新版歌祭文(読み)しんぱんうたざいもん

日本大百科全書(ニッポニカ)「新版歌祭文」の解説

新版歌祭文
しんぱんうたざいもん

浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)。世話物。2段。近松半二(はんじ)作。1780年(安永9)9月、大坂・竹本座初演。歌祭文などで流布していたお染久松の情話を脚色、歌舞伎(かぶき)脚本『心中鬼門角(しんじゅうきもんのかど)』(1710)や、紀海音(きのかいおん)作『(たもと)の白(しら)しぼり』(1710)、菅専助(すがせんすけ)作『染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)』(1767)などの浄瑠璃を基にしたもので、同系の戯曲の代表作。和泉(いずみ)石津(いしづ)家の臣相良丈太夫(さがらじょうだゆう)の遺子で野崎村の百姓久作に預けられて成長した久松が、質屋油屋丁稚(でっち)奉公中、主家の娘お染と恋仲になり、悪人たちの陰謀に巻き込まれて心中してしまう物語だが、上の巻「野崎村」が後世に残り、人形浄瑠璃でも歌舞伎でも有数の人気演目になっている。宿元へ下げられた久松を久作は娘お光(みつ)と祝言させようとするが、そこへ縁談にせっぱ詰まったお染が訪ねてくる。初め嫉妬(しっと)したお光も、死を覚悟したお染久松の姿に心動かされ、となって恋を譲り、2人は感泣しながら、お染は迎えにきた母とともに舟で川を、久松は駕籠(かご)で土手を、別れ別れに油屋へ帰ってゆく。うぶな田舎(いなか)娘お光と早熟な町娘お染との対照が巧みに描かれ、最後の舟と駕籠の引込みは、義太夫では三味線の華麗な節づけ、歌舞伎では両花道を効果的に使った演出が喜ばれている。

[松井俊諭]

『鶴見誠校注『日本古典文学大系52 浄瑠璃集 下』(1959・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「新版歌祭文」の解説

新版歌祭文
しんぱんうたざいもん

浄瑠璃。世話物。2巻。近松半二作。安永9 (1780) 年大坂竹本座初演。『おそめ久松袂の白絞』『染模様妹背門松』など先行作の影響下に成立した,お染久松劇の代表作。主家の宝刀を紛失した責めで切腹した相良丈太夫の遺児久松を野崎村の農民久作が養育,成長した久松は大坂の油屋という質屋に奉公するが,店の娘お染と恋仲になる。お染にはほかに縁談があり,2人の仲は裂かれて久松は久作のもとへ帰される。お染は野崎参りにかこつけて久松をたずねるが,久松には久作の娘お光という許婚があり,思いあまった2人は心中を決意する。それを知ったお光は久松への思いを捨てて尼になる。この上巻「野崎村」が有名。歌舞伎の初演は文化5 (1808) 年大坂小川座,文政9 (26) 年江戸河原崎座。

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精選版 日本国語大辞典「新版歌祭文」の解説

しんぱんうたざいもん【新版歌祭文】

浄瑠璃。世話物。二段。近松半二作。安永九年(一七八〇)大坂竹本座初演。お染久松を題材とする戯曲の代表作。久松は武士の子で、乳母の兄久作に育てられたが、奉公先の油屋という質屋の娘お染と心中する。久作の後妻の連れ子お光が二人の決意を知り、久松との祝言をあきらめて尼になる「野崎村」の段が名高い。

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旺文社日本史事典 三訂版「新版歌祭文」の解説

新版歌祭文
しんぱんうたざいもん

江戸後期,近松半二作の世話物浄瑠璃
1780年大坂竹本座で初演。3段。大坂油屋の娘お染と丁稚 (でつち) 久松の悲恋中段の野崎村は久松の許嫁お光,養父久作の苦衷など義理人情を描いた傑作。歌舞伎上演は1808(文化5)年。

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百科事典マイペディア「新版歌祭文」の解説

新版歌祭文【しんぱんうたざいもん】

近松半二作の浄瑠璃,また,これに基づく歌舞伎劇世話物。1780年初演。お染・久松の情話を脚色した戯曲中の代表作。久松の許嫁(いいなずけ)お光が祝言の当日,お染に恋をゆずって尼になる〈野崎村〉の場が有名。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典「新版歌祭文」の解説

新版歌祭文
(別題)
しんぱん うたざいもん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
新板歌祭文
初演
天明5.5(大坂・粂太郎座)

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世界大百科事典 第2版「新版歌祭文」の解説

しんぱんうたざいもん【新版歌祭文】

(1)人形浄瑠璃。世話物。2巻。角書〈おそめ久松〉。近松半二作。1780年(安永9)9月大坂竹本座初演。和泉国の侍相良丈太夫の遺児で野崎村の百姓久作に養育された久松が,奉公先の大坂の質店油屋の娘お染との許されぬ恋のために心中するに至るという経緯を主筋とし,それに久松の主家の宝刀の詮議,悪人たちによる金の横領,久松の許嫁お光の悲恋等々のプロットを絡めて展開させたもの。先行する紀海音の浄瑠璃《おそめ久松 袂の白しぼり》や菅専助の《染模様妹背門松》を踏まえて脚色された作品で,お染久松物の代表作となっている。

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