衛士(読み)えじ

日本大百科全書(ニッポニカ)「衛士」の解説

衛士
えじ

奈良時代の兵士諸国軍団兵士の一部が1年ごとに上京し衛士府衛門府に配備された。農民から兵士を徴発し天皇、帝都を衛守させるという考え方は、これまでになく、律令(りつりょう)軍制の特質の一つである。この結果、制度的には、天皇親衛軍の中核は、これまでのトネリ層から班田農民となった。衛士数は約2000、これに付随する火頭(かとう)(衛士の炊事役)1000。衛士のうち2割程度が衛門府に、残りの1600が衛士府に配備された。衛士の武器は、基本は烏作横刀(うづくりよこたち)と弓箭(ゆみや)。騎兵、弓箭装備の歩兵、槍(やり)装備の歩兵の3種があった。前二者はおもに宮城守衛にあたり、宮内、京中にあって、衛門、所部衛守、京内要地守衛、京路巡行、行幸供奉(ぐぶ)、要人警護の任についた。

[野田嶺志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典「衛士」の解説

え‐じ ヱ‥【衛士】

〘名〙
① 令制で、諸国軍団から毎年(のちに三年)交替で上京し、衛門府、左右衛士府に配属された兵士。宮門警備や行幸の供奉などにあたった。
※三代格‐一八・養老六年(722)二月二二日「自今以後、諸国向京衛士仕丁。便減年之数。〈略〉並限三載。以為一番。依式交替」
② もと神宮司庁および熱田神宮の警護にあたった役人。
※神宮に衛士長衛士副長及衛士設置(明治三一年)(1898)四条「衛士は上官の指揮を承け警衛に従事す」

えい‐し ヱイ‥【衛士】

〘名〙 宮殿、御所、貴人などを守る兵士。護衛の兵士。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉二「其弾丸(たま)輿側(かごわき)の衛士(ヱイシ)に当りて輿には恙(つつが)なしと雖も衛士等大いに驚愕して」 〔史記‐項羽本紀〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

百科事典マイペディア「衛士」の解説

衛士【えじ】

律令制で皇居・都などの警備を担当した兵士(ひょうじ)。全国の軍団から選抜され,衛門(えもん)府・左右衛士府に勤務。期限は養老令では1年交代,のち3年交代。実際には守られなかった。8世紀末,軍団廃止,健児(こんでい)採用後は地方から直接に徴集。まもなく形骸化した。→衛府
→関連項目陣屋兵衛府

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

旺文社日本史事典 三訂版「衛士」の解説

衛士
えじ

律令制における宮都警備の兵士
諸国軍団の兵士から選ばれ,毎年交替で上京し,衛門府・左右衛士府に属して勤務した。宮門の警備や京中の治安維持などにあたり,年限は1年と定められていたが,実際にはもっと長く,農民の重い負担となって逃亡者も出た。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

デジタル大辞泉「衛士」の解説

え‐じ〔ヱ‐〕【衛士】

律令制で、諸国の軍団から選抜されて1年交代で左右衛士府衛門府に配属されて宮廷の警護に当たった兵士。
神宮司庁および熱田神宮の警護に当たった職員旧称

えい‐し〔ヱイ‐〕【衛士】

宮殿・貴人などの警備、護衛にあたる兵士。→衛士(えじ)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「衛士」の解説

衛士
えじ

古代,律令の兵制において,諸国の軍団から選ばれて1年 (のち3年) 交代で上京し,衛門府,衛士府に配属され,宮門の警衛にあたった者。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典 第2版「衛士」の解説

えじ【衛士】

日本古代の律令制のもとで,朝廷や京の警衛にあたった兵士。その名称は唐制に由来する。公民から徴発され,諸国の軍団に勤務する兵士のうちから交替で都に送られ,五衛府のうち衛門・左右衛士の3府に配属された。定数はときにより増減があり,805年(延暦24)の時点では衛門府400人,左右衛士府各600人,計1600人が存在していた。衛士の任務は宮城内の中門(宮門)・諸所の警衛,京中の夜間の巡検,天子行幸のおりの警固などであり,課役が免除され,帰国後1年は軍団勤務が免除されるなどの恩典があったが,任務の重要さゆえに監督もきびしく,酷使された。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

世界大百科事典内の衛士の言及

【衛士府】より

…日本古代,律令制の中央軍事組織である五衛府のうちの左右衛士府。701年(大宝1)ごろ成立,養老令の規定では督,佐,大尉,少尉,大志,少志などの官人および衛士が所属していた。…

【造宮省】より

…造宮省には四等官(卿,輔,丞,録),史生,造宮省工,将領,算師らがいた。天平17年(745)の4月と10月の〈造宮省移〉によれば下部機構として長上工,番上工,直丁,飛驒匠,焼炭仕丁,作瓦仕丁,衛士,火頭らが所属し,甲賀宮,恭仁宮,奈良宮で作業していたことが知られ,総計(4月1368人,10月1373人)のうち衛士(4月795人,10月760人)が過半を占め,兵力が労働力に流用されていることがわかる。卿や輔に軍事関係氏族の出身者や軍事関係の職歴をもつ者が任命されたのは,千数百人の集団を統率するため軍事的手腕を必要としたからである。…

※「衛士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

急急如律令

中国漢代の公文書の末尾に、急々に律令のごとくに行え、の意で書き添えた語。のち、呪文(じゅもん)の終わりに添える悪魔ばらいの語として、道家・陰陽師(おんようじ)・祈祷僧(きとうそう)などが用いた。...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android