デジタル大辞泉
「切」の意味・読み・例文・類語
せち【▽切】
[形動ナリ]
1 深く心に感じるさま。痛切だ。
「物の興―なるほどに、御前に皆御琴ども参れり」〈源・藤裏葉〉
2 非常に大切だ。重大だ。
「忍びてものし給へ。―なること聞えむ」〈宇津保・国譲下〉
3 心をこめてするさま。熱心だ。
「商人の一銭を惜しむ心―なり」〈徒然・一〇八〉
4 (「せちに」の形で副詞的に用いて)心に深く思いこむさま。ひたすら。極力。いちずに。どうしても。
「女、家を見せじと思ひて―に怨じけり」〈平中・二五〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
Sponserd by 
せち【切】
- 〘 形容動詞ナリ活用 〙 心の状態や程度のはなはだしいさま。せつ。
- ① ひたむきなさま。それを思うことがしきりで強いさま。いちずなさま。
- [初出の実例]「こよひ、中将の朝臣の、せちなる言ひ事の数ありつるを」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)
- ② ねんごろなさま。心をこめてするさま。
- [初出の実例]「年ごろむげに忘れたて侍しに、せちなりし宣旨の恐しさに、からうじて思ひ給へいでて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
- ③ しみじみと感慨や興趣を覚えるさま。興深いさま。
- [初出の実例]「たのつかさの楽の近く聞ゆるかな。すけずみが笙(さう)にこそあなれ。さやうのものうはらくのひきつれてくる、せちならむかし。見よや」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
- ④ 身にしみて心に感じるさま。痛切なさま。
- [初出の実例]「なげのことばなれど、せちに心に深く入らねど」(出典:枕草子(10C終)二六九)
- ⑤ 物事の急迫しているさま。さしせまった様子。重大なさま。大切なさま。
- [初出の実例]「のちに身のならんやうもしらで、ちかげのおほい殿に参りて、『せちなること申さむ』といふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)忠こそ)
- ⑥ ( 「せちに」の形で )
- (イ) ひたすら。しきりに。ひどく。ごく。
- [初出の実例]「七月十五日の月に出でゐて、せちに物思へるけしきなり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- (ロ) どうしても。ぜひ。
- [初出の実例]「仲忠の朝臣に、せちにあはまほしきことなむある」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)
せつ【切】
- [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 心の状態や程度のはなはだしいさま。せち。
- ① ひたすらなさま。それを思うことがしきりで強いさま。そのことに一途にとらわれるさま。
- [初出の実例]「僧正心ざしの切(セツ)(高良本ルビ)なる事を感じて」(出典:平家物語(13C前)二)
- 「父は磯良が切(セツ)なる行止(ふるまひ)を見るに忍びず」(出典:読本・雨月物語(1776)吉備津の釜)
- ② ねんごろなさま。心をこめてするさま。
- [初出の実例]「昔より今にいたるまで、夫婦の中ほどせつなる事はよもあらじ」(出典:御伽草子・御曹子島渡(室町末))
- ③ 感にうたれるさま。身にしみて強く感ずるさま。感情が極限までのぼりつめたさま。
- [初出の実例]「此三ケ条の感は、正に無心のせつなり」(出典:拾玉得花(1428))
- 「何よりもって切なりしは、大雪ふって寒かりしに、秘蔵せし鉢の木をきり、火に焼(た)きあてしこと」(出典:車屋本謡曲・鉢木(1545頃))
- ④ 切迫して急なさま。さしせまったさま。また、しきりであるさま。
- [初出の実例]「ありのままにこまかにのたまへとせつにとへば」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
- [ 2 ]
- ① 中国で反切(はんせつ)法のこと。かえし。〔韵会〕
- ② 数学で、線と直線または曲線が一点で接すること。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
きら‐ず【雪花菜・不切】
- 〘 名詞 〙
- ① 豆腐のしぼりかす。おから。卯(う)の花。
- [初出の実例]「烏にもちいさき猫はすくみけり〈普船〉 きらづの煙気(いげ)のさめぬ朝霜〈仙化〉」(出典:俳諧・雑談集(1692)下)
- ② ささやかな富くじ。
- [初出の実例]「きらずでも取たか片身(かたみ)つくらせる」(出典:雑俳・川柳評万句合‐安永六(1777)宮二)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
Sponserd by 
普及版 字通
「切」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
Sponserd by 
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
Sponserd by 
世界大百科事典(旧版)内の切の言及
【切見世】より
…1軒1妓を原則とし,抱主は数軒を管理営業した。切(きり)とは時間売りの意で,一切(ひときり)100文が相場であった。この揚代は上級妓のそれの10分の1というものであったが,一切の時間の短いこともあって,その数倍を支払わさせることが多かったようである。…
※「切」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
Sponserd by 