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天岩戸(あめのいわと)神話のなかに登場する神。中臣(なかとみ)氏の祖神。天岩戸にこもった天照大神(あまてらすおおみかみ)を引き出すために、神々が神事を行った際、祝詞(のりと)を奏している(『古事記』)。しかし、天岩戸神話の基盤に鎮魂祭があるとすれば、本来この神事をつかさどっていたのは猿女君(さるめのきみ)とすべきである。そこへこの神が登場したり、さらには神事の主宰者のようになっているのは(『日本書紀』一書)、中臣氏が藤原氏になり、その藤原氏の政治的権力が増大するにつれて、この神が割り込んできたとみるべきである。春日(かすが)大社(奈良市)、枚岡(ひらおか)神社(東大阪市)などに祀(まつ)られている。
[守屋俊彦]
(西條勉)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
…天照大神(あまてらすおおかみ)が高天原(たかまがはら)での素戔嗚尊(すさのおのみこと)の乱行にたまりかね天の岩屋戸にこもると世は常闇(とこやみ)となった。神々は集まって評議し,中臣(なかとみ)氏の祖天児屋命(あめのこやねのみこと),忌部(いんべ)氏の祖太玉命(ふとたまのみこと)などに祭りを行わせた。そのとき猿女(さるめ)氏の祖天鈿女命(あめのうずめのみこと)が槽(おけ)をふみとどろかし神憑(かみがか)りして,胸乳もあらわに踊り狂ったので神々は大いに笑った。…
…仍ってその氏に命じて中臣と曰へり〉とあるように,天皇側近の神官として神託を伝えるという職掌による呼称であろう。祖神は天の岩戸や天孫降臨の記紀神話に登場し,春日神社などにまつられる天児屋(あめのこやね)命。遠祖として垂仁朝に大鹿嶋(おおかしま),仲哀朝や允恭朝に烏賊津(いかつ)の名が《日本書紀》にみえ,欽明朝では鎌子(後の鎌子とは別人),敏達・用明朝では勝海(かつみ)が大連の物部氏とともに仏教受容に反対し,勝海は大臣の蘇我氏らに討たれたという。…
※「天児屋命」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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