(読み)サン

デジタル大辞泉 「産」の意味・読み・例文・類語

さん【産】[漢字項目]

[音]サン(漢) [訓]うむ うまれる うぶ むす
学習漢字]4年
〈サン〉
子をうむ。「産褥さんじょく産婦産卵安産あんざん出産早産そうざん流産りゅうざん
ものを作り出す。作り出されたもの。「産業産出産地産物月産原産国産所産生産増産畜産名産量産
生活に必要なもとで。「遺産家産恒産財産倒産破産不動産
〈うぶ〉うまれた時の。「産着産毛産声産土うぶすな産湯
[名のり]ただ・むすび
[難読]土産みやげ産霊むすび

さん【産】

(多く「お産」の形で)子供を産むこと。出産。分娩ぶんべん。「おが軽い」
「家内が―の気が付いたようだと」〈二葉亭・出産〉
その土地の生まれであること。「彼は大阪のだ」
その土地で産出されること。また、そのもの。「愛媛のミカン」
財産。「一代でを成す」
[類語]産物物産土産財産資産資財財貨貨財私産私財家産家財身代しんだい身上しんしょう恒産

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「産」の意味・読み・例文・類語

うぶ【産・生・初】

  1. [ 1 ] 〘 造語要素 〙 名詞の上に付いて、出産に関する語を作り、「生まれるとき」「生まれた子どもの」などの意を添える。「うぶ祝」「うぶ衣(ぎぬ)」「うぶ毛」「うぶ声」「うぶ屋」「うぶ養い」など。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 形動 )
    1. 生まれたとき。また、生まれたときのままであるさま。生まれつき。生来。
      1. [初出の実例]「撫できけむうぶの黒髪やぶりして変はれる筋は心細しや」(出典:類従本兼澄集(1012頃))
    2. ( 初・初心 ) 性情のすなおなさま。また、世間の物事を十分に知っていないさま。世馴れぬさま。初心(しょしん)
      1. [初出の実例]「此茶碗は見所のある道具〈略〉うぶに魚屋(ととや)ならんと思へども、不躾ながら魚屋なれば高金にて、たやすく手に入兼る道具」(出典:滑稽本・指面草(1786)中)
      2. 「未だ初心(ウブ)で複雑(こみい)った社会(よのなか)のことは一向解らない」(出典:破戒(1906)〈島崎藤村〉二一)
    3. ( 初・初心 ) とくに、男女の情に通じていないさま。初心(しょしん)
      1. [初出の実例]「沓脱(くつぬき)にあるおたけが下駄、〈略〉うぶと見せても桐台は仕上げ直しの東下駄、しかも鼻緒はまがひ天鵞絨(びろうど)」(出典:歌舞伎・日月星享和政談(延命院)(1878)五幕)
    4. 自然のままで、人手が加わっていないこと。また、できあがったときのままで、傷やよごれのないさま。〔和英語林集成(初版)(1867)〕
      1. [初出の実例]「絵の出来が無類で、品がウブで、胡粉一つ剥げてないなんてものは」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵〉古物家)
    5. 骨董品古本などで、今まで市場や店に出されていないこと。また、その品。
      1. [初出の実例]「いやこれは与市さん、何ぞうぶなものでもありますかね」(出典:歌舞伎・船打込橋間白浪(鋳掛松)(1866)二幕)

さん【産】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 子どもを産むこと。出産。分娩(ぶんべん)
      1. [初出の実例]「やんごとなきところの名うちいひて、御さんたひらかになど、げんげんしげに申したるなど」(出典:枕草子(10C終)一二〇)
    2. 生まれた場所。その土地の生まれ。出生地。出身地。
      1. [初出の実例]「最期迄日本の恥を思はれし、我も同じく日本のさん生国は捨まじ」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)五)
      2. [その他の文献]〔孟子‐滕文公上〕
    3. その土地でできること。収穫されること。また、その品物。物産。産物。
      1. [初出の実例]「此部の産は、獅子、虎、豹、象、駱駝」(出典:輿地誌略(1826)七)
    4. くらし。なりわい。すぎわい。生業。職業。
      1. [初出の実例]「それ足は行歩を産として、外の用をしらず」(出典:俳諧・本朝文選(1706)九)
      2. [その他の文献]〔孟子‐梁恵王上〕
    5. くらしのもとでになる生業の利益、財貨。財産。資産。身代(しんだい)
      1. [初出の実例]「人、恒の産なき時は恒の心なし」(出典:徒然草(1331頃)一四二)
      2. [その他の文献]〔史記‐淮南王安伝〕
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 地名などの下に付いて、その土地で作られたものであることを表わす。
    1. [初出の実例]「一目亜細亜産(サン)動物なりとは、誰にもわかりさうな」(出典:諷誡京わらんべ(1886)〈坪内逍遙〉五)

む【産】

  1. 〘 他動詞 動 〙 「うむ(産)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「そらみつ 大和の国に 雁(かり)(こ)(ム)と聞くや」(出典:古事記(712)下・歌謡)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「産」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

(旧字)
11画

[字音] サン
[字訓] うむ・くらし

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
旧字はに作り、(文)+厂(かん)+生。は文身。通過儀礼として、加入の儀礼の際に文身を加えることがあり、初生のときは、成人の際は(彦)、見の礼を顏(顔)、死喪のときを・爽・といい、その字に含まれる・乂・百は、みなその文身の象。は生子の厂(額(ひたい)の形)に文を加える儀礼をいう。〔説文〕六下に「生まるるなり。生に從ふ。(げん)の省聲なり」とするが、と声の関係はなく、ともに会意の字である。わが国でも生子の額に×をつけて、あやつこという。あやは霊、呪的な意味を以て加えた。邪霊の憑依するのを防ぐためである。

[訓義]
1. うむ、うまれる。
2. そだつ、はぐくむ。
3. はじまる、おこる。
4. うみ出す、つくり出す、ふえる。
5. くらし、財産。
6. 生まれたところ、故郷。

[古辞書の訓]
名義抄 コウム・タクラハ・タネ・ナル・ナリハヒ・マカル・ウマル

[声系]
〔説文〕に声としてなど三字を収める。は牛畜の牲。はくわ、ちょうなの類をいう。字はまたに作り、浅く削りとる意で、の本字である。

[熟語]
産育・産産媼・産翁・産業・産戸・産後・産子・産室産殖・産産褥・産前産畜・産乳・産物・産母・産房・産牧・産門・産卵
[下接語]
安産・遺産・家産・貨産・海産・逆産・旧産・居産・共産・月産・蹇産・原産・減産・恒産・国産・財産・死産・私産・貲産・資産・授産・出産・所産・助産・殖産・水産・多産・胎産・治産・畜産・天産・土産・倒産・同産・動産・特産・難産・日産・年産・農産・破産・半産・物産・民産・無産・名産・有産・産・理産・流産・量産・林産・霊産

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