(1)日本古代の律令制のもとで,国衙(こくが)の政務などを報告するため,毎年定期に上京する4種の使者。朝集使(ちようしゆうし),大帳使(だいちようし)(計帳使とも),貢調使(こうちようし),正税帳使(しようぜいちようし)をさす。いずれも国司がその任にあたるが,朝集使のみ四等官にかぎられ,他は史生(ししよう)などの雑任(ぞうにん)でもよかった。朝集使は国司・郡司の勤務成績報告書その他の公文書を持参し,在京中は朝儀に参列する。大帳使は課役負担者の統計表である大帳その他の公文書を持参し,貢調使は調・庸などの貢納物を京に運ぶのを指揮するとともに,関連する公文書を持参する。また正税帳使は,国衙財政の決算報告書である正税帳その他の公文書を持参する。四度使が持参する公文書を四度公文(よどのくもん)といい,その付属文書を枝文(えだぶみ)といった。中央政府はこれらの公文書を通じて国々の動静を把握したが,平安時代に地方政治が乱れるにともない,しだいに四度使の派遣はみられなくなった。
(2)平安時代の中期以後に,国衙領支配のため,国衙の命令によって在地に派遣された,年に4度の使者。出挙(すいこ)使,検田使,計帳使,収納使の4使で,郡司などが任じたらしい。
執筆者:早川 庄八
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
律令(りつりょう)時代、地方政治の実態を中央政府に報告するために上京した、大(計)帳使、貢調使、正税帳(しょうぜいちょう)使、朝集使の四種の使をいう。いずれも国司の目(さかん)以上がその任にあたった。四度使のもたらした大(計)帳、調帳、正税帳、考文(こうぶん)(勤務評定書)を中心とする朝集使持参の帳簿は、四度公文(くもん)とよばれ、地方より上申される諸文書、帳簿のなかでもとくに重要視されたが、それぞれについて枝文(えだふみ)とよばれる膨大な関連文書があった。
律令政府の日常業務は、文書主義といわれるほどこれらの公文に基づいて遂行された。政府は公文と現物を照合したり、公文と公文とを比較検討したりなどして、地方政治の実態把握や不正・不備の発見とその是正に努めた。四度使として上京した国司たちは、単に公文を上申するだけでなく、関係官司に出頭して監査を受ける責任があり、もし不備や錯誤が発見されると、公文を返却されて、その再提出を求められる場合もあった。
[福岡猛志]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
律令制下,諸国からの公文(くもん)をたずさえて上京する使者の主要なもの。毎年諸国から上京する正税帳使(しょうぜいちょうし)・大帳使(だいちょうし)・貢調使・朝集使の4使者は,諸国の政務と中央での政務をつなぐ重要な役割を担い,四度使と総称されて重視された。8世紀中頃の天平期には,すでに四度使の概念が形成されていたとみられる。国司の官人(史生(ししょう)や医師なども含む)から使者が任じられ,補佐のために雑掌(ざっしょう)という在地者が複数従い,多数の四度公文(よどのくもん)を運んだ。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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