坐・座・据(読み)すわる

精選版 日本国語大辞典 「坐・座・据」の意味・読み・例文・類語

すわ・る【坐・座・据】

〘自ラ五(四)〙 (すわる意の表記は正しくは「坐」で「座」は書きかえ字)
① 膝を折りまげて席につく。席に腰をおろす。腰かける。
※天草本平家(1592)四「ヨシツネ イクサニ カッテ ウマカラ vorisuuatte(ヲリスワッテ) ヤスマセラルル トコロニ」
② (談判する意をこめて) じっくりと腰を落ち着ける。
浄瑠璃伽羅先代萩(1785)六「夫(それ)迄は、翌(あす)までもいつまでも、こふきっとすはって、お膝に手をついて待っております」
③ (据) (心・肝・性根などが)何事にも動ずることなく、落ち着く。しっかりする。
日葡辞書(1603‐04)「ドウ、または、ココロノ suuatta(スワッタ) ヒト〈訳〉しっかりして確固不動の人」
④ (据) (目や喉などが)機能を十分に果たせなくなって動きがにぶる。多く、「目が据わる」の形で、酒に酔ったり怒ったりしたときなどに目が一点を凝視して動かなくなるさまにいう。
※天正本狂言・野老(室町末‐近世初)「しぶかきはのどがすはりて物もいわれす」
※浮世草子・傾城禁短気(1711)六「是はと腹に据へかねて眼(まなこ)すはるを」
⑤ ある場所に定まって動きがなくなる。物がしっかりと定まる。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)二「宿に若衆の尻のすはる間なく」
⑥ 位置・場所などをしめる。その地位につく。
※源平盛衰記(14C前)二二「足柄の山に関居(スハ)りたりと聞きて」
※虎寛本狂言・腹不立(室町末‐近世初)「是へすゑまし度う御ざる。夫は出家の望所で御座る。すゑてさへ被下るる成らばすはりませう」
⑦ (印判などが)おされる。
※歌舞伎・戻橋脊御摂(1813)五立「鎮守府印鑑のすわった書附」
⑧ (文字などが)しっかりと書かれる。きざみ込まれる。
※光悦本謡曲・三輪(1465頃)「寄りて見れば衣のつまに金色の文字すはれり、読て見れば哥也」
⑨ (浮かんでいた船が)干潮などで水底について動かなくなる。
※玉塵抄(1563)四「ふねのはまのすなについてすわったことぞ」
⑩ 低く横に広がる。
唐人お吉(1928)〈十一谷義三郎〉六「その牝馬を、即興的にさう呼びかけ、それから、その亜細亜式にづんぐりと据わった首を撫でながら」
⑪ (食膳などが)すえられる。他動詞的にも用いる。
※玉塵抄(1563)一七「饌がすわったをみたれば粟の飯にひさごを一そなえたぞ」
咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「そばがきをすはり、ふたを明」
坐禅を組む。
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の人間観「『ぢゃ、坐るんですね』と先生が訊いた」

すわり【坐・座・据】

〘名〙 (動詞「すわる(坐)」の連用形の名詞化)
① すわること。すわったようす。
② ある物を他の物の上に置いたときなどの物の安定度。おちつきぐあい。
※評判記・色道大鏡(1678)一「香炉にても、其外の器物にても、すはりのよきが、盆にても台にてものせて見よき故に」
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「鬢の薄い所為(せゐ)か、髷の座(スワリ)が悪くて」
③ 心や考えなどのおちつき。
※箚録(1706)「分明的実に此処にすわりの本無者は、一生全体の学の根なきと云の旨を知抜ざる故」
※病院の窓(1908)〈石川啄木〉「一滴の汁も残さず柏二杯を平らげたが、するとモウ心にも体にも坐りがついて、先刻の事を考へると、我ながら滑稽(をかし)くなって」
④ 「すわりもち(坐餠)」の略。
※滑稽本・当世阿多福仮面(1780)「文庫蔵のすわり下げよと」
⑤ 道のかたわらに座って、ほどこしを乞うたり、ささやかな物を売ったりする者。
※東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉上「『すわり』とて縁日の夜などに、大道に筵敷きて坐り、火寸(マッチ)、簓(ささら)など三つ四つ前に置きて、哀を乞ふものの傍に寝かせたる乳呑子も、己れの児にはあらで」

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