古文書学上の用語。ふつうの文書の大きさの料紙を竪紙(たてがみ)といい,それを縦横適当に切ったのが切紙である。正式な文書は,かならず竪紙に認めるが,簡単な私的なものには,はやくから切紙が用いられており,正倉院文書にもその例をみる。段銭・棟別銭の配符,年貢の請取など一度に多数発給される場合にも切紙が用いられる。戦国時代になり,従来の文書発給の体系がくずれるとともに,いろいろな形の切紙が用いられた。切紙のうちには,とくに小切紙と称せられて,ふつうの料紙の1/4くらいの大きさのものがある。これは南北朝期ごろから,軍勢催促状や感状などの軍事関係の文書として広く用いられた。これは一般には髻(もとどり)の文,とくに綸旨(りんじ)の場合には髻の綸旨と呼ばれ,敵に気付かれぬように密使が髻の中にかくして運んだといわれる。もちろん秘密に運搬するに便利であったが,同内容のものを一度に大量に発給するため,料紙の節約の意味もあったものと考えられる。なお,切紙免許の略で,切紙に書いた武芸,芸能などの免許目録をいうこともある。
執筆者:上島 有
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古文書の料紙の使い方。普通の文書の大きさの料紙を竪紙(たてがみ)といい、それを縦あるいは横に適当に切ったものが切紙である。正式な文書は、必ず竪紙に認(したた)めるが、簡単なものや私的なもの、あるいは年貢の請取(うけとり)、段銭(たんせん)・棟別銭(むねべちせん)の配符など、一度に多数の文書が発給される場合に用いられる。戦国時代になり、従来の文書発給の体系が崩れるとともに、いろいろな形の切紙が文書の料紙として用いられ、江戸時代になるとさらにそれが一般化する。切紙のうちで、普通の料紙の4分の1以下のものをとくに小切紙(こきりがみ)といい、南北朝期頃から、軍勢催促状や感状などの軍事関係の文書に用いられた。これは一般には髻の文(もとどりのふみ)、綸旨(りんじ)の場合には髻の綸旨(もとどりのりんじ)と呼ばれ、敵に気付かれぬように密使が髻の中に隠して運んだといわれる。
[上島 有]
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…銭を対象とするものを替銭(かえぜに∥かえせん∥かわしぜに∥かわし)と呼び,米を対象とするものを替米(かえまい∥かわしまい)といった。また利用された手形・証書を割符(さいふ∥わりふ∥かわし),切符(きつぷ),切紙(きりがみ)などと呼んだ。替銭・替米は,(1)年貢の輸送などの遠隔地への米銭送付に際して,荘園あるいはその近傍の都市で手形に替え,これを荘園領主に送付し,京都,山崎,奈良,堺などで米銭で受け取る場合と,(2)米銭の借用に際して,荘園年貢を引当てとし,荘園現地での支払を約束する手形を振り出す場合との両義を意味した。…
…弟子は聴講しながら筆記し,講釈終了後に,筆記した聞書を整理して師の校閲を受け,講釈の聞書であることの証明を受けた。その後最奥の秘伝である切紙(三木三鳥(さんぼくさんちよう)など)を授与され,古今伝受が終了する。だが,後世に古今伝受の名が有名になると,古今伝受の主要な部分である講釈を省略して切紙のみを授受したいかがわしい古今伝受も行われ,識者の批判を受けたこともあった。…
…それに文字を書いた場合が竪文である。古文書学上,竪紙を折った折紙,また竪紙を切った切紙に対する言葉として説明されるが,それは竪紙がもっとも自然な,したがって正式な使い方であるということを前提にしている。公文書の場合,竪紙が正式で折紙が略式である。…
…展開すれば,折り目で行末が尻合せとなる。 切紙(きりがみ)折紙の折り目より切り離し,必要なだけを切断して用いたもの。長文になれば表裏を用い,錯簡をおそれ,番号,合じるしで接続を示すか,紙撚(こより)で綴じた。…
…ミツマタを材料とする三椏紙は,江戸時代中ごろには生産されるようになったが,文書,典籍等の料紙としてはほとんど用いられていない。 普通の横長の一枚の料紙を竪紙(たてがみ)といい,それを横に二つ折にして天地を背中合せにしたものを折紙,縦に二つ折にして左右を背中合せにしたものを竪(縦)折紙といい,竪紙を縦や横に適当に裁断したものが切紙である。竪紙一紙で書ききれない場合には,これを2枚,3枚と糊ではりついだものを用いる。…
※「切紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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