(読み)ザイ

デジタル大辞泉 「財」の意味・読み・例文・類語

ざい【財】

財産。富。「巨額のを築く」「をなげうつ」「を成す」
経済学で、人間の欲望を満たし、人間が支配・処分することのできるもの。有り余るほどあって売買の対象とならないものを自由財、欲望に比して希少性をもち、その獲得になんらかの努力を必要とし、売買の対象となるものを経済財という。財貨。
「財界」「財界人」の略。「政官
[類語]資産財産恒産私財家財身代資財財貨貨財私産家産身上しんしょう

ざい【財】[漢字項目]

[音]ザイ(呉) サイ(漢) [訓]たから
学習漢字]5年
〈ザイ〉値うちのあるもの。有用な物質や金銭。たから。「財貨財源財産財政財宝家財散財私財借財浄財蓄財理財消費財
〈サイ〉たから。お金。「財布

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精選版 日本国語大辞典 「財」の意味・読み・例文・類語

ざい【財】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 人間の生活にとって貴重な物質、物品、あるいは金銭など。たから。財産。財物。財貨。
    1. [初出の実例]「禊日見物之車財百両許」(出典:権記‐長保三年(1001)四月二〇日)
    2. 「婬奔ならずとも、利慾にふかくして、財をうまんとするはいかにぞや」(出典:随筆・胆大小心録(1808)七一)
    3. [その他の文献]〔易経‐繋辞下〕
  3. 家にある道具類。家財。什器(じゅうき)
  4. 経済学で、人間の物質的、精神的欲望をみたすものをいう。自由財と経済財とに分かれるが、前者は空気や日光のようにそれを手に入れるために対価の支払いを必要としないもの、後者は商品のように対価の支払いを必要とするものをいう。〔国民百科新語辞典(1934)〕

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普及版 字通 「財」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

[字音] ザイ・サイ
[字訓] たから・わずかに

[説文解字]

[字形] 形声
声符は才(さい)。才に材質の意があり、貝貨を財という。〔説文〕六下に「人の寶とするなり」とは財宝の意。才・纔と通用し、「わずか」の意にも用いる。また、裁・材とも通用する。

[訓義]
1. たから。古くは貝を宝とし貨幣とした、ふち。
2. 裁と通じ、たつ、はかる。
3. 才と通じ、才能、はたらき。
4. 才・纔と通じ、わずかに、やっと。
5. 材と通じ、資材。

[古辞書の訓]
名義抄〕財 タカラ・ワヅカニ 〔立〕財 ハフリ・ワヅカニ・タカラ

[語系]
財・才・材dzは同声。材用の意において通用する。また裁・纔も声義に通じ、はじめて・わずかになどの意に通用する。

[熟語]
財委・財運・財貨・財気・財匱・財決・財源・財幸・財交財穀・財察・財産・財使・財資財齎・財取・財主・財食・財神財紳・財成・財制・財征・財政・財勢・財粟財択財蓄財帑・財帛・財費・財布・財富・財賦・財物・財幣・財宝・財本・財務・財雄・財用・財欲・財利財力・財礼・財鹵・財賂・財賄
[下接語]
委財・家財・貨財・割財・管財・寄財・匱財・器財・巨財・共財・軽財・公財・散財・私財・貲財・資財・齎財・借財・聚財・浄財・殖財・積財・節財・多財・地財・致財・蓄財・通財・同財・匿財・頒財・余財・用財・理財・悋財・臨財・斂財

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改訂新版 世界大百科事典 「財」の意味・わかりやすい解説

財 (ざい)
goods

一般に,人々が消費や生産という経済活動を行うさいに用いられるものをいう。英語のgoods and services(財貨・サービス)という表現からわかるように,たんに有形な物質的なものだけでなく,サービスという無形なものも含めて考えるのが普通であるが,マルクス経済学では物質的なものに限定して考えることが多い。

 経済学で財という言葉を用いるときには,経済財と自由財に分けられることがある。経済財というのは,人々が直接,間接に管理することができるようなもので,その供給が限定されていて,市場的交換の対象となるようなものをいう。これに対して自由財というのは,供給がつねに需要を上回っていて,市場的交換の対象となりえないようなものを指す。大気とか日光とかの自然財が自由財の例としてよく挙げられるが,現代においては経済活動の水準の高まりで,これらの自然財もまた希少なものとなり,自由財ではなくなりつつある。

 財の分類としてさらに,私的財と公共財とに分けられることもある。私的財は,個々の経済主体に分属され,その所有権が明確にされるような財である。通常の経済財は私的な財である。これに対して公共財は,政府または公共機関によって供給され,市場を通じてではなく,社会的な基準(公正とか安定という)にしたがって配分されるようなものである。公共財は自由財と混同されることがあるが,基本的に性格の異なるものである。

 財はまたその機能にしたがって,消費財と生産財とに分類されることがある。消費財は直接消費されるものである。生産財は生産過程に投入されて生産活動に用いられるものをすべて含むが,原材料動力などと区別して設備機械などを資本財と呼ぶこともある。消費財と生産財との分類は必ずしも排他的なものでなく,同じ財がときとしては消費財として,またときとしては生産財として用いられることも少なくない。消費財はさらに,生活の必要をみたすための必需財と,奢侈(しやし)的な性格をもつ奢侈財あるいは選択財とに分けられることもある。消費財のうち労働者の賃金によって主として需要されるものを賃金財と総称することもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「財」の意味・わかりやすい解説


ざい
goods

人間の欲望を充足するために必要な物質的な手段,あるいはサービスのこと。一般に,空気のように欲望に比して供給量が相対的に過剰な自由財と,欲望に対して供給量が相対的に過小な経済財に分類される。オーストリア学派の C.メンガーが強調したように,経済財と自由財の類別は財に固有なものではなく,そのときどきの供給量や人間の欲望の変化に伴って,元来自由財であった財が経済財になったり,あるいは逆に経済財であった財が自由財になったりする。また,市場経済に固有な商品の概念とは異なって,財は超歴史的な概念である点にも注意を払わなければならない。

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知恵蔵 「財」の解説

消費支出は、財(商品)とサービスへの支出に分けられる。財はさらに、耐久財、半耐久財、非耐久財と区分される。2005年家計調査によれば、2人以上の世帯では、消費支出に占めるサービスの割合が42.4%と最も高く、次いで非耐久財が41.4%、半耐久財が9.5%、耐久財が6.6%である。

(上村協子 東京家政学院大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「財」の意味・わかりやすい解説


ざい

財・サービス

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【貨物】より

…国際,国内を問わず輸送の対象となる物品を貨物goods,freight,cargoという。国際的にも国内的にも生産の分業化が進展するにつれて商品取引が拡大し,市場の地域的拡大も進む。…

【所有】より

…したがってそれは,第一義的には人と物の間の関係である。人間が経済活動を営む際には,生産を目的としたものであれ直接消費の目的であれ,外的物資に働きかけるが,この活動が現実に意味をもつためには,物資は主体にとって有用でかつ制御可能な財でなければならない。制御とは,(1)消費,生産といった財の変換,(2)交換のような財の入手・処分,の二つの意味をもつ。…

※「財」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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