兵士役(読み)へいしやく

精選版 日本国語大辞典 「兵士役」の意味・読み・例文・類語

へいし‐やく【兵士役】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制で、力役奉仕の一つ国内正丁三分の一を徴集して軍団を編制し軍事訓練を受けさせること。
  3. 中世荘園荷物運送などの労役に徴発されること。
    1. [初出の実例]「当宮御領者、諸国在之。而云兵士役大番事、云造東大寺夫役、敢無其催之処、今有此沙汰云々」(出典:隅田家文書‐建久八年(1197)正月日・八幡宮公文所下文)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「兵士役」の意味・わかりやすい解説

兵士役
へいしやく

(1) 律令制下の農民兵役公民正丁 (せいてい) の3分の1が兵士として徴発され,軍団を構成。一部は1年間勤番の衛士 (えじ) ,3年間勤番の防人 (さきもり) となり,京,北九州警備。この間軍務 (訓練など) に服しながら,開墾にあたり,みずからの食糧を自給するなど,きわめて過酷であったため,逃亡する者が多かった。平安時代初期には廃止されて健児 (こんでい) の制がしかれた。 (2) 中世,荘園領主が警備や交通上の労務に一時的に徴発した荘民への課役。

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旺文社日本史事典 三訂版 「兵士役」の解説

兵士役
へいしやく

①律令制下の兵役
②中世,荘園において,荘園領主が名主 (みようしゆ) を中心とする武士団に,年貢輸送の警備,本家・領家の警衛宿直などにあたらせた警固役
諸国の正丁 (せいてい) の3分の1を徴集して軍団を編成。その中から選ばれた衛士 (えじ) は1年間都で,また防人 (さきもり) は3年間北九州で警固の任にあたった。兵役中は調・庸と雑徭 (ぞうよう) を免除されたが,装備と食料の一部は兵士を出した戸の負担とされた。公民にはかなりきびしい負担だったため律令制の推移とともに解体し,健児 (こんでい) の制へと引き継がれた。
兵士役で貴族に武器をもって供侍する者を「侍 (さむらい) 」と呼んだ。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「兵士役」の解説

兵士役
へいしやく

荘園制下の夫役(ぶやく)の一種。荘園領主は,兵士役として荘園の一般荘民を徴発して宿直警護や雑役,年貢の輸送などにあたらせた。後白河上皇の長講堂領では御倉兵士・門兵士・月充(つきあて)兵士・月充仕丁(しちょう)があり,摂関家の大番舎人(とねり)も兵士役にあたる。高野山領・東大寺領の荘園では年貢の輸送などにあたらせていた。

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