六訂版 家庭医学大全科 「小児のアトピー性皮膚炎」の解説
小児のアトピー性皮膚炎
しょうにのアトピーせいひふえん
Atopic dermatitis in children
(皮膚の病気)
どんな病気か
乾燥肌による敏感肌にアトピー素因が重なって発症する慢性の皮膚炎ですが、乳幼児は皮膚が薄く皮脂も少ないためとくに皮膚が敏感で、乳児期には食物アレルギーが関係することもあります。乳児では症状が2カ月以上、幼児期以降では6カ月以上続く時に本症と診断します。国内の小児の2割近くにアトピー性皮膚炎がみられ、決してめずらしいものではありません。
また成長とともに症状が軽くなっていくことが多いのも特徴です。患児には
原因は何か
乾燥肌に対する刺激として、乳児期ではよだれや食べこぼし、涙、衣服などとの
また、とくに乳児期には、卵白や牛乳などの食物に対するアレルギーのためにかゆみや
症状の現れ方
乳児では生後2カ月目ごろから、頬や口のまわり、頭部などにかさぶたのついたじくじくした皮膚炎がみられ、次第に首から前胸部、
幼児期から学童期にかけては首、
検査と診断
乳児期には、卵白や牛乳など食物中の蛋白に対するアレルギーが皮膚炎の悪化に関係していることがあります。とくに、病変の範囲が広く全身に紅斑がみられる場合には、血液検査などで食物アレルギーの有無を調べ、医師と相談しながら食べ物の除去や解除を行うようにします。根拠なしに自己判断で食べ物を制限するのはよくありません。
頭部に分厚いかさぶたがついた乳児脂漏性(しろうせい)皮膚炎や顔を中心に小さな
治療の方法
白色ワセリンやヘパリン類似物質外用薬(ヒルドイドソフト)などの保湿剤を入浴後に塗り、皮膚炎にはステロイド薬を塗ります。子どもは皮膚が薄いので、比較的弱いランクのステロイド薬でも効果を発揮します。また2歳以上の小児には、免疫調整薬タクロリムス(プロトピック)を使用することもあります。
皮膚炎が軽くなっている時でも保湿剤の外用は続けて、調子のよい状態を保つようにします。かくのが止まらない時には、患部にステロイド薬を塗ったあとに
食物アレルギーが皮膚炎の悪化に関係していることが明らかな場合には、食物制限を行う、クロモグリク酸ナトリウム(インタール)を食前に服用するなど、医師と相談しながら対策を立てます。
病気に気づいたらどうする
子どものアトピー性皮膚炎は、成長して皮脂が増えるとともに次第に軽くなっていくことが多く、かゆい皮膚炎が一生続くことはありません。皮膚炎が悪化する理由を医師と相談しながら見つけていき、できることから対策を実行すること、スキンケアや薬を使った治療も上手に組み合わせながら、早めに皮膚炎を軽くしていくことが大切です。
加藤 則人
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報