デジタル大辞泉
「凌」の意味・読み・例文・類語
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しの・ぐ【凌】
〘他ガ五(四)〙
① 押しふせる。下に押えるようにする。おおいかぶせる。なびかす。
※
万葉(8C後)八・一六
五五「
高山の菅の葉之努芸
(シノギ)降る雪の消
(け)ぬとか言はも恋の繁けく」
② 障害物などを押しわけ、押しつけるようにして進む。
(イ) 押しわける。かきわける。
※万葉(8C後)八・一六〇九「
宇陀の野の秋萩師弩芸
(シノギ)鳴く鹿も妻に恋ふらく我れには益
(ま)さじ」
(ロ) のりこえて進む。山、波などをのりこえる。
※万葉(8C後)一〇・二〇八九「秋風の 吹き来る夕(よひ)に 天の河 白波凌(しのぎ) 落ちたぎつ 早瀬渡りて」
(ハ) 特に困難なことをのりこえる。のりきる。
※宇津保(970‐999頃)あて宮「よろづのゆゑさはりを
しのぎて思ひたち給へる御まゐり」
(ニ) たえる。我慢する。また、たえしのんでもちこたえる。
※
山家集(12C後)下「雪しのく庵の
つまをさし添へて跡とめて来ん人を止めん」
※浮世草子・好色五人女(1686)四「腰簑身にまとひ一夜をしのぎける」
③ あなどる。見くだす。圧倒する。
※
書紀(720)神武即位前(北野本室町時代訓)「村
(ふれ)に君
(きみ)あり、長
(ひとこのかみ)有りて谷に自
(みつか)ら疆
(さかひ)を分ちて用
(も)て相
(あひシノキきしろふ)」
※
霊異記(810‐824)上「其の村の童女等皆心を同じくして、凌
(シノキ)蔑
(あなづり)て曰はく、〈興福寺本訓釈 凌 之乃支〉」
④ (困難にたえて)苦労する。努力する。
※
毎月抄(1219)「それをよまんよまんとしのぎ侍れば」
※玉塵抄(1563)五五「相徉、雲をしのいで心の高うあがった心ぞ」
しのぎ【凌】
① 困難なことや苦しみなどをがまんして切りぬけること。また、その方法や
手段。
※蓮如上人御一代記聞書(16C後)末「
往生は一人のしのきなり。一人々々仏法を信じて
後生をたすかる事なり」
※
滑稽本・
浮世風呂(1809‐13)四「別しておまへ様は御肥満でお出なさるから、お暑
(あつさ)のお凌
(シノギ)はお大体
(たいてい)様ではござりますまい」
②
囲碁で、攻められた場合、
最強の
抵抗をするか、うまくかわすかして、
主力の石を生かしたり、脱出したりすること。
しぬ・ぐ【凌】
〘他ガ四〙 (現在、「の」の甲類の
万葉仮名とされている「怒」「努」「弩」などを「ぬ」とよんだところからできた語) =
しのぐ(凌)※
天降言(1771‐81頃か)「
足引の
石間(いはま)をしぬぎわく水の落ちたぎち行く風のすずしさ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報