王権を基礎づける神話として《古事記》神話が編成された時,その冒頭に置かれて神々の世界を統括した宇宙最高神。中国では東方世界の主宰神として天皇大帝があった。この神は天の中心にあって不動の北極星を神格化した神である。アメノミナカヌシノカミはこの天皇大帝の観念の借用であり翻訳であった。この神は《古事記》神話のなかで,民間の太陽信仰を統括かつ祖神化した皇室の天照大神(あまてらすおおかみ)によって,尊厳を具体化され,神話の根幹は,天御中主神→天照大神→天神御子→初代天皇という展開をたどって,王権神話を完成する。日本の支配者が,7世紀より天皇号を使用してその権威を超絶したものとし,ついで,道教で宇宙最高神の権威の象徴であった,鏡,剣を皇位の璽(しるし)とし,《日本書紀》にいたって,国号を,道教でいう天上の清明な世界である〈大和〉と書くにいたる,一連の中国の観念を借りての国家および王権の尊厳化の試みも,この神の成立と関連する。
→天皇
執筆者:吉井 巌
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