四阿(読み)シア

デジタル大辞泉 「四阿」の意味・読み・例文・類語

し‐あ【四×阿】

あずまや。ちん
古代中国で、寄せ棟造りの屋根

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精選版 日本国語大辞典 「四阿」の意味・読み・例文・類語

あずま‐やあづま‥【四阿・東屋・阿舎】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「あづま」の屋の意で、もと、田舎風の家をいうといわれる )
    1. あずまやづくり(四阿造)
      1. [初出の実例]「為大極殿未一レ成、権造四阿(あづまや)殿、於此受朝焉」(出典:続日本紀‐天平一四年(742)正月丁未)
      2. 「四阿 阿豆万屋」(出典:新撰字鏡(898‐901頃))
    2. 庭園や公園内に、休憩、眺望のため、あるいは園内の一点景として設けられる小さな建物。屋根は四方を葺(ふ)きおろした方形(ほうぎょう)造り、寄棟(よせむね)造りになっている。壁がないものもある。
      1. [初出の実例]「あづま屋か四方へおつる家桜〈広寧〉」(出典:俳諧・毛吹草追加(1647)上)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 催馬楽(さいばら)曲名。「楽家録‐巻之六・催馬楽歌字」所収の「東屋(あづまや)真屋(まや)のあまりの、その、雨そそぎ〈略〉」をさす。
    2. [ 二 ] ( 東屋 ) 「源氏物語」第五〇帖の名。宇治十帖の第六。薫二六歳の八月から九月まで。薫は、亡き大君に生き写しの浮舟に心を奪われ、宇治山荘に住まわせる。

四阿の語誌

[ 一 ]挙例「続日本紀」にも見えるように、七、八世紀の宮殿や主要な寺院は寄棟造りか入母屋造りであった。それを「あづまの屋」と呼んだのは、大陸から新しい建築様式が伝来する以前の建築が宮殿や神社が切妻造りで「真屋」と呼ばれ、民家が寄棟造りであったから以前の呼称がそのまま流用されたためであろう。催馬楽や和歌、「源氏物語」の巻名などでは、建築様式ではなく、もともとの茅葺きなどの粗末な家、田舎の家の意で用いられている。


し‐あ【四阿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「阿」は、棟(むね)、簷(のき)、柱などの意 ) 四本の柱で建てられた建物。
    1. [初出の実例]「初成大廈巧工磨、基擬明堂四阿」(出典:本朝無題詩(1162‐64頃)一・賀大極殿新成〈藤原季綱〉)
    2. [その他の文献]〔周礼‐冬官・匠人〕
  3. 庭園などの休憩所にする壁のない屋根と柱だけの小屋。あずまや。亭(ちん)

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改訂新版 世界大百科事典 「四阿」の意味・わかりやすい解説

四阿/東屋 (あずまや)

庭園などに設けられた休息用の小建築で,亭(ちん)とも呼ぶ。方形平面で4本柱とするのが普通であるが,多角形円形のものもあり,屋根は宝形造(ほうぎようづくり)(屋根)でカヤ(茅)や杉皮,板でふいたものが多い。壁は全くないか,ごく一部にあるだけで,内部に腰掛けを設ける。桂離宮卍字亭は腰掛けが卍形に配置された四阿の例である。

 四阿の〈阿〉は中国語では棟の意で,四阿は四方に棟のある建物,すなわち宝形造や寄棟造の建物をさす。日本古代でも四阿はそのような意味で使われ,切妻造の建物,すなわち真屋(まや)に対する言葉であった。この場合,真屋には〈真正の家屋〉,〈あずまや〉には〈へんぴな地の家屋〉という意味が含まれているが,これは神社建築に見られるような切妻造を高級視する習慣に基づくものであろう。しかし,中国では四阿の方を高級視し,日本でも宮殿や寺院はその考えで建てられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「四阿」の意味・わかりやすい解説

四阿
あずまや

庭園内に設けられた小建築。規模はおおよそ2坪(1坪は6尺平方、約3.3平方メートル)から3坪ぐらいまでのものが多い。休息や眺望を目的にしたものであり、回遊式庭園に設置される場合がほとんどである。また、庭園の点景にもなって雅致を添えもする。屋根は、四角、六角、丸形などあって、茅葺(かやぶ)きや杮(こけら)葺きにするが、ときには瓦(かわら)葺きもある。普通は四方の壁を吹き放つ。南北朝時代ごろ(14世紀)から置かれるようになったが(京都・西芳寺(さいほうじ)の潭北亭(たんほくてい)など)、江戸初期の大名庭園で大いに流行し今日に及んでいる。

