国訴(こくそ)(読み)こくそ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

国訴(こくそ)
こくそ

「くにそ」ともよぶ。近世中・後期の合法的広域訴願闘争。小商品生産に従事する農民が、都市特権商人による流通独占を打破して商品の自由な販売を求め、あるいは商品生産農業に不可欠な肥料の安価な購入を実現するために、領主の支配領域を越えて広範な村々が結集し、合法的な訴願を繰り返したもの。商品生産の発展が著しい畿内(きない)では、1740年(元文5)以降、菜種(なたね)、油、綿、金肥の流通をめぐって展開するが、1823年(文政6)には摂津(せっつ)、河内(かわち)、和泉(いずみ)3国1007か村が参加する一大訴訟を展開し、1855年(安政2)と1865年(慶応1)にも1000余の村々の結集する訴願が行われた。一般に畿内の訴願を国訴とよぶが、1789年(寛政1)と1843年(天保14)に、下肥(しもごえ)値下げを求める訴願が江戸周辺のそれぞれ1016か村、283か村を結集して行われ、1813年(文化10)には遠江(とおとうみ)、駿河(するが)の100余の村々が、茶の独占的集荷に反対するなど各地に広域訴願が展開する。幕藩制的流通の心臓部である大坂市場をめぐる畿内農村の訴願を中心に、各地に展開する広域訴願は、当時、諸藩の国益政策とよばれる専売制的収奪に反対する強訴(ごうそ)・打毀(うちこわし)とともに、幕藩制的流通機構を破壊する役割を担った闘争であったといえる。

[保坂 智]

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