原田病(読み)ハラダビョウ(英語表記)Harada's disease

デジタル大辞泉 「原田病」の意味・読み・例文・類語

はらだ‐びょう〔‐ビヤウ〕【原田病】

眼球のぶどう膜・皮膚・内耳など色素細胞がある組織に炎症を起こす全身性疾患。両眼の視力低下・耳鳴りなどが起こり、白髪や皮膚に白斑がみられる。メラノサイトを攻撃する自己免疫疾患と考えられている。大正15年(1926)に眼科医の原田永之助が発見した。フォークト・小柳・原田症候群。

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共同通信ニュース用語解説 「原田病」の解説

原田病

体の免疫システムメラニン色素をつくる細胞を誤って攻撃する自己免疫疾患。発見者の名を冠した病名で、かつては「原田氏病」とも。頭痛などの前駆症状に続き視力障害が現れることが多い。ステロイド投与で軽快するとされる。

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六訂版 家庭医学大全科 「原田病」の解説

原田病
はらだびょう
Harada's disease
(眼の病気)

どんな病気か

 日本では、ベーチェット病サルコイドーシスとともに、頻度の高いぶどう膜炎のひとつです。日本人を含め、アジア系の人種に多くみられます。色素細胞に対して免疫反応が起こることが原因と考えられ、眼だけでなく、色素細胞がある脳、皮膚、毛髪、内耳などの組織も侵されるため、ぶどう膜・髄膜炎(ずいまくえん)症候群とも呼ばれています。

原因は何か

 どうして色素細胞に対する免疫反応が起こるのかは、わかっていません。遺伝的素因が関係しているといわれており、白血球血液型にあたる組織適合抗原HLA)のなかの特定の型(DR4やDR53)が深く関わっているといわれています。

症状の現れ方

 発熱、のどの痛みなどのかぜのような症状、耳鳴り難聴めまい、頭痛などが先に現れることもあります。時に頭皮にピリピリするなどの違和感が出てきます。眼の症状としては、まぶしい、眼の奥のほうが痛い、物が見えにくいなどが、通常、両眼に現れます。

検査と診断

 眼底検査を行うと、網膜剥離(もうまくはくり)を伴う特徴的な炎症像がみられます。この網膜剥離は滲出性(しんしゅつせい)網膜剥離と呼ばれ、炎症に伴って起こるもので、通常の網膜に裂孔(れっこう)ができて起こる網膜剥離とは違い、手術の必要はありません。炎症を鎮めることによって治ります。蛍光(けいこう)眼底造影検査を行うと、網膜剥離に相当するところで造影剤が漏出するなどの特有の所見が得られます。髄液(ずいえき)検査や聴力検査なども必要です。

治療の方法

 発症早期におけるステロイド薬の大量点滴投与が有効と考えられています。

 ステロイド薬は大量に投与すると血栓の形成、高血圧、血糖上昇などの重い副作用が出る危険性もあるので、入院が必要です。超大量のステロイド薬を短期間に集中して投与する、いわゆるパルス療法が行われることもあります。前部(ぜんぶ)ぶどう膜炎(まくえん)を併発することも多く、局所的な治療として、消炎のためのステロイド薬の点眼や、虹彩(こうさい)癒着(ゆちゃく)防止のための散瞳薬(さんどうやく)の点眼も行われます。

 多くの場合、発症後2カ月くらいで回復期に入り、網膜剥離の消失に伴って視力ももどってきます。回復後、眼底は色素脱失によりいわゆる“夕焼け状眼底”と呼ばれる特徴的な状態になります。色素細胞の損傷によって、皮膚や頭髪、眉毛などの一部が白くなることもあります。眼の炎症は一度治ってから再発することもあり、注意が必要です。

