大将軍(読み)タイショウグン

デジタル大辞泉 「大将軍」の意味・読み・例文・類語

たい‐しょうぐん〔‐シヤウグン〕【大将軍】

《「だいしょうぐん」とも》
古代朝廷に反抗するものを征討するために派遣された官軍の総指揮官。「征東大将軍
平安末期、武臣を統御する人。
鎌倉時代以来、江戸時代まで武家政権の長。→征夷せいい大将軍2
徒党などの指導者。かしら。おさ。頭領。頭目。
暦注八将神の一。金星太白)の精で、この神のいる方角は、三年ふさがりといって、万事に忌まれた。

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精選版 日本国語大辞典 「大将軍」の意味・読み・例文・類語

たい‐しょうぐん‥シャウグン【大将軍】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「だいしょうぐん」「だいじょうぐん」とも )
  2. 全軍の指揮官。総大将。〔漢書‐蕭向伝〕
  3. 令制で、三軍を統率する指揮官。三千人以上の編制の軍を一軍として将軍を置き、三軍に大将軍を置くと規定されている。
    1. [初出の実例]「毎三軍。大将軍一人」(出典:令義解(833)軍防)
  4. 奈良・平安時代、朝廷に反抗する賊軍を征討する官軍の指揮官。蝦夷隼人・反乱軍などを鎮圧する軍隊の指揮官。
    1. [初出の実例]「広嗣遂起兵反。勅以従四位上大野朝臣東人大将軍」(出典:続日本紀‐天平一二年(740)九月丁亥)
  5. 平安末期以来、官方の武士団の総大将。朝廷方の軍の指揮官。
    1. [初出の実例]「保延の比(ころ)、大将軍承り、海賊の張本卅余人からめ進ぜられし賞に」(出典:平家物語(13C前)二)
  6. 武門の棟梁。また、一軍の統率者。武士団の指導者。
    1. [初出の実例]「義家者故頼義長男、経下野陸奥国等、位至正下四位、為院殿上武威満天下、誠是足大将軍者也」(出典:中右記‐嘉承元年(1106)七月一六日)
  7. 鎌倉時代以来、江戸時代まで武家政治の長。征夷大将軍。
    1. [初出の実例]「天是を大将軍へ御与へ」(出典:雑俳・柳多留‐六二(1812))
  8. 徒党などの指導者。一団の仲間を統率するもの。首領。頭(かしら)。頭領。おさ。
    1. [初出の実例]「今昔、世に袴垂と云極き盗人の大将軍有けり」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
  9. 陰陽道でまつる八将神の一つ。太白星の精で、地に降り四方をつかさどるといわれる。巳午未の年は東、申酉戌の年は南、亥子丑の年は西、寅卯辰の年は北というように、三年ごとに四方をめぐって一二年目にもとの方位へもどる。この神のいる方角は、三年塞(ふさが)りといって、なにごとにも忌まれた。
    1. [初出の実例]「是御忌方并大将軍・王相等方、依忌也」(出典:御堂関白記‐寛弘八年(1011)六月八日)

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世界大百科事典(旧版)内の大将軍の言及

【方違】より

…しかしこの神が天上に上る日は天一天上とて何事も吉とされ,藤原実資はその日に寝殿の檜皮をふかせた。王相は月塞りの禁忌であり,八将神は大歳,大将軍,大陰,歳刑,歳破,歳殺,黄旛,豹尾の諸神をさす。とくに大将軍は太白神と同じく金星を意味し裁断をつかさどるといわれ,とくにその祟りをおそれ京都の周辺には平安末から大将軍社がまつられ,中世には八将神を祇園の牛頭天王(ごずてんのう)の子とするようになった。…

【将軍】より

…日本古代においては天皇の命を受け,軍隊を統率して蝦夷(えみし),隼人(はやと)等を討ち,また海を渡って朝鮮半島に戦った軍人の称。《日本書紀》に崇神天皇が四方を征服せしめるために4人を将軍に任じたことが見え(四道将軍),また雄略天皇が紀小弓(きのおゆみ)ら4卿を将軍に任じ,欽明・推古朝に外征の大将軍,副将軍の任命されたことが散見するが,これらは後世の称号をもって追記したもので,当時はただイクサノキミとのみ言い,将軍の号はなかったものと思われる。ただ,《日本書紀》に将軍の肩書を持つ氏族を見ると,大伴・物部はもちろんのこと,蘇我・河辺・境部のいわゆる蘇我一族,それらとともに武内宿禰の裔と称する紀・角・巨勢・葛城・平群・波多の諸氏が目だち,そのほか上毛野・阿倍・吉備などの雄族,そして海人(あま)族である阿曇氏などが挙げられる。…

【軍制】より

…衛尉が南軍,中尉執金吾が北軍を統轄)と地方軍(郡国の都尉が統率)と辺防軍(国境守備隊)とがあった。秦の軍政長官は太尉,漢では大将軍。前漢では徴兵制をとり成人男子を正卒として徴発し,約30年の在役中,1年は禁衛軍(約5万人),1年は出身地の郡の警備隊に勤務,他の期間は在郷兵として都試(軍事訓練)を受けつつ本業に従事した。…

【将軍】より

…そのため将軍は一度軍陣に臨めば王命すら聞かないことを認められた。漢代ではこのような権限を持つ官職は常置の官ではないとの建前をとり,必要に応じて任命し,前・後・左・右将軍のほか最上級の大将軍,車騎将軍,皇帝をまもる衛将軍などがあったが,武帝の対匈奴戦で霍去病(かくきよへい)が驃騎将軍として大将軍衛青とその功が並んだため驃騎将軍は大将軍と格を同じくする将軍号となり,さまざまな美称をつけた列将軍を指揮するようになった。霍光が大将軍として昭帝を補佐した例が,その後外戚の長が将軍として尚書のことにもあずかる風を開き,外戚の権力構造の基本となった。…

※「大将軍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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