其の(読み)ソノ

デジタル大辞泉の解説

そ‐の【×其の】

[連体]《代名詞「」+格助詞「」から》
空間的、心理的に聞き手に近い人や物をさす。「其の男は何者だ」「其の服はどこで買いましたか」
聞き手が当面している事柄や場面をさす。今の。「其の仕事が終わったら、次を頼むよ」「其の調子で進めてください」
現在、話に出ている、または、話に出たばかりの事柄をさす。「其の日はとても暑かった」「其の話はもうやめよう」
全体をいくつかに分けた中の、ある部分をさす。「其の一、其の二」
[感]すらすら言えないときなどに、つなぎに発する語。「まあ、其の、何て言うか」「ほら、其の、例のですが」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

大辞林 第三版の解説

その【其の】

〔代名詞「そ」に格助詞「の」が付いた語〕
( 連体 )
話し手からは離れていて、聞き手に近い関係にある物事をさし示す。 「 -本は君のですか」
相手または自分がすぐ前に話したことや、お互いに了解している事柄であることを示す。 「 -事は何も聞いていない」 「右に曲がると公園がある。-前にバス停がある」
ばくぜんと物事をさし示す。 「 -あたりでやめておいたほうがいい」
( 感 )
言葉につまったり、言いよどんだりした時につなぎに発する語。そのう。 「ええと、-、なんです」

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

そ‐の【其の】

[1] 〘連語〙 (中称の代名詞「そ」に格助詞「の」の付いたもの。近代語では「そ」の単独用法がないので、一語とみて「連体詞」とする)
① 前に述べたことや聞き手が了解していることをさし示す。古くは強い関心をもつものを指示するのに用いられた。
※古事記(712)中・歌謡「をとめの 床の辺に 我が置きし つるきの太刀 曾能(ソノ)太刀はや」
② 前に述べたことを「そ」で受けて、「それの」の意を表わす。そのことの。そのものの。
※古事記(712)下・歌謡「新嘗屋に 生ひ立てる 葉広 斎(ゆ)つ真椿 其が葉の 広りいまし 曾能(ソノ)花の 照りいます」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「後涼殿に本よりさぶらひ給ふ更衣の曹司をほかに移させ給て、上局にたまはす。その怨ましてやらむ方なし」
③ (古い用法で) 話し手からも聞き手からもやや遠い人や事物をさし示す。あの。
※書紀(720)仁徳二二年正月・歌謡「押し照る 難波の埼の 並び浜 並べむとこそ 曾能(ソノ)子はありけめ」
④ 話し手が、空間的、心理的に、聞き手の側にあると考える人や物などをさし示す。
※竹取(9C末‐10C初)「ゆかしき物を見せ給へらんに、御心さしまさりたりとてつかうまつらんと、そのおはすらん人々に申給へといふ」
※平家(13C前)四「『すみやかにその馬六波羅へつかはせ』とこその給ひけれ」
⑤ 不定の人や事物をさし示す。どういう。どんな。
※万葉(8C後)一五・三七四二「逢はむ日を其(その)日と知らず常闇にいづれの日まで吾恋ひ居らむ」
⑥ わざとはっきり名を表わさないで、人や事物を示す。なになにの。
※観智院本三宝絵(984)中「まことの御子は〈略〉去年(こぞ)のその月に隠れ給ひにきと云ふ」
※平家(13C前)一「あっぱれ、其人のほろびたらば其国はあきなむ」
⑦ 次にすぐ述べる事柄をさし示す。多く翻訳文などに用いる。「その名が忘れられない多くの友だちがいる」「その母親が医者であるところの友人」
[2] 〘感動〙 口ごもったときなどに、次の語につなぐためや、間をもたせるためなどに発する語。
※外科室(1895)〈泉鏡花〉下「ちょいとした女を見ると、つひそのなんだ」

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