小田原(市)(読み)おだわら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「小田原(市)」の意味・わかりやすい解説

小田原(市)
おだわら

神奈川県の南西部にある市。1940年(昭和15)小田原足柄(あしがら)町の2町と、早川、大窪(おおくぼ)、酒匂(さかわ)(一部)の3村が合併して市制施行。1948年(昭和23)下府中(しもふなか)村、1950年桜井村、1954年豊川(とよかわ)、上府中、下曽我(しもそが)、片浦の4村、酒匂、国府津(こうづ)の2町、1971年橘(たちばな)町を編入。2000年(平成12)特例市に移行(2015年施行時特例市に名称変更)。JR東海道・山陽新幹線、東海道本線、御殿場(ごてんば)線をはじめ、小田急電鉄小田原線、伊豆箱根鉄道大雄山線(いずはこねてつどうだいゆうざんせん)、箱根登山鉄道の諸線が、また国道1号、135号、255号の各線、小田原厚木(あつぎ)道路(国道271号)、西湘(せいしょう)バイパス、箱根新道、箱根ターンパイク真鶴(まなづる)道路などが通じる。市域は、箱根外輪山の東斜面と、大磯(おおいそ)丘陵西部の両山地と、おもに酒匂川がつくった足柄平野、早川の河口部平地からなる。気候は温暖、冬暖夏冷で、湘南(しょうなん)保養地域の西端をなす。面積113.60平方キロメートル、人口18万8856(2020)。

[浅香幸雄]

沿革

鎌倉時代に土肥(どい)氏が、戦国時代に大森氏が、小田原を拠点としたのに伴って開け始めた。1495年(明応4)北条早雲(そううん)が一挙に小田原城を攻め取ってからのちは、後北条氏(ごほうじょううじ)の関東進出の本拠地となった。以後、5代約100年にわたって関東、東海の政治、軍事の中心地となり、大規模な城下町は箱根外輪山斜面と酒匂川、早川の低地にわたる長大な総曲輪(そうくるわ)の土塁で囲まれた囲郭(いかく)都市をなしていた。1590年(天正18)豊臣秀吉(とよとみひでよし)の小田原攻めによって後北条氏は滅亡。江戸時代は小田原城の城下町(小田原藩)で、東海道の宿場町を兼ね、箱根山を控える要所としてにぎわっていた。小田原名産のかまぼこ梅干しは、東海道通行者の携行品づくりに始まるとされる。近年は箱根観光の玄関口の役割を強めている。現在小田原は、神奈川県西部の行政、商業の中心地で、小田原地区広域市町村圏の中心都市であり、工業も栄え、農業、水産業も盛んである。箱根産の木材の加工に始まる箱根寄木細工や家具づくりの在来工業は、いまは玩具(がんぐ)、和洋家具の近代工業に発展している。小田原漆器は国の伝統的工芸品に指定されている。また足柄平野の扇状地末端の湧水(ゆうすい)を利用するフィルム・各種記録メディア製造や繊維、印刷、ゴム製品などの近代工業も盛んである。箱根外輪山ではミカン栽培が広まり、相模(さがみ)湾岸はブリその他の定置網漁業で知られ、小田原漁港(早川港)は沿岸漁業の根拠地となっている。アジなどの干物づくりも盛ん。近年はまた京浜通勤者向けの住宅地開発も盛んで、工業と住宅の京浜の衛星都市的機能が強められている。

[浅香幸雄]

観光・文化

東西の山地はミカン園や二次林のスギ、スダジイ林で覆われるほか、ウメ、サクラ、フジなどの花木が多く、史跡も豊富で、観光地に恵まれている。おもな観光地としては、小田原城跡(国指定史跡)、報徳二宮神社(ほうとくにのみやじんじゃ)、石垣山(国指定史跡)、石橋山古戦場、飯泉(いいずみ)観音勝福(しょうふく)寺、二宮尊徳遺跡、曽我の梅林、宝金剛(ほうこんごう)寺、量覚(りょうがく)院など。そのほか、小田原市郷土文化館、生命の星・地球博物館、報徳博物館、動物園、フラワーガーデンなどの文化施設がある。民俗芸能の行事には、下中座(小竹(おだけ))の相模人形芝居(国指定無形民俗文化財)、片浦地方の福踊、米神(こめかみ)、江之浦(えのうら)、根府川(ねぶかわ)の鹿島(かしま)踊、板橋や中里(なかざと)の火祭、下曽我の傘焼(かさやき)まつり(宗我(そが)神社、城前(じょうぜん)寺)、小田原囃子(ばやし)(扇町(おうぎちょう)白山神社)などがある。また、5月3日には観光祭の「北条五代祭り」が盛大に行われる。

[浅香幸雄]

『『小田原市史料 歴史編・現代編』(1966・小田原市)』『『郷土読本 小田原』(1971・小田原教育研究所)』『中野敬次郎著『復刻版 小田原近代百年史』(1982・八木堂書店)』『福田以久生・内田哲夫著『わが町の歴史・小田原』(1985・文一総合出版)』『『小田原市史』全15巻(1991~2003・小田原市)』


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