ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安国寺利生塔」の意味・わかりやすい解説
安国寺利生塔
あんこくじりしょうとう
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南北朝時代に設定された寺院制度の一つ。1336年(延元1・建武3)の室町幕府開創後まもなく、元弘(げんこう)(1331~1334)以来の争乱による戦没者の弔霊と天下太平を祈願するため、将軍足利尊氏(あしかがたかうじ)と当時兄にかわって政務を代行していた直義(ただよし)の兄弟の発願により、全国に、国ごとに寺院1宇と塔婆1基を建立することが定められた。1345年(興国6・貞和1)2月には、幕府の要請によって、それらの各国の寺、塔に対してそれぞれ安国寺、利生塔と称することが勅許された。現在、安国寺は59か国において設定されたことが確認されるが、そのほとんどは既存の臨済(りんざい)宗五山(ござん)派の禅刹(ぜんさつ)を安国寺に指定したものである。一方、利生塔は66か国2島に計68基が設置されたことは確実で、それらの大半は真言(しんごん)、天台(てんだい)、律(りつ)などの旧仏教系寺院であり、形式は五重塔と三重塔で、仏舎利(ぶっしゃり)各2粒が奉納された。これらの寺塔は民心慰撫(いぶ)とともに、反幕勢力への監視・抑制という政治的役割を果たした。
[今谷 明]
『今枝愛真著『中世禅宗史の研究』(1970・東京大学出版会)』
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