小舎人(読み)コドネリ

デジタル大辞泉 「小舎人」の意味・読み・例文・類語

こ‐どねり【小舎人】

平安時代蔵人所くろうどどころに属して殿上てんじょう雑事に使われた者。殿上わらわ
中世幕府侍所さむらいどころに属して、雑用をした者。
小舎人童こどねりわらわ」に同じ。
大将、上に使ひ給ふ童、御供に―にてありしを召して」〈宇津保・蔵開中〉

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精選版 日本国語大辞典 「小舎人」の意味・読み・例文・類語

こ‐どねり【小舎人】

〘名〙 (「こ」は接頭語。古くは「ことねり」か)
① 平安時代、蔵人所に属して殿上の雑事に使われた者。殿上の童(わらわ)。御倉(みくら)の小舎人。
※日本紀略‐天慶五年(942)四月一八日「小舎人藤原斉敏加冠参入」
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「蔵人所のことねり来り」
※神楽歌(9C後)大前張「〈本〉大宮の 少さ古止禰利(コトネリ) や 手手にやは 手手にやは 玉ならば 手手にや」
③ 中世、幕府の侍所の下級職員。雑用をつとめ、罪囚、獄舎の事をつかさどった。
近衛家本追加‐延応二年(1240)三月一八日「侍所雑仕、小舎人、朝夕雑色、中間」
[語誌](1)①は納殿の御物を出納する役であるところから、御倉の小舎人とも称された。常は校書殿に詰めており、定員は初め六名であったが、平安末期には一二名に増加している。
(2)②は親王家や摂関家以下の雑用係であり、蔵人所とは無縁である。また、近衛の中将少将などが召し使った元服前の童子もいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「小舎人」の意味・わかりやすい解説

小舎人 (こどねり)

(1)蔵人所(くろうどどころ)の下級職員。御倉小舎人と称す。殿上からの召を受けて,殿中の公用に就事することを職掌とした。その詰所は校書殿にあった。定員は6名であったが,平安末期には12名となった。また,このほかに定外の小舎人も置かれた。鎌倉時代に成立した《禁秘抄》には,六位蔵人が公事を欠怠するために,出納,小舎人がもっぱら事に当たるようになったと記されており,中世においては出納とともに蔵人所運営の重要な担い手となった。また,蔵人所から発遣される諸使にあてられることも多く,蔵人所の発給する牒にも,使として小舎人の名が載せられるのが例であった。彼らの補任には勅許を必要とせず,蔵人頭以下が殿上で議定することとなっていた。また,官人としては史生(ししよう)に任命されるのが一般的であったが,彼ら自身は衛門志(えもんのさかん)に任命されることを競望したという。鎌倉時代以降,その家柄も固定していったらしく,紀氏の一族で後に山科・真継等を称する人々が世襲的に任命されるようになった。(2)平安時代以降,公卿の子息で元服前の者を童形のままで昇殿させ,殿上に候せしめたもの。殿上小舎人または童殿上と称した。943年(天慶6)4月,小舎人藤原斉敏(大納言藤原実頼の子)が加冠して御前に召されたという記事が《日本紀略》にあり,この前後より史料上に姿をあらわす。(3)公家・武家を問わず,貴人の身辺に侍し雑用をつとめた少年。〈小舎人童〉ともいう。平安時代に,主として近衛中将や少将が召し使い,牛車の前に立たせたりする例がよく知られている。《禁秘抄》には〈随身,雑色等之児也〉と記されている。(4)鎌倉幕府および室町幕府の侍所(さむらいどころ)の下級職員。雑色や下部らとともに侍所の雑用をつとめ,罪人の召出しや獄舎の事等決罰関係の末端部の職務を分掌し,時には警衛にもあたった。
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世界大百科事典(旧版)内の小舎人の言及

【真継家】より

…戦国時代から江戸時代を通じて,蔵人所(くろうどどころ)小舎人(こどねり)=御蔵職(おくらしき)を世襲した地下(じげ)の官人。室町時代以前の出自,系譜は不明(《地下家伝》の系譜は江戸時代の偽作)。…

※「小舎人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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