日本大百科全書(ニッポニカ) 「富来」の意味・わかりやすい解説
富来
とぎ
石川県能登(のと)半島中央部、羽咋郡(はくいぐん)にあった旧町名(富来町(まち))。現在は羽咋郡志賀(しか)町北部を占める地域。日本海に臨む。旧富来町は1919年(大正8)町制施行。1954年(昭和29)福浦(ふくら)、熊野、稗造(ひえづくり)、東増穂(ひがしますほ)、西増穂、西海(さいかい)、西浦(にしうら)の7村と合併。2005年(平成17)羽咋郡志賀町に合併。国道249号が通じる。旧町域は丘陵地が多く、富来川などの下流域に小沖積平野がある。農業は米作のほか砂丘地ではタバコやカボチャを栽培する。富来港、福浦港を中心とする沿岸漁業も盛んである。福浦港は8~9世紀に大陸の渤海(ぼっかい)の使者を送迎した港で、明治まで船舶の寄港地としてにぎわった。漁民のなかには船員として出稼ぎに行く者も多い。海岸一帯は能登半島国定公園域で、とくに能登金剛(こんごう)と称する地域は、巌門(がんもん)、関野鼻(せきのはな)、ヤセの断崖など奇岩・怪石の男性的海岸美に富み、外浦(そとうら)の代表的観光地である。特産に歌仙貝細工がある。松尾神社本殿は国の重要文化財に指定されている。
[矢ヶ崎孝雄]
『『富来町史』全3巻(1974~1977・富来町)』