天草(市)(読み)あまくさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天草(市)」の意味・わかりやすい解説

天草(市)
あまくさ

熊本県南西部にある市。2006年(平成18)、本渡市(ほんどし)、牛深市(うしぶかし)と天草有明町(ありあけまち)、御所浦町(ごしょうらまち)、倉岳町(くらたけまち)、栖本町(すもとまち)、新和町(しんわまち)、五和町(いつわまち)、天草町、河浦町(かわうらまち)が合併して成立。市域は、天草諸島の天草上島(かみしま)、天草下島(しもしま)、御所浦島牧島などの島嶼(とうしょ)からなり、北は島原湾、西は天草灘(なだ)、南東は八代海(やつしろかい)に臨む。天草上島と天草下島は、天草五橋の開通(1966)によって陸路で九州本土と結ばれ、国道266号、324号、389号が通じる。本渡港牛深港、中田港、鬼池港などの港があり、県内や長崎県、鹿児島県の港との間に定期航路がある。2000年、天草下島に天草空港(県営飛行場)が開港した。

 農業では、温暖な気候を生かしてデコポンポンカン、晩柑(ばんかん)などの柑橘(かんきつ)類や早期米、花卉(かき)、野菜などの栽培が盛ん。天草黒牛、肉用鶏の天草大王も飼育されておリ、特産品として地域ブランドの確立と生産拡大を図っている。漁業は、豊かな水産資源に恵まれ発展してきた。海面漁業、養殖漁業ともに盛ん。また、自然景観、南蛮文化やキリシタンの歴史など、多くの観光資源、文化財にも恵まれ、観光にも力を注いでいる。臨海地域の多くが雲仙天草国立公園(うんぜんあまくさこくりつこうえん)に含まれる。

 史跡・観光地としては、六郎次山(ろくろうじやま)(405メートル)は国指定名勝、本渡地区の町山口川に架かる祇園橋(ぎおんばし)(江戸時代に築かれた石造桁橋(けたばし))は、国指定重要文化財となっており、妙見浦(みょうけんうら)(国指定名勝および天然記念物)は天草灘に臨む景勝地として有名。龍仙島(りゅうせんとう)(片島)は、洞窟(どうくつ)・洞門など海食による独特の景観をもつ国の名勝・天然記念物。島原・天草一揆(いっき)の舞台となった歴史もあり、キリシタン関係の史跡・建造物・遺物が多い。大江天主堂、崎津(さきつ)天主堂があり、天草切支丹(キリシタン)館所蔵の「聖体秘蹟図指物(せいたいひせきずさしもの)」(通称「天草四郎陣中旗」)は国指定の重要文化財。ほかに天草海域公園、下田温泉、久玉(くたま)城跡(久玉氏の居城)などがある。陶磁器製造用の原料として良質の天草石(天草陶石)を産出する。面積683.82平方キロメートル、人口7万5783(2020)。

[編集部]

〔世界遺産の登録〕崎津集落は、2018年(平成30)、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として、世界遺産の文化遺産に登録された。

[編集部 2018年9月19日]


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