吉野水分神社(読み)ヨシノミクマリジンジャ

デジタル大辞泉 「吉野水分神社」の意味・読み・例文・類語

よしのみくまり‐じんじゃ【吉野水分神社】

奈良県吉野郡吉野吉野山にある神社。主神天水分命あまのみくまりのみこと本来は水の分配をつかさどる神だが、「みくまり」がなまって「みこもり(御子守)」となり、子守・子授けの神として祭られるようになったといわれる。本殿などの社殿は、慶長9年(1604)に豊臣秀頼ひでよりが再建したもので、国の重要文化財。平成16年(2004)「紀伊山地霊場と参詣道」の一部として世界遺産文化遺産)に登録された。通称、子守明神。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「吉野水分神社」の解説

吉野水分神社
よしのみくまりじんじや

[現在地名]吉野町大字吉野山小字子守

吉野山子守こもり集落の上方に鎮座。俗に子守明神とよばれる。旧村社で、吉野八社明神の一。祭神は正殿に天之水分あめのみくまり神、右殿に天万栲幡千幡姫あまよろずたくはたちはたひめ命・玉依姫たまよりひめ命・天津彦火火瓊瓊杵あまつひこほほににぎ命、左殿に高皇産霊たかみむすび神・少彦名すくなひこな神・御子みこ神を祀る。「延喜式」神名帳の吉野郡「吉野水分ヨシノヽミコマリ神社大、月次新嘗」に比定される。古くは吉野山の山頂青根あおねヶ峯に「吉野水分峯神」として祀られ崇められた。今も水分神社跡が広野千軒ひろのせんげん(現吉野町)に残る。

「続日本紀」文武天皇二年(六九八)四月二九日条に「奉馬于芳野水分峯神、祈雨也」とあり、承和七年(八四〇)一〇月従五位下(続日本後紀)、天安三年(八五九)一月正五位下を授位(三代実録)。後醍醐天皇の延元二年(一三三七)には正二位の神階を授けられた(神社明細帳)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「吉野水分神社」の意味・わかりやすい解説

吉野水分神社 (よしのみくまりじんじゃ)

奈良県吉野郡吉野町に鎮座。旧村社。天之水分大神ほか5神をまつる。水分神流水を分配することをつかさどる神で,この神をまつった神社は諸国にあり,朝廷豊年を祈請した。吉野水分神社は吉野首(おびと)の祖神で,《延喜式》神名帳にも記載されている。後世〈みくまり〉が訛(なま)って〈みこもり〉といわれ,子守明神に結びついて,子育ての神として信仰された。木像の玉依姫命座像は国宝例祭は10月16,17日。
執筆者: 社殿は,中庭を囲って,北に楼門とその両側に付く翼廊,西の一段高いところに本殿,南に幣殿,東に拝殿が配置されている。これらの社殿は1604年(慶長9)豊臣秀頼によって再興された。本殿は桁行9間,梁間2間の流造(ながれづくり)の形式をとり,正面に千鳥破風を三つ並べるが,本来は中央に一間社春日造,この両側に三間社流造が配置されていたのを相の間を設けて連結し,一つの屋根に納め,両側の流造に千鳥破風をつけたのであって,現在も各社殿ごとに別々の茅負(かやおい),木負(きおい),軒付をもっている。組物,虹梁,長押(なげし)などに極彩色をほどこし,蟇股(かえるまた),木鼻などに桃山時代の特徴をよく表している。
神社建築
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉野水分神社」の意味・わかりやすい解説

吉野水分神社
よしのみくまりじんじゃ

奈良県吉野郡吉野町吉野山に鎮座。天水分命(あまのみくまりのみこと)ほか六神を祀(まつ)る。7世紀末以来、朝廷から祈雨(きう)の奉幣を受けた記録がある。『延喜式(えんぎしき)』には祈雨神八五座の一に列し、名神(みょうじん)大社でもある。859年(貞観1)正(しょう)五位下(げ)を奉叙された。本来は水の配分をつかさどる神であるが、のちミクマリをミコモリと訛(なま)り、子守明神と称されたように、子育ての神あるいは安産の神とする信仰が生じた。本殿、幣殿、拝殿、楼門、回廊などからなる社殿は、1604年(慶長9)に豊臣秀頼(とよとみひでより)が再建したもので国の重要文化財に指定されている。木造の玉依姫坐像(たまよりひめざぞう)は鎌倉期の作で国宝である。例祭は10月第三土曜日。

[熊谷保孝]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「吉野水分神社」の意味・わかりやすい解説

吉野水分神社【よしのみくまりじんじゃ】

奈良県吉野町吉野山に鎮座。旧村社。天之水分神ほか5神をまつる。通称は子守明神。吉野の水源をつかさどる神。延喜式内の大社。例祭は10月16日。国宝の玉依姫命座像などがある。2004年紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産条約の文化遺産リストに登録された。
→関連項目吉野山

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「吉野水分神社」の解説

吉野水分(みくまり)神社

奈良県吉野郡吉野町の吉野山にある神社。延喜式内社。主祭神は天之水分(あめのみくまり)大神。水の分配を意味する“みくまり”が“みこもり(御子守)”に転訛して「子守さん」と呼ばれ、子宝の神として信仰を集めるようになった。鎌倉時代作の玉依姫坐像は国宝。「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコの世界遺産に登録。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉野水分神社」の意味・わかりやすい解説

吉野水分神社
よしのみくまりじんじゃ

奈良県吉野町吉野山に鎮座する元村社。子守明神ともいう。アメノミクマリオオカミら7神を祀る。本来,水の分配を司り,農業を守護する神であるが,子守神としても知られる。『玉依姫命坐像』 (国宝) を有する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の吉野水分神社の言及

【水分神】より

…《古事記》には〈天之水分神〉〈国之水分神〉として見えている。《延喜式》神名帳には,大和国(奈良県)に葛木(かつらぎ)水分神社,吉野水分神社,宇太(うだ)水分神社,都祁(つげ)水分神社が,河内国(大阪府)に建(たけ)水分神社,摂津国住吉郡(大阪府)に天水分豊浦命神社が記載されている。《延喜式》によると神祇官が執行する四時祭の祈年(としごい)祭と月次(つきなみ)祭や臨時祭の祈雨神祭(きうしんさい)には,大和国の葛木,吉野,宇太,都祁の四つの水分神社に奉幣や馬の奉納があった。…

※「吉野水分神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android