[重森完途]

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百科事典マイペディア 「四阿」の意味・わかりやすい解説

四阿【あずまや】

東屋・亭とも書く。阿とは,中国語で建物の棟を意味する。したがって四阿とは,四方に棟をもった家屋の名。初めは四方の壁が少なく,あるいは全く欠き,平面も方形であったが,庭園の休息・眺望などのために造られるようになると,円形・多角形など自由な平面,意匠が考案された。
→関連項目入母屋パビリオン

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普及版 字通 「四阿」の読み・字形・画数・意味

【四阿】しあ

屋の四面に更に各々二本の棟木を増して覆い、霤(あまだれ)を作る。重屋・四霤ともいう。〔周礼、考工記、匠人〕殷人は重屋、堂の脩(なが)さ七、堂の崇(たか)さ三尺、四阿の重屋あり。

字通「四」の項目を見る

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「四阿」の解説

あずまや【四阿/東屋】

➀四方へ軒(のき)をふきおろした、4面の屋根を持つ家屋。◇「阿」は中国語で「棟」の意。「寄せ棟造り」ともいう。
➁庭園などに設けられる、休憩や眺望のための小建築物。一般に簡単な施工方法で建てられ、壁がなく、4本の柱で屋根を支える。◇「亭(ちん)」ともいう。◆「東屋」はもともと「東国の田舎屋」の意。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「四阿」の意味・わかりやすい解説

四阿
あずまや

東屋,阿舎とも書く。
(1) 寄棟造の屋根。元来は田舎風の屋根を意味し,真屋 (まや) に対する語。
(2) 近世以後は庭園内の小亭,休息所,亭 (ちん) をいう。

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世界大百科事典(旧版)内の四阿の言及

【社寺建築構造】より

…日本建築は,明治維新後の西洋建築の輸入により煉瓦造,石造が始まるまで,ながく木造であった。その様式は世界的に見れば,朝鮮建築とともに中国建築様式系の一部であり,その構造・形式の大部分は中国から伝来したものである。しかし日本で始められたものもあり,また細部の取扱い,曲線の性質,意匠の洗練さなどの面で,日本独自の様式をつくっている。日本古来の木造建築のうちでも,社寺建築はながく建築界の主流を占め,その構造もまた和風木構造のなかで最も高度な技術をもつものへと発達した。…

【パーゴラ】より

…屋根の代りに水平またはアーチ形の格子に葭簀(よしず)をのせたり蔓(つる)性植物をはわせたりした,藤棚のような日よけひさしや東屋をいう。つる棚と訳される。語源のペルグラpergula(ラテン語)はさしかけの軒店や部屋の張出し部などを指し,特殊な意味として学校の教室,日覆い,ブドウ棚等をも指した。とくにブドウ棚は古代ギリシアでは,ディオニュソス(バッコス)との関連から,演劇的な意味をもつ一種の舞台とみなされることがあり,この記憶がパーゴラ一般の性格にも影響を及ぼしているとみられる。…

【パビリオン】より

…東屋(あずまや),離れ,あるいは博覧会場の展示館のような,独立棟の建物。本来は野営のためのテントを指し,形がチョウpapilio(ラテン語)に似ることから出たものという。やがて仮設の建物一般を指すようになり,現在では,機能や構造と関係なく,分棟形式で建てられた建物の一棟を指し,その配置形式を〈パビリオン・タイプ〉または〈パビリオン・システム〉と呼ぶ。こうした配置は,原始的集落や兵舎,入植地の家々など,応急的,仮設的な建物によく見られるが,近世ヨーロッパで,古典建築理論の影響により,建物の機能を整理し,一つの空間単位に一つの機能を当てる考え方が生まれ,また主屋に対し付属棟(翼部)――これをまたパビリオンと呼ぶ――を対称的に配置するような空間構成が好まれて,より整然とした形で再生してくる。…

※「四阿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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