宇陀(読み)うだ

精選版 日本国語大辞典 「宇陀」の意味・読み・例文・類語

うだ【宇陀】

奈良県東部の地域名、また、郡名。大和十郡(こおり)の一つ。古くは菟田県(うだのあがた)、猛田県(たけだのあがた)といった。宇陁。宇太。宇多。菟田。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「宇陀」の意味・読み・例文・類語

うだ【宇陀】

奈良県北東部にある市。大和高原に位置し山林が豊か。平成18年(2006)1月、大宇陀町菟田野うたの町・榛原町室生村が合併して成立。人口3.4万(2010)。
奈良県北東地域の称。大和十郡とごおりの一。上代の菟田県うだのあがた猛田県たけだのあがたにあたる。[歌枕]
褻衣けころもを時片設かたまけて出でましし―の大野は思ほえむかも」〈・一九一〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「宇陀」の意味・わかりやすい解説

宇陀[市] (うだ)

奈良県北東部の市。2006年1月菟田野(うたの),大宇陀(おおうだ),榛原(はいばら)の3町と室生(むろう)村が合体して成立した。人口3万4227(2010)。

宇陀市南部の旧町。旧宇陀郡所属。1956年宇太町と宇賀志村が合体,改称。人口4623(2005)。宇陀山地西麓,宇陀川上流の標高400~600mの丘陵地にある。中心集落は古市場で中世には市が開かれていた。明治中期の創業とされる毛皮産業が町の主要産業で,全国生産の70%を占める。山間部にあるため狭小な耕地が多く,零細な兼業農家が大半を占める。旧大宇陀町にかけて大和金属鉱業の大和水銀鉱山(1971年閉山)がある。古市場には宇太水分(うだのみくまり)神社があり,本殿は鎌倉時代の建築で国宝に指定。また宇賀志は《日本書紀》に載る兄猾(えうかし),弟猾(おとうかし)の本拠地と伝えられ(宇陀),付近の稲戸を中心に古墳が多い。
執筆者:

宇陀市南西部の旧町。旧宇陀郡所属。人口8225(2005)。竜門山地の南東斜面と宇陀川流域に発達した宇陀盆地からなり,平均標高350mの高原地帯である。中心集落の松山は,近世初期は織田氏の城下町として栄え,六斎市も開かれた市場町であった。明治以降も郡役所が置かれるなど,宇陀郡の中心地である。主要産業は農業で,タバコ,シイタケ,花木類の栽培が盛ん。畜産試験場(現,県畜産技術センター)もあり,牧畜も行われている。吉野山地を南部にひかえ,吉野葛の集散地としても知られ,全国の4割を産する。壬申の乱では,吉野を出た天武がここを経由して東国に入った。《万葉集》に歌われた安騎野の地で,柿本人麻呂の〈東の野に陽炎の立つみえてかへりみすれば月傾きぬ〉は,軽皇子がこの地に狩をした際の歌である。松山城の西門の遺構である松山西口関門と江戸時代の薬草栽培地森野旧薬園は,国の史跡に指定されている。
執筆者:

宇陀市中部の旧町。旧宇陀郡所属。人口1万8549(2005)。宇陀山地の入口にあたり,北部には室生火山群に属する額井(ぬかい)岳(812m)などがそびえる。町域の大半は山林で,宇陀川,芳野(ほうの)川沿いに耕地や市街地が広がる。江戸時代には伊勢街道の宿場町として栄えた。近年,近鉄大阪線沿線に宅地開発が進み,京阪方面への通勤者が多く人口が急増している。農業は米作を中心に,ホウレンソウ,ダリア,シイタケなどの栽培が盛んである。町内には八咫烏(やたがらす)神社や仏隆寺,鳥見山公園,室生ダムなどがある。北部は室生赤目青山国定公園に含まれる。
執筆者:

宇陀市北東部の旧村。旧宇陀郡所属。人口5786(2005)。東は三重県に接し,南東部の宇陀山地と北西部の大和高原からなり,高低差が激しい。村の中央を走る断層崖下を宇陀川が北東流し,北部には笠間川が流れる。村域の大部分を山林が占め,主産業は農林業と室生寺を中心とする観光で,農業は米作のほか茶や野菜栽培が行われる。室生寺は〈女人高野〉として著名だが,室生川が宇陀川に合流するところにある大野寺は石仏(史)で有名。屛風ヶ浦とよばれる石英安山岩の岩壁に仏身約11.5m(光背とも約13.8m)の弥勒像を刻んだ磨崖仏で,後鳥羽院の発願により,宋人石匠の手になる。村内西部,染田の春日神社境内にある天満神社(染田天神)は南北朝期の創建で,天神講連歌会が当地域一帯の土豪,武士,僧侶らによって戦国末期まで催されていた。なお室生寺境内奥ノ院付近には暖地性シダ群落(天),向淵(むこうじ)にはスズラン群落(天)がある。室生寺を中心に村域の一部は室生赤目青山国定公園に含まれ,宇陀川沿いに近鉄大阪線と国道165号線が,南部を国道369号線が通じる。
執筆者:

宇陀 (うだ)

奈良県(大和国)の郡名。奈良盆地の南東に接し,ほとんどが山地。建国神話の舞台で,東は伊賀国に接し,西は桜井,南は吉野郡,北は山辺郡である。記紀によれば,神武天皇は熊野から八咫烏(やたがらす)に導かれて,菟田県(うだのあがた)に入ったという。ここには兄猾(えうかし),弟猾(おとうかし)の豪族がおり,兄猾は征され,弟猾は服したとされる。榛原町大字高塚小字八咫烏に八咫烏神社がある。また,国家的崇敬の対象たる聖地とされ,請雨の祭祀の地であった室生山(宇陀市の旧室生村大字室生)には8世紀に室生寺が建立された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宇陀」の意味・わかりやすい解説

宇陀
うだ

奈良県中東部。古代の宇陀郡は現在の宇陀市と宇陀郡の大部分を占め、「宇陀」は宇陀山地一帯をさすと考えられている。『古事記』神武(じんむ)天皇段に「其地より踏み穿(うか)ち越えて、宇陀に幸(い)でましき、故(かれ)、宇陀の穿(うかち)と曰(い)ふ」とあり、『万葉集』に「大和(やまと)の宇陀の真赤土(まはに)のさ丹(に)つかばそこもか人の我が言(こと)なさむ」とある。郡内には宇陀禁野(うだしめの)、肥伊(ひい)牧など皇室領の猟場があったといわれる。

[菊地一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android