彼の(読み)カノ

デジタル大辞泉 「彼の」の意味・読み・例文・類語

か‐の【彼の】

[連体]の一語化》話し手と聞き手双方既知事物をさす。あの。例の。「彼の有名な物語」「彼の地」
[連語]代名詞「か」+格助詞「の」》
前に述べた事物をさす。あの。その。
「めなもみといふ草あり。くちばみに刺されたる人、―草を揉みて付けぬれば」〈徒然・九六〉
近世語》人や事物を暗示的に示す。例の物・事・人。
「そりゃあさうと、―に極めたか」〈滑・浮世風呂・三〉
[類語]これそれあれどれこのそのどのあの

あ‐の【彼の】

[連体]《代名詞「」+格助詞「」から》
話し手・聞き手の双方から離れた人や物をさしていう。「彼の帽子を取ってください」
話し手も聞き手もすでに知っている人や事柄をさしていう。例の。「彼の男がまた来たよ」「彼の件はどうなりましたか」
[感]話のきっかけをつけるとき、言葉に詰まったときなどに発する語。「彼の、ちょっとお尋ねしたいんですけど」「それは、彼の、つまり」
[類語]これそれあれどれこのそのどのかの

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「彼の」の意味・読み・例文・類語

か‐の【彼の】

  1. [ 1 ] 〘 連語 〙 ( 代名詞「か(彼)」に格助詞「の」の付いたもの ) ⇒か(彼)
  2. [ 2 ] 〘 代名詞詞 〙 他称。話し手、相手両者から離れた、また、両者に共通の話題である、事物、人をさし示す(遠称)。直接それをさしていうのをはばかる場合に、遠まわしにその名に代えていう、近世の隠語的用法。あれ。
    1. (イ) あの物。例の物。また、あの事。例の事。
      1. [初出の実例]「奈良茶は夜分、かののおゆるは朝時分」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)三)
    2. (ロ) あの人。例の人。
      1. [初出の実例]「恋衣おもひたつ日を吉日に あしにまかせてかのが行末〈由平〉」(出典:俳諧・大坂独吟集(1675)下)
  3. [ 3 ] 〘 連体詞 〙 ( [ 一 ]の一語化したもの ) 話し手、相手両者から離れた、また、両者共通の事柄に関係のあることを指示する。現代語では「あの」よりも文語的な表現。
    1. [初出の実例]「『アノ本田さんはどうだったエ』『彼(カ)の男はよう御座んした』」(出典浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)

彼のの補助注記

[ 一 ][ 三 ]との境界判定は極めて困難なので、[ 三 ]用例は、便宜上、明治以降の口語文に限った。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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