山の芋(読み)ヤマノイモ

デジタル大辞泉 「山の芋」の意味・読み・例文・類語

やま‐の‐いも【山の芋/薯蕷】

ヤマノイモ科蔓性つるせい多年草山野自生。芋は円柱形でナガイモより細く、長さ1メートルにもなる。葉は先がとがり、基部が心臓形で、対生する。雌雄異株。夏、葉の付け根に花をつけ、雄花穂は直立し、雌花穂は垂れ下がる。実は3枚の翼をもつ。葉のわきにむかごができ、地面に落ちて増える。芋は粘りが強く、とろろや芋がゆにし、漢方では山薬さんやく薯蕷しょよといい滋養強壮薬とする。ヤマノイモ科の単子葉植物熱帯から暖帯にかけ600種が分布し、ナガイモトコロなども含まれる。じねんじょ。じねんじょう。やまいも 秋》
[類語]里芋八頭薩摩芋甘藷ジャガ芋馬鈴薯山芋長芋自然薯親芋種芋

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「山の芋」の意味・読み・例文・類語

やま‐の‐いも【山芋・薯蕷】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ヤマノイモ科のつる性多年草。日本特産で、本州・四国・九州の山野に生える。茎は他物に左巻きにからむ。塊根は長円柱形で長さ一~二メートル。葉は長柄をもち対生し、葉身は長卵形で基部は切れ込む。葉腋にむかごを生じる。雌雄異株。夏、淡黄緑色の単性花を穂状につける。果実には三個の翼があり房状に群がってつく。塊根とむかごを食用にする。中国原産で栽培されるナガイモに対し、ヤマノイモ、ジネンジョと呼ばれる。漢名薯蕷を用いるが、正しくはナガイモの名。じねんじょう。やまいも。やまついも。《 季語・秋 》 〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. [初出の実例]「山のいもをふかく堀入て、穴におちいりて、えあがらずして死たるなめり」(出典:古今著聞集(1254)二〇)
  3. ヤマノイモの塊根を民間薬としたもの。根を下ろし、腫物(はれもの)霜焼けの治療に用いる。また、漢方でも「山薬(さんやく)」「薯蕷(しょよ)」の名で古くから用いられた。
  4. ( 山の手に住んでいたところから、「山」に掛けていう ) 侍をののしっていう。
    1. [初出の実例]「なんだ、山のいもめらばかりがだいじか」(出典:洒落本・突当富魂短(1781))

山の芋の語誌

( 1 )ナガイモの漢名には「薯蕷」の他に「山薬」があるが、ナガイモを「家山薬」と呼ぶのに対して、ヤマノイモを「野山薬」と呼ぶこともある。
( 2 )古くはヤマツイモと呼ばれていたが、この名称はイエツイモ(サトイモ)に対する呼称である。
( 3 )ジネンジョウ・ジネンジョは近世になって見られる。
( 4 )ヤマノイモが鰻に化けるという俗説は近世まで広く信じられていた。

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