「古事記‐上」「因幡風土記逸文」には、鰐を騙す狡猾な側面と、騙した相手に報復される無力な姿とが対照的に描かれる。仏典に典拠を持つ「今昔‐五・一三」には、帝釈が化した老人をもてなすために、兎が我が身を焼いて供する説話が見える。死後兎はその誠実さをたたえられ月に住むことになるが、この説話は講経談義の場においてさかんに語られ、「月の中で兎が餠をついている」という伝説はこれらを通じて流布されたらしい。
「書紀‐斉明五年三月」に「問菟、此をば塗毗宇(トヒウ)と云ふ。菟穂名、此をば宇保那(ウホナ)と云ふ」とあって、「菟」字は「ウ」と訓んでいる。