病気に気づいたらどうする

 治療が遅れると炎症が慢性化しやすいので、早めの眼科受診が必要です。

関連項目

 交感性眼炎

河本 知栄, 喜多 美穂里

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家庭医学館 「原田病」の解説

はらだびょうふぉーくとこやなぎはらだびょう【原田病(フォークト・小柳・原田病) Vogt-Koyanagi-Harada disease】

[どんな病気か]
 全身のメラニン細胞(メラニン色素を有する細胞)に対する免疫反応(めんえきはんのう)が高まったためにおこるぶどう膜炎(まくえん)の一種で、日本人などの有色人種におこります。
 かつては虹彩(こうさい)(毛様体(もうようたい))炎(えん)の症状が著しい「フォークト・小柳病」と、脈絡膜炎(みゃくらくまくえん)から網膜剥離(もうまくはくり)を生じる「原田病」として別々の病気と考えられていましたが、どちらも経過中に眼底や全身の色素が薄くなっていくことから、同じ病気と考えられるようになり、フォークト・小柳・原田病あるいは原田病と呼ばれるようになりました。
[症状]
 発熱、頭痛、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)などのかぜ症状で始まり、急に両目がかすんだり、ものがゆがんで見えたり、見えなくなったりします。そのころには、めまい、耳鳴(みみな)り、難聴(なんちょう)もともないます。髄液検査(ずいえきけんさ)では髄膜炎(「髄膜炎とは」、「細菌性(化膿性)髄膜炎」、「流行性脳脊髄膜炎」、「結核性髄膜炎」、「真菌性髄膜炎」、「ウイルス性髄膜炎」)がみられます。
 その後、頭髪、まゆげ、まつげが抜けたり、白髪化したり、また、皮膚に白斑(はくはん)が見られるようになります(早期治療により、脱毛、白髪、白斑などが見られることは少なくなっています)。
 両眼に著しい虹彩(毛様体)炎、脈絡膜炎による網膜剥離、視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)の浮腫(ふしゅ)のみられることが、原田病のぶどう膜炎の特徴です。
[治療]
 全身的なステロイドの大量投与(点滴)が行なわれ、その後、内服でステロイド量を徐々に減量します。通常、数か月におよぶステロイド治療が必要です。また、虹彩(毛様体)炎に対するステロイドや散瞳薬(さんどうやく)の点眼も行なわれます。ステロイド大量投与が行なわれる以前は、ぶどう膜炎が慢性化するため、白内障(はくないしょう)、緑内障(りょくないしょう)、眼底の萎縮(いしゅく)のために、重篤(じゅうとく)な視力障害を生じる場合が少なくありませんでした。現在では、90%以上で良好な視力が得られるようになりましたが、1年以上の長期間にわたってステロイド治療が必要となる場合もあります。
 発病後、早期にステロイド大量投与を開始することが、この病気の予後の決め手となります。

はらだびょうふぉーくとこやなぎはらだびょう【原田病(フォークト・小柳・原田病)】

 神経系が系統的におかされる病気です。頭痛、吐(は)き気(け)をともなった発熱に始まり、両側のぶどう膜炎(まくえん)、脈絡膜炎(みゃくらくまくえん)などの眼症状が出現(「原田病(フォークト・小柳・原田病)」)、ついで耳鳴(みみな)り、難聴(なんちょう)、平衡失調(へいこうしっちょう)などの内耳(ないじ)障害が出てきます。
 色素細胞は神経と発生起源が同じであるため、障害は色素細胞にもおよび、神経症状が出現して数か月以内に眉毛(まゆげ)、まつ毛、頭髪が白毛となり、その後、目の周囲に左右対称に白斑(はくはん)ができます。また、脱毛や、不規則な白斑が胴体(どうたい)に散らばるようにできます。
 好発年齢は、20~40歳で、女子にやや多く、有色人種、とくに日本人に多くみられます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原田病」の意味・わかりやすい解説

原田病
はらだびょう

漿液(しょうえき)性髄膜炎を伴う両眼性の急性滲出(しんしゅつ)性ぶどう膜炎をいう。ぶどう膜(虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜の総称)ばかりでなく、内耳、髄膜、皮膚、毛髪などを侵す全身病でもあり、白人に少なく有色人種、とくに日本人に多い。原因としてはメラノサイトを抗原とする自己免疫説が有力で、免疫遺伝的素因の関与も大きい。両眼の急激な視力障害で発病する急性びまん性脈絡網膜炎で、その数日前から頭痛、耳鳴り、難聴、感冒様症状などを訴えることが多い。初期の網膜には強い浮腫(ふしゅ)(むくみ)、混濁が多発し、しばしば視神経炎や網膜剥離(はくり)を認めるが、3~4か月で消炎し、眼底は夕焼け空のような赤みを帯び、視力もほぼ元どおりに回復するが、経過中に頭髪・眉毛(びもう)(まゆげ)・睫毛(しょうもう)(まつげ)の脱毛や白変、皮膚の白斑(はくはん)など全身症状のみられることが多い。原田病には、脈絡膜を強く侵す原田型と、虹彩、毛様体炎を主徴とするフォークト‐小柳(こやなぎ)型とがある。後者のほうが後遺症も多く、視力低下も強くて予後が悪い。治療で重要なことは、発病のごく初期に大量のステロイド全身療法を行うことである。そのほかは、ぶどう膜炎に準じた治療が行われる。

 なお、病名は発見者である原田永之助(えいのすけ)(1892―1946)にちなんだものである。

[小暮美津子]

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世界大百科事典(旧版)内の原田病の言及

【ぶどう膜(葡萄膜)】より


[各種のぶどう膜炎]
 ぶどう膜炎では,特徴的な経過あるいは特異的検査結果などを組み合わせて臨床診断がされる。日本におけるぶどう膜炎の代表は,ベーチェット病,サルコイドーシス,原田病である。 ベーチェット病は,眼症状,口腔再発性アフタ,皮膚症状,外陰潰瘍を主要症状とする全身疾患である。…

※「原田病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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