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平和的生存権 ヘイワテキセイゾンケン

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デジタル大辞泉の解説

へいわてき‐せいぞんけん【平和的生存権】

平和のうちに生きる権利。日本国憲法に示されている基本的人権の一つで、前文の「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」などを根拠とする考え方。戦争や武力行使など憲法9条に反する国家行為によって個人の生命や自由が侵害された場合に具体的権利性が認められる。
[補説]平成元年(1989)の最高裁判決は、「平和的生存権をいうものの意味内容は明確ではなく、それが具体的請求権として、あるいは訴訟における違法性の判断基準として、裁判において直接に国の私法上の行為を規律する性質をもつものではない」としているが、名古屋高裁は平成20年(2008)の自衛隊イラク派遣差し止め訴訟控訴審判決で、「局面に応じて自由権的、社会権的または参政権的な態様をもって表れる複合的な権利ということができ、裁判所に対してその保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求し得る」として、裁判規範性を有するとの見解を示している。

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世界大百科事典 第2版の解説

へいわてきせいぞんけん【平和的生存権】

平和が確保されていることが,すべての人権が保障される前提条件であるとの認識のもとで,人々が平和のうちに生存する権利を独自の人権として把握したとき,これを平和的生存権と呼ぶ。日本国憲法の前文に,〈われらは,全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する〉とあることに着目して唱えられている〈新しい人権〉の一つであるが,理念的な権利としてはともかく,裁判で主張できる具体的権利としてはこの概念を認めない学説も有力である。

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大辞林 第三版の解説

へいわてきせいぞんけん【平和的生存権】

恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生きる権利。日本国憲法前文第二項を根拠に主張されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

平和的生存権
へいわてきせいぞんけん

人間の生存にとって平和の確保が絶対に必要であるとして唱えられるようになった新しい人権思想。自由権、参政権、社会(生存)権のように憲法上の明文の規定はないが、第二次世界大戦後、日本国憲法をはじめとして、フランス第四共和国憲法やイタリア共和国憲法などに平和主義が掲げられるなかで注目されるようになった。
 平和的生存権の思想源流は、ホッブズの政治思想にまでさかのぼることができる。彼は、人間にとってもっとも重要なことは生命の保存(自己保存)にある、と述べ、人間が政府や法律をもたない自然状態においては人間は自分の生命を守る自然権をもっている、という。しかし、自然状態では生命の危険にさらされる状況が絶えず発生し、そのため自然権を行使すると「万人の万人に対する闘争状態」になるから、人間は自然権を行使することをやめて、契約を結んで共通権力を設け、代表者(主権者)を選んで、それが制定する法律に従って平和に生きよ、と述べている。自然権の行使をやめるということは、各人に武器を捨てよといっていることに等しく、近代国家において各人が丸腰でありながら安全であるのは、各人が武装放棄し、共通の法律の下で生きるようになったためである。これを国際社会のレベルで考えれば、完全軍縮にまで行き着くであろう。日本国憲法では前文において、「われらは……平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と述べ、第9条において「戦争の放棄」をうたっているが、その後の米ソの対立激化という国際情勢の変化によって自衛隊が創設されたため、平和的生存権は理念としては認めても、裁判所において主張できる具体的な権利として認める考え方は少ない。平和的生存権を認めた裁判例としては、自衛隊の存在は合憲か違憲かをめぐる違憲訴訟を取り扱った札幌地裁の長沼ナイキ訴訟第一審判決(1967)がある。そこでは自衛隊の存在は違憲であるとし、平和的生存権については憲法前文を根拠にそれを認め、その具体的内容は第3章の各人権条項に規定されている、と述べている。しかし、第二審の札幌高裁判決(1973)では、自衛隊の合憲・違憲をめぐる問題は「統治行為論」によって憲法判断を回避し、また平和的生存権については理念としては認めつつも、裁判所での判断の基準となるルール(裁判規範)がないとして、それに触れることを避けている。[田中 浩]

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世界大百科事典内の平和的生存権の言及

【戦争の放棄】より

…国の交戦権は,これを認めない〉と定めている。これら二つの項から成る9条は,憲法前文の恒久平和主義を具体化するものと考えられ,とりわけ前文の定める〈平和のうちに生存する権利〉(平和的生存権)を保障するための制度という意義をもっているといえよう。平和的生存権の保障は,平和を国家の政策としてではなく基本的人権の一部としてとらえた点で画期的なものであり,これは,第2次大戦が国家総力戦として戦われ,国民の精神的・物質的生活を根こそぎ動員して大量の生命と人権の破壊をもたらしたこと,とりわけ日本では広島,長崎の2度にわたる原爆の被爆体験を通じて,核時代の戦争がもはや国家の政策の問題として処理されるべきではない人類の生存にかかわる問題となり,平和が普遍的な人権価値となるに至った歴史的事情を反映しているのである。…

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