覆う(読み)オオウ

デジタル大辞泉 「覆う」の意味・読み・例文・類語

おお・う〔おほふ〕【覆う/被う/蔽う/蓋う/×掩う】

[動ワ五(ハ四)]
あるものが一面に広がりかぶさってその下のものを隠す。「雲が山の頂を―・う」「落ち葉に―・われた道」
表面にある物を広げて、その物を外界からさえぎられた状態にする。「ベールで顔を―・う」「目を―・うばかりの惨状
すみずみまで行き渡って、いっぱいに満たす。「あたりはやみに―・われた」「場内を―・う熱気
本当のことがわからないように、つつみ隠す。
「お師匠様の名によって、おのれの非を―・おうとするのは」〈倉田出家とその弟子
全体をつつみ含む。「これを、ひと言で―・えば…」
広く行き渡らせる。
「威をあまねく海内かいだいに―・ひしかども」〈太平記・一一〉
[可能]おおえる
[用法]おおう・かくす――「おおう」は、表面に何かを広げて、中の物を隠したり、保護したりする動作。「布団をシーツでおおう」◇「隠す」は他人の目に触れないようにすることに重点があり、「両手で顔を隠す」は、両手で顔をおおって顔が見えないようにすること。◇見つからないようにしまい込んだりするのも「隠す」。「おおう」という方法で「隠す」のが「おおいかくす」で、この場合「かくしおおう」とはならない。◇類似の語に「かぶせる」がある。「かぶせる」は「帽子をかぶせる」「ふとんをかぶせる」のように上に何かをのせて、下の物を見えないようにしたり、保護したりすること。
[類語](1被せる掛けるおっかぶせる包むくるむくるめる覆いかぶせる被覆する包装するパックする隠す/(4隠す遮る包み隠す押し隠す覆い隠すくらます潜める忍ばせるかくまう隠し立てひた隠し隠蔽隠匿秘匿

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「覆う」の意味・読み・例文・類語

おお・うおほふ【覆・被・掩・蓋・蔽】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. 全体に広がりかぶさってつつむ。おう。
    1. (イ) (雪、雲、かすみなどが)かぶさる。また、かぶさって隠す。
      1. [初出の実例]「天(あめ)の下すでに於保比(オホヒ)て降る雪の光を見れば貴くもあるか」(出典万葉集(8C後)一七・三九二三)
      2. 「頭はあまそぎなるちごの、目に髪のおほへるをかきはやらで」(出典:枕草子(10C終)一五一)
    2. (ロ) 草、虫などがふえ広がる。また、ふえ広がって下のものを見えなくする。
      1. [初出の実例]「茨田の池の水大きに(くさ)りて、小さき虫水に覆(オホヘ)り」(出典:日本書紀(720)皇極二年七月(岩崎本訓))
  3. 下の物が隠れるように、上に物をかぶせる。また、物の口などを手や蓋でふさぐ。おう。
    1. [初出の実例]「玉くしげ覆(おほふ)をやすみあけて行なば君が名はあれどわが名し惜しも」(出典:万葉集(8C後)二・九三)
    2. 「急に袖で口を掩ひ」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
  4. (徳、威勢名声などを)広く行きわたらせる。また、全体に力を及ぼす。
    1. [初出の実例]「西のかた流沙を越えて、遂に妙楽の域を荒(オホヒ)、東のかた海に漸(い)りて掩(おほ)きに歓喜の都(みやこ)を有(たも)つ」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八)
  5. 本当のことがわからないように、つつみ隠す。
    1. [初出の実例]「小瑕(せうか)をもって其の功をおおふ事なかれ」(出典:平家物語(13C前)一〇)
    2. 「軽薄な手段をめぐらしてその非を蔽ひ」(出典:星座(1922)〈有島武郎〉)
  6. すべてをつつみ含む。また、説明し尽くす。
    1. [初出の実例]「社会主義とは何ですか、一言に掩へば神の御心です」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉二九)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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