兪樾(読み)ユエツ

デジタル大辞泉 「兪樾」の意味・読み・例文・類語

ゆ‐えつ〔‐ヱツ〕【兪樾】

[1821~1906]中国末の考証学者・文人徳清浙江せっこう省)の人。あざな蔭甫いんほ。号、曲園。王念孫王引之父子学風を継ぎ、経書諸子を研究。著「群経平議」「古書疑義挙例」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「兪樾」の意味・読み・例文・類語

ゆ‐えつ‥ヱツ【兪樾】

  1. 中国清末の考証学者。字は蔭甫、号は曲園。王念孫の学を継ぎ、易学から小説に至るまで、数多くの著述がある。代表作は「群経平議」「古書疑義挙例」で、主なものは彼の全集「春在堂全書」に収められている。(一八二一‐一九〇六

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「兪樾」の意味・わかりやすい解説

兪樾
ゆえつ
(1821―1906)

中国、清(しん)末の学者。曲園と号す。浙江(せっこう)省徳清県の人。1850年(道光30)の進士。曽国藩(そうこくはん)の知遇を得て翰林(かんりん)院編修から河南学政に任じられたが、38歳で致仕(ちし)し、あたかも太平天国に続く国家存亡の世情をよそに、李鴻章(りこうしょう)らの援助のもと講学、読書、著述の生活を送って長寿を全うした。主著の『群経平議』『諸子平議』各7巻および『古書疑義挙例』7巻などはすべて、高郵(こうゆう)の王氏すなわち王念孫(ねんそん)・引之(いんし)父子の成果を継承発展したものであると自負している(『春在堂全書録要』)。しかし、その学はむしろ後学の孫詒譲(そんいじょう)、王先謙、章炳麟(しょうへいりん)をまって発展した感がある。才気余暇にまかせての著作量は清代随一とうたわれ、『春在堂全書』480巻を残すが、これは、前記の主著のほか詩詞、随筆、筆記、戯曲、通俗文芸の評論、日本漢詩の選集(『東瀛(とうえい)詩選』『東海投桃集』)など、雑多な内容からなっている。さらに『七侠(しちきょう)五義』のような通俗小説にも筆を染めるなど、総じて該博な知識と旺盛(おうせい)な好奇心とを頼んだ快楽主義者であったと評してよいであろう。なお、文芸評論家兪平伯(ゆへいはく)はその曽孫(そうそん)である。

[宮内 保 2016年3月18日]

『『清史稿 482巻』』『『清代樸学大師列伝 6巻』』『『清代七百名人伝 7編』』『章炳麟著『兪先生伝』(『太炎文録 初編 2巻』)』『梁啓超著、小野和子訳『清代学術概論』(平凡社・東洋文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「兪樾」の意味・わかりやすい解説

兪樾 (ゆえつ)
Yú Yuè
生没年:1821-1906

中国,清末の古典学者,文学者。字は蔭甫,曲園と号する。浙江省徳清県の人。道光30年(1850)の進士。数年にして官を去り,蘇州・上海・杭州の私塾で教育に従事した。清朝考証学の流れを受け,とくに文字の仮借に注意して,古典の解釈に新説を出した。《群経平議》《諸子平議》《古書疑義挙例》が有名である。詩文にもすぐれるほか,戯曲・小説にまで興味を持った。著書は《春在堂全書》にすべて収める。現代の評論家兪平伯はその曾孫。
東瀛(とうえい)詩選
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「兪樾」の意味・わかりやすい解説

兪樾
ゆえつ
Yu Yue

[生]道光1(1821)
[没]光緒32(1906)
中国,清末の学者,文学者。浙江省徳清の人。字,蔭甫。号,曲園。道光 18 (1838) 年進士に及第。翰林院に入って庶吉士から編修に進み,河南学政となったがまもなく退官。以後,蘇州,杭州などで教育に従事しつつ著述に努めた。清末考証学の大家で,王念孫,王引之父子の学風を継ぐことを目的として『群書平議』『諸子平議』『古書疑議挙例』を著わした。怪談集『右台仙館筆記』を書いたり,口語小説『三侠五義』を補訂し『七侠五義』と題して刊行したり,日本人の漢詩を選び『東瀛 (えい) 詩選』を編んだり,活動は多岐にわたる。著作はすべて『春在堂全書』に収められている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の兪樾の言及

【皖派】より

…皖とは中国安徽省の古名で,清代に,この地に多くの学者を輩出したので,その人々を皖派と称しているが,大きくは浙西学派に含まれる。江永,戴震に源を発して段玉裁,任大椿,王念孫,王引之,さらに後の兪樾(ゆえつ),孫詒譲(そんいじよう)らに受けつがれた。この学派は懐疑的態度によって事実を確かめ,帰納的論理的に分析する方法を共通点としていることで,恵棟らの漢代訓詁を固守する呉派とは大いに異なる。…

【三俠五義】より

…北宋の名臣包拯(ほうじよう)(999‐1062)の名裁判ぶりを描いた明代の《竜図公案》を発展させ,これを軸として〈三俠(3人の俠客)〉と〈五鼠(5人の義賊)〉の活躍ぶりを描き,《水滸伝》の面白さをねらっている。のち文人の兪樾(ゆえつ)が増補して《七俠五義》(1889)を出し,ほかにも続作が出た。【中野 美代子】。…

【東瀛詩選】より

…中国,清末の学者兪樾(ゆえつ)が選んだ日本人の漢詩の詞華集。44巻。…

※「兪樾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android