)を呼び出して十郎に渡す。別当との別れを惜しんで寺を出た帰り道で,箱王はいま元服をしてしまおうと言い出す。このまま帰郷しても母の同意を得られないからという理由である。十郎も承諾し,自分たち兄弟の身の不運を嘆きながら,元服をさせて烏帽子を着せる(〈クセ〉)。そこへ別当が追ってきて,元服の祝いに太刀を与え,杯を勧めるので,十郎が喜びの舞を舞う(〈男舞〉)。上演はきわめて稀だが,ワキのしどころが多いので,ワキ方の主催する能会で出されることがある。
小袖曾我
執筆者:

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「元服曾我」の解説

元服曾我
(通称)
げんぷくそが

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
初冠曾我皐月富士根
初演
文政8.5(江戸・中村座)

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世界大百科事典(旧版)内の元服曾我の言及

【宮増】より

…観世座系)に10曲,同じく《自家伝抄》(1516年奥書。金春座系)に28曲の能の作者として記載するが,両書で曲名が共通するのは《元服曾我》《調伏曾我》の2曲のみで,両説の信憑(しんぴよう)性には疑問が多い。とくに《自家伝抄》の作者説はほとんど信ずるにたりないものであり,《能本作者注文》も宮増に関する記事は必ずしも万全ではないであろうから,いずれにせよこれらに基づき宮増の作風を論ずるのは慎重を要する。…

※「元服曾我」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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