寒中(1月初めの寒の入りから節分までの期間)に、川や海で一定の形式のもと、平泳ぎの距離泳ぎを行ったり、抜手(ぬきて)などの日本泳法や、道具を用いて曲泳などを行う、主として心身の鍛練と水泳技術を示す目的の行事。発祥はさだかでないが、形式を整えての寒中水泳はごく近代のことで、一般に水泳が盛んになった明治末期から、関東地方や関西地方を中心に行われたのが初めといわれている。近年、河川の汚染で、多くは海で行われている。
この行事には、身体機能に異常のない健康で泳力のある者ならだれでも参加できるが、主催者はもちろん泳者も事故防止対策を十分行わなければならない。なお、泳者は、前年から寒冷に対する抵抗力を養うよう心がけ、実行にあたっては、準備運動を十分に行いつつ肌を気温に慣らし、気力を充実させてゆく必要がある。入水するときは、身体を徐々に浸し冷水に慣らしつつ、静かに泳ぎ出す。泳ぐ時間は、その日の水温によるが、最長でも10分が目安となる。水泳後は、ただちに身体の水をぬぐい、たき火その他で暖をとり、温かい飲食物(たとえばくず湯、汁粉など)によって内外から体温の回復を図り、さらに入浴をすれば、心身の平静を取り戻すことができる。
[堀内幸雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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