原語はサンスクリットのサハーsahāとされ,娑訶(しやか),索訶(さくか)とも訳される。サハーは,本来大地を意味するが,釈尊がこの大地の上に生まれたことから〈釈尊の世界〉〈この世〉の意味になったと考えられる。それゆえ,娑婆は正しくは娑婆世界Sahā-lokadhātuである。一方,これとは別に,堪忍(たんにん),能忍とも,雑会(ぞうえ)とも訳されている。前2者は原語のサハーを〈堪えるsah〉という動詞からつくられた語と解したためであり,後者はサハーとはまったく別の〈集会sabhā〉が原語であると解したためである。このように,娑婆はもともと原語の理解や翻訳語が異なっていたため,中国仏教ではさらにさまざまな意味に転化して用いられている。また,もっともひろく〈堪忍〉の意味に用いられ,忍界(にんかい),忍土(にんど)などとも呼ばれ,この世は人間があらゆる悪事や苦しみを耐えしのばねばならない迷いの世界,つまりいとうべき,捨てさるべき世界と考えられた。しかし,一方,悟りの立場から見ればこの迷いの世界はそのまま仏の悟りの世界にほかならないとして,禅宗では〈娑婆即寂光土(しやばそくじやくこうど)〉といい,迷界のほかに仏界なしと主張した。また《法華経》には,釈迦仏はこの世の霊鷲山(りようじゆせん)上において《法華経》を説いたとしているので,その説法の場所を〈霊山浄土(りようぜんじようど)〉と呼ぶこともある。この浄土は娑婆世界の中に存在するわけであるから,娑婆は釈迦仏の仏国土(ぶつこくど)とも解しうる。
執筆者:井ノ口 泰淳
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大乗仏典において、釈迦(しゃか)の教化する世界、すなわち、われわれ有情(うじょう)の住む世界をいう。サンスクリット語サバーsabhāの音写。サンスクリット語の原義は明確でないが、まず梵天(ぼんてん)の称号の一つとしてサバーパティsabhāpatiあるいはサハーパティsahāpatiという語ができ、それからサバーまたはサハーという世界の名が分離したものと推定され、この梵天の支配する国土の意から、釈迦の教化する世界をさすものに転じたと考えられる。大乗仏教では、彼岸(ひがん)の浄土に対して、此岸(しがん)の有情の世界を娑婆というのであるから、本来娑婆世界は三千世界よりなり、有情、すなわち天、人、地獄、餓鬼(がき)、畜生(ちくしょう)、阿修羅(あしゅら)の六道を含むものである。しかし、わが国では、人間社会のみを娑婆といい、極楽(ごくらく)や地獄などと区別している。また、転じて、軍隊、牢獄(ろうごく)、遊廓(ゆうかく)など自由を拘束されたところからみて、外の自由な社会をもいう。
[高橋 壯]
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