寛平御遺誡(読み)かんぴょうのごゆいかい

精選版 日本国語大辞典 「寛平御遺誡」の意味・読み・例文・類語

かんぴょうのごゆいかい クヮンピャウ‥【寛平御遺誡】

平安前期の教訓書。寛平九年(八九七宇多天皇譲位の際、醍醐天皇に贈ったもの。一巻。公事儀式、任官叙位、臣下賢否動作学問など天皇の心得を説く。

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デジタル大辞泉 「寛平御遺誡」の意味・読み・例文・類語

かんぴょうのごゆいかい〔クワンピヤウのゴユイカイ〕【寛平御遺誡】

寛平9年(897)宇多天皇が譲位の際、幼少醍醐天皇に与えた教訓書。1巻。公事儀式・任官叙位のあり方、天皇の日常作法などを説く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「寛平御遺誡」の意味・わかりやすい解説

寛平御遺誡
かんぴょうのごゆいかい

897年(寛平9)、宇多(うだ)天皇が13歳の第1皇子敦仁(あつひと)親王(醍醐(だいご)天皇)への譲位に際し、同親王に贈った天皇の心得を述べた漢文体の訓誡書。1巻。内外の政務、日常の動作、学問の態度などを、桓武(かんむ)天皇の逸話を引用して懇切に示し、人物の登用については、藤原時平(ときひら)、菅原道真(すがわらのみちざね)、平季長(すえなが)、紀長谷雄(きのはせお)らの名をあげて積極的意見を述べ、なかでも道真を信任すべきことを記す。また『群書治要』(唐、魏徴(ぎちょう)撰(せん))を帝王学の必読書としていることは注目される。古くから、帝王必見の書、摂政(せっしょう)関白・蔵人(くろうど)の座右の書とされた。完本はなく、『群書類従』『列聖全集』などに逸文が集録されている。

[林 幹彌]

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改訂新版 世界大百科事典 「寛平御遺誡」の意味・わかりやすい解説

寛平御遺誡 (かんぴょうのごゆいかい)

897年(寛平9)宇多天皇が醍醐天皇に位を譲るにあたって,当時13歳の幼少の天皇のために書き贈った帝王学の教本。叙位・任官などの朝廷の政務儀式,天皇の動作や学問のことなど,天皇としての心得を細かく記している。鎌倉時代の図書目録《本朝書籍(しよじやく)目録》に〈寛平遺誡一巻〉と見える。現在伝わるのは残欠本であるが,儀式書その他に多くの逸文が引かれており,本書が年中行事の規範としても重視されていたことがうかがわれる。鎌倉時代の古写本(田中穣氏所蔵)1巻が現存する。《群書類従》《列聖全集》などに所収。
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百科事典マイペディア 「寛平御遺誡」の意味・わかりやすい解説

寛平御遺誡【かんぴょうのごゆいかい】

897年(寛平9年)宇多(うだ)天皇が当時13歳の皇太子敦仁(あつひと)親王(のちの醍醐(だいご)天皇)に書き贈った帝王学の教本。天皇の日常の心得や作法,朝廷の政務儀式や年中行事などを詳細に記している。古来,天皇の金科玉条として尊重されてきたが,当時の事態を背景に記されていることから,天皇・朝廷などの実態を知ることができる好史料。現在伝わっているのは逸文(いつぶん)を収録したもの。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寛平御遺誡」の意味・わかりやすい解説

寛平御遺誡
かんぴょうのごゆいかい

寛平9 (897) 年,宇多天皇が幼い醍醐天皇に位を譲る際に与えた教訓。1巻。漢文体。『誡訓』『御誡』などとも称された。天皇としてのふるまい,動作,学問,任官叙位,朝廷の儀式,慣習や臣下の良否などについて注意しなければならない事柄を記す。摂政,関白をはじめ,貴族にとっても貴重な教養書であった。今日,完全な形で伝わらないが,古書には多く引用されており,尊重された様子がわかる。『群書類従』所収。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「寛平御遺誡」の解説

寛平御遺誡
かんぴょうのごゆいかい

897年(寛平9)宇多天皇が譲位に際して,13歳の醍醐天皇に与えた訓戒書。天皇としての日常の振舞いや学問,公事儀式や任官叙位などの政務上の注意事項から,藤原時平・菅原道真ら諸臣の人物論に及ぶ。「聖明の遺訓,鑒誡(かんかい)と為すに足れり」(「花園天皇宸記」)と評価され,長く帝王必読の書として重んじられた。「源氏物語」「禁秘抄」などの諸書に引用され,「大槐秘抄」「花園天皇誡太子書」など多くの訓戒書の先例となった。完本としては現存しない。「群書類従」「日本思想大系」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「寛平御遺誡」の解説

寛平御遺誡
かんぴょうのごゆいかい

897(寛平9)年,宇多天皇が幼少の醍醐 (だいご) 天皇に譲位するときに与えた訓誡
天皇としての心得・学問,政務上の注意事項や藤原時平・菅原道真ら臣下への評などからなる。以来天皇の金科玉条とされた。一部散逸する。

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