(読み)セツ

デジタル大辞泉 「切」の意味・読み・例文・類語

せつ【切】

[形動][文][ナリ]
心をこめてするさま。ねんごろ。せち。「平和へのなる願い」「に健闘を祈る」
身にしみて強く感じるさま。せち。
「またなによりも―なりしは、大雪降って寒かりしに、秘蔵せし鉢の木を切り、火に焚きあてし志」〈謡・鉢木
さしせまった事情にあるさま。非常に厳しいさま。せち。
「さなきだに傾城は内しょ―なるものなるに」〈洒・契情買虎之巻
[類語]本当まことにじつしんまったくまさにまさしくひとえにげにげんほとほとすっかりうんざりまったく以てまったくの所なんとも実以て本に真実真個真正正真しょうしん事実実際紛れもない他ならない有りのまま現実そのものしん以てかみ掛けてほんま正真正銘いかにもげんなりこりごり食傷辟易へきえき閉口まっぴらいい加減果てしない限りないつくづくしみじみ切切痛切切実深刻ひしひしじいん心からびんびん哀切哀れ悲しい物悲しいうら悲しいせつないつらい痛ましい悲愴ひそう悲痛悲傷沈痛もの憂い苦しい耐えがたいしんどい苦痛やりきれないたまらないる瀬ない断腸の思い胸を痛める胸が痛む胸が塞がるけだるいアンニュイ胸が裂ける胸が張り裂ける胸がつかえる胸が潰れる胸がつまる気を揉む重苦しい滅入る気遣わしい塞ぐ塞ぎ込む消沈しょげるしょげ返る沈む憂鬱憂愁沈鬱メランコリー気鬱気塞ぎ鬱鬱陰鬱暗鬱鬱屈鬱結鬱気うっき鬱悶うつもん鬱積抑鬱憂さ鬱陶しい悶悶もんもん

せつ【切】[漢字項目]

[音]セツ(漢) サイ(呉) [訓]きる きれる
学習漢字]2年
〈セツ〉
刃物などで切る。「切開切除切断切腹切磋琢磨せっさたくま
こすり合わせる。「切歯
ぴったりする。「剴切がいせつ適切
さし迫る。身に迫って感じる。しきりに。「切実切切切迫切望懇切親切大切痛切
漢字音の表記法の一。「反切
〈サイ〉すべて。「一切合切がっさい
難読切符きっぷ切支丹キリシタン

せち【切】

[形動ナリ]
深く心に感じるさま。痛切だ。
「物の興―なるほどに、御前に皆御琴ども参れり」〈藤裏葉
非常に大切だ。重大だ。
「忍びてものし給へ。―なること聞えむ」〈宇津保・国譲下〉
心をこめてするさま。熱心だ。
「商人の一銭を惜しむ心―なり」〈徒然・一〇八〉
(「せちに」の形で副詞的に用いて)心に深く思いこむさま。ひたすら。極力。いちずに。どうしても。
「女、家を見せじと思ひて―に怨じけり」〈平中・二五〉

さい【切】[漢字項目]

せつ

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精選版 日本国語大辞典 「切」の意味・読み・例文・類語

せち【切】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 心の状態や程度のはなはだしいさま。せつ。
  2. ひたむきなさま。それを思うことがしきりで強いさま。いちずなさま。
    1. [初出の実例]「こよひ、中将の朝臣の、せちなる言ひ事の数ありつるを」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)
  3. ねんごろなさま。心をこめてするさま。
    1. [初出の実例]「年ごろむげに忘れたて侍しに、せちなりし宣旨の恐しさに、からうじて思ひ給へいでて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  4. しみじみと感慨興趣を覚えるさま。興深いさま。
    1. [初出の実例]「たのつかさの楽の近く聞ゆるかな。すけずみが笙(さう)にこそあなれ。さやうのものうはらくのひきつれてくる、せちならむかし。見よや」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
  5. 身にしみて心に感じるさま。痛切なさま。
    1. [初出の実例]「なげのことばなれど、せちに心に深く入らねど」(出典:枕草子(10C終)二六九)
  6. 物事急迫しているさま。さしせまった様子。重大なさま。大切なさま。
    1. [初出の実例]「のちに身のならんやうもしらで、ちかげのおほい殿に参りて、『せちなること申さむ』といふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)忠こそ)
  7. ( 「せちに」の形で )
    1. (イ) ひたすら。しきりに。ひどく。ごく。
      1. [初出の実例]「七月十五日の月に出でゐて、せちに物思へるけしきなり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. (ロ) どうしても。ぜひ。
      1. [初出の実例]「仲忠の朝臣に、せちにあはまほしきことなむある」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)

