宮城県南部の市。1971年(昭和46)市制施行。西端に丘陵があるが、東の太平洋まで沖積平野が広がり、南境には阿武隈(あぶくま)川が流れる。JR東北本線と常磐線(じょうばんせん)の分岐点にあたり、国道4号、6号や仙台東部道路(常磐自動車道に直結。岩沼インターチェンジがある)も通じる交通の要地である。北東部、名取(なとり)市にまたがって仙台空港がある。2007年(平成19)に仙台空港とJR仙台駅を結ぶ仙台空港アクセス鉄道が開通した。古代には多賀城(たがじょう)以前の陸奥(むつ)国府が置かれたとの説もあるが、確証はない。日本三稲荷(いなり)の一つとされる竹駒神社(たけこまじんじゃ)は少なくとも室町時代末には存在し、門前に集落があったと考えられている。近世にも農業、飼馬、養蚕の神として庶民の信仰を集めていた。江戸時代には仙台藩の支城(要害)の城下町として、また奥州街道の宿駅として繁栄した。一時期、岩沼藩田村氏3万石の城下町であったが、1687年(貞享4)以後は古内氏が居住した。現在は仙台市のベッドタウンであり、仙台空港近くに臨空工業団地が造成されるなど、工場の進出もみられ、都市近郊農業も盛んである。中期前方後円墳のかめ塚古墳は県指定史跡。牡丹(ぼたん)園のある金蛇水(かなへびすい)神社がある。面積60.45平方キロメートル、人口4万4068(2020)。
[後藤雄二]
〔東日本大震災〕2011年の東日本大震災では死者186人・行方不明1人、住家全壊736棟・半壊1606棟を数えた(消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第159報)」平成31年3月8日)。2019年(令和1)5月時点で、市は津波の力を減衰させ避難場所にもなる「千年希望の丘」の整備などの復興事業に取り組んでいる。
[編集部 2019年10月18日]
『『岩沼市史』(1984・岩沼市)』
宮城県南部にある市。1971年市制。人口4万4187(2010)。阿武隈川下流北岸に位置する。早くから集落がひらけ,武隈(たけくま)の里と呼ばれ,一時陸奥の国府が置かれたこともあり,市の西部には古代の東(あずま)街道が通じていた。近世には陸羽街道と陸前浜街道の分岐点の宿場町であり,現在も国道(4号と6号)およびJR(東北本線と常磐線)の分岐点で,また北に接する名取市にまたがって仙台空港があり,交通の要地である。以前は仙台平野南部の水田地帯に位置する商業町であったが,1969年新産業都市への編入を機会にパルプ・ゴム製品の大工場や各種中小工場が進出して工業都市の性格を強めている。仙台から20kmの近距離に位置し仙台への通勤・通学者も多い。日本三稲荷の一つといわれる竹駒神社や,千貫神社,金蛇神社,長谷寺,東安寺など史跡に富む。
執筆者:長谷川 典夫
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