包む(読み)ツツム

デジタル大辞泉 「包む」の意味・読み・例文・類語

つつ・む【包む】

[動マ五(四)]
物を、紙や布などの中に入れてすっかりおおう。「風呂敷で―・む」
(多く受け身の形で)物をすっかり取り囲むようにする。「山中で霧に―・まれる」「火に―・まれた家」「事件はなぞに―・まれている」
心の中にしまっておいて外へ出さない。秘める。隠す。「―・まず話す」「悲しみを胸に―・む」
慶弔のためやお礼として、金を紙などにくるんで渡す。「車代を―・む」
堤を築いて水が外に流れ出ないようにする。〈新撰字鏡
[可能]つつめる
[用法]つつむ・くるむ――「荷物を風呂敷に包む(くるむ)」「包んで(くるんで)ある紙も黄色くなっている」など、物をおおう意では相通じて用いられる。◇「贈り物をきれいな紙で包む」「祝儀を包む」「なぞに包まれた人」などのように、「包む」は何かがあるものを取り囲み、おおって中が見えないこと。これらは「くるむ」とはいえない。◇「くるむ」は布や紙などで巻いておおうこと。「赤ん坊を毛布でくるんで抱く」は全体をおおって見えなくするわけではないから、「包む」を使いにくい。
[類語](1くるむくるめる覆う覆いかぶせる被覆する被せる掛けるおっかぶせる商品食品を)包装するパックする

くる・む【包む】

[動マ五(四)]巻くようにして物をつつむ。「書類を風呂敷で―・む」
つつ[用法]
[可能]くるめる
[動マ下二]くるめる」の文語形
[類語]包むくるめる覆う覆いかぶせる被覆する被せる掛けるおっかぶせる包装するパックする

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「包む」の意味・読み・例文・類語

つつ・む【包・裹・慎】

  1. 〘 他動詞 マ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] ある物を別の物で覆ったり囲んだりする。
    1. 物の全体を布、紙などの中におおいかこむ。おおってその中にいれる。
      1. [初出の実例]「白玉を都々美(ツツミ)て遣(や)らば菖蒲草(あやめぐさ)花橘にあへも貫くがね」(出典:万葉集(8C後)一八・四一〇二)
      2. 「形見とて脱ぎおく衣(きぬ)につつまんとすれば、ある天人つつませず」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. まわりをとりかこむ。周囲をとりまく。
      1. [初出の実例]「そのわたりを、いくさのうち廻(めぐ)りて、つつみたりければ」(出典:今鏡(1170)二)
      2. 「敵に後をつつまれじと思ければ、一戦もせで兵庫を指て引退く」(出典:太平記(14C後)一五)
    3. 土を盛ったりして水の流れを囲んでせきとめる。堤をきずいて水を防ぐ。
      1. [初出の実例]「白鳥(しろとり)の 羽が堤を 都都牟(ツツム)とも あらふまもうき はこえ」(出典:常陸風土記(717‐724頃)香島・歌謡)
    4. 中にふくみもつ。ふくむ。
      1. [初出の実例]「一面には温容あれども威厳を包める斉武の全権委員威波能」(出典:経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉後)
    5. 謝意または慶意や弔意を示すために、お金をのし紙などにくるんで渡す。「お車代として一〇〇〇〇円つつむ」
  3. [ 二 ] ( 慎 ) 人の感情や表情を内におさえて、外に表われないようにする。
    1. 表面にあらわさないで心の中にかくす。心にひめる。涙をこらえることにもいう。
      1. [初出の実例]「たらちねの母にも言はず褁有(つつめり)し心はよしゑ君がまにまに」(出典:万葉集(8C後)一三・三二八五)
      2. 「Tçutçumazu(ツツマズ) モノヲ ユウ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. 感情の高ぶりをこらえる。堪えしのぶ。
      1. [初出の実例]「昔思いでらるるにえつつみあへで、寄りゐ給へる柱もとのすだれの下より、やをらおよびて御袙をとらへつ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
    3. 他人の思わくを気づかって用心する。人目をはばかる。遠慮する。つつしむ。気がねする。
      1. [初出の実例]「人目も今はつつみ給はず泣き給ふ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))

くる・む【包】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 マ行五(四) 〙 巻くようにして、中につつみこむ。つつみ巻く。つつむ。
    1. [初出の実例]「ふくさのものに、うつくしきひめぎみをくるみて、とめをきたるをみて」(出典:御伽草子・源蔵人物語(室町時代物語集所収)(室町末))
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙くるめる(包)

くく・む【包】

  1. 〘 他動詞 マ行四段活用 〙 大切につつむ。くるむ。
    1. [初出の実例]「生まれ給へる君をいと清くのごひて、御ほぞのを切りて、此のはかまにおしくくみて、かき抱き給ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)

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