せつ【切】

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 心の状態や程度のはなはだしいさま。せち。
    1. ひたすらなさま。それを思うことがしきりで強いさま。そのことに一途にとらわれるさま。
      1. [初出の実例]「僧正心ざしの切(セツ)(高良本ルビ)なる事を感じて」(出典:平家物語(13C前)二)
      2. 「父は磯良が切(セツ)なる行止(ふるまひ)を見るに忍びず」(出典:読本・雨月物語(1776)吉備津の釜)
    2. ねんごろなさま。心をこめてするさま。
      1. [初出の実例]「昔より今にいたるまで、夫婦の中ほどせつなる事はよもあらじ」(出典:御伽草子・御曹子島渡(室町末))
    3. 感にうたれるさま。身にしみて強く感ずるさま。感情が極限までのぼりつめたさま。
      1. [初出の実例]「此三ケ条の感は、正に無心のせつなり」(出典:拾玉得花(1428))
      2. 「何よりもって切なりしは、大雪ふって寒かりしに、秘蔵せし鉢の木をきり、火に焼(た)きあてしこと」(出典:車屋本謡曲・鉢木(1545頃))
    4. 切迫して急なさま。さしせまったさま。また、しきりであるさま。
      1. [初出の実例]「ありのままにこまかにのたまへとせつにとへば」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
  2. [ 2 ]
    1. 中国で反切(はんせつ)法のこと。かえし。〔韵会〕
    2. 数学で、線と直線または曲線が一点で接すること。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕

きら‐ず【雪花菜・不切】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 豆腐のしぼりかす。おから。卯(う)の花。
    1. [初出の実例]「烏にもちいさき猫はすくみけり〈普船〉 きらづの煙気(いげ)のさめぬ朝霜仙化〉」(出典:俳諧・雑談集(1692)下)
  3. ささやかな富くじ。
    1. [初出の実例]「きらずでも取たか片身(かたみ)つくらせる」(出典:雑俳・川柳評万句合‐安永六(1777)宮二)

きり【切】

  1. 〘 副詞助 〙きり(切)[ 二 ]

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「切」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 4画

[字音] セツ・セチ・サイ
[字訓] きる・せまる・するどい

[説文解字]

[字形] 会意
七+刀。〔説文〕四下に「(き)るなり」とし、七(しち)声とするが、七は骨節の形。膝のような部分をいう。そこを切り離して分解する。〔詩、衛風、淇奥(きいく)〕「切するが如く磋(さ)するが如し」の〔伝〕に、「骨を治するを切と曰ふ」とみえる。切断には殊に注意と技術とを要するので、緊切・切要の意となる。

[訓義]
1. きる、たつ、はなつ、さく。
2. せまる、ちかづく。
3. するどい、適切、緊切。
4. 要所、肝要、大事。
5. つつしむ、つとめる。
6. ねんごろ、ふかい。
7. すべて、およそ、おおい、みな。
8. 砌(せい)と通じ、みぎり。

[古辞書の訓]
名義抄〕切 ニハカニ・セム・サク・タシカニ・チカシ・キル・モク・クヒシバル 〔字鏡集〕切 ウレフ・アハネシ・ヒロシ・イソグ・タシカニ・ニハカニ・ネンゴロ・ハヲクヒシバル

[語系]
切tsyet、七tsietは声近く、七は骨節の象。その部分を切断する。(膝)sietは骨節のうち、膝頭の部分をいう。また砌tsyetは同声。砌は門限。syet、楔siatもみな門限のところ、家の構造でいえば内外を分かつところに当たる。

[熟語]
切惟・切雲・切愨切愕切諫・切記・切議・切急・切響・切近切激・切言・切骨切瑳切嗟・切磋・切至・切歯切偲切摯・切字切謝切須・切祝・切峻・切象・切情・切譲・切正・切責・切切・切促切嘆・切断・切中・切直・切痛・切当・切腹・切望・切磨・切務・切免・切問・切諭・切憂・切用・切要・切・切論
[下接語]
哀切・一切・音切・苛切・外切・剴切・切・簡切・切・急切・禁切・緊切・勁切・警切・激切・言切・厳切・懇切・磋切・惨切・心切・深切・親切・声切・凄切・清切・誠切・大切・忠切・真切・痛切・適切・反切・悲切・切・摩切・憂切

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「切」の意味・わかりやすい解説


きり

義太夫節浄瑠璃各段のなかで最も重要な,山場をなす部分。切場ともいう。初期には詰またはとも表記した。3段目,4段目の切は特に重い場とされ,紋下など最上位の太夫が語る。切場を語る資格のある太夫を切語りと呼ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【切見世】より

…1軒1妓を原則とし,抱主は数軒を管理営業した。切(きり)とは時間売りの意で,一切(ひときり)100文が相場であった。この揚代は上級妓のそれの10分の1というものであったが,一切の時間の短いこともあって,その数倍を支払わさせることが多かったようである。…

※「切」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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