卵巣機能不全(卵巣機能低下症)(読み)らんそうきのうふぜんらんそうきのうていかしょう(英語表記)Ovarian Insufficiency

家庭医学館 の解説

らんそうきのうふぜんらんそうきのうていかしょう【卵巣機能不全(卵巣機能低下症) Ovarian Insufficiency】

[どんな病気か]
 卵巣機能(卵巣のはたらき)とは、卵子(らんし)を育て排卵させることと、エストロゲンプロゲステロンという女性ホルモン分泌(ぶんぴつ)し、女性のからだを維持していくことです。このはたらきが十分でなくなった状態を、卵巣機能不全または卵巣機能低下症といいます。
[症状]
 時期により症状が異なります。思春期以前におこった場合は、性器発育不良や、第二次性徴(せいちょう)が現われるのが遅かったり、欠如していたりします。
 性成熟期では、性器の退行萎縮(たいこういしゅく)、月経周期の異常、無月経(「無月経」)、機能性子宮出血(きのうせいしきゅうしゅっけつ)(「機能性出血」)などがみられ、不妊症(ふにんしょう)(「不妊症」)の原因にもなります。
 性成熟期から老年期への移行期、いわゆる更年期によくみられる症状(肩こり頭痛、ほてりなど)も、卵巣機能の低下と関係のある症状です。
[検査と診断]
 自宅で簡単にできる方法として、基礎体温の測定があります。これにより、排卵の有無や、卵胞期短縮症(らんぽうきたんしゅくしょう)(低温相が短い場合)、黄体機能不全(おうたいきのうふぜん)(いわゆる高温相が短い場合)などがわかります。
 詳しい検査としては、尿中および血中の女性ホルモン値の測定、子宮内膜(しきゅうないまく)組織検査、頸管粘液(けいかんねんえき)検査、試験的ホルモン投与、LH‐RH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)負荷試験などがあります。
[原因]
 卵巣のはたらきは、頭の中にある脳下垂体前葉(のうかすいたいぜんよう)から分泌されるゴナドトロピン(性腺刺激(せいせんしげき)ホルモン)によって支配され、下垂体はさらに上位の中枢である間脳(かんのう)(視床下部(ししょうかぶ))により支配されています。
 視床下部、下垂体、卵巣は、機能的にひとつのネットワークをつくっていて、互いに刺激したり、抑制したりしながら正常な卵巣機能を維持しています。
 したがって、このうちのいずれが障害されても、卵巣機能不全がひきおこされます。
 間脳性の卵巣機能不全の原因としては、急激なダイエットや、それに引き続きおこる神経性食欲不振症(しんけいせいしょくよくふしんしょう)、精神的ストレス(転勤、転職、受験、身内の不幸など)などがあります。
 下垂体性の卵巣機能不全の原因としては、下垂体の腫瘍(しゅよう)や、下垂体の近くにできた腫瘍による圧迫、出産で大量出血をした後におこるシーハン症候群(コラム「シーハン症候群」)などが考えられます。
 そして、卵巣性のものの原因としては、感染症(以前は梅毒(ばいどく)などによるものがありましたが、最近はほとんどみられません)、手術や放射線照射による卵巣実質(卵巣そのもの)の破壊、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)(「卵巣嚢腫」)や卵巣腫瘍などがあります。
 そのほか、内分泌疾患(ないぶんぴつしっかん)(甲状腺(こうじょうせん)機能の低下症や亢進症(こうしんしょう)など)や、別の病気で薬(精神安定剤や睡眠薬、胃薬、血圧の薬など)を使用しているためにおこる高プロラクチン血症などによっても、卵巣機能不全がおこります。
[治療]
 根本的には、原因を除去することが中心となります。
 また、卵巣の機能をよくする薬もいくつかあり、排卵誘発剤であるクエン酸クロミフェンはよく使われます。
 漢方薬でも、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や温経湯(うんけいとう)などのように、卵巣機能不全に効果のあるものがあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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