年末に立つ市で,年神祭の用具や正月用の飾物,雑貨,衣類,海産物の類を売るのを目的としている。かつて毎月の定期市のうち,その年最後の市を正月用品販売にあてる場合が多かったので,暮市,節季市,ツメ市などともいわれる。年の市には神秘的な意味が認められていたらしく,青森県三戸地方のツメマチには親に似た人が出るという伝承があり,長野県北安曇郡や上水内郡などの暮市には山姥(やまうば)が現れるといわれていた。年の市は,商店の発達した現在でも,年末になると毎年一定の日に,人家の密集した地の社寺の境内や路傍など決まった場所に設けられることが多く,周辺の集落の人々にとってこの日の買物は一種の年中行事化したものとなっている。なお正月用の年の市と同様,盆には盆市があり,ともに1年を二分する節季に結びついた重要な市である。
執筆者:田中 宣一
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年末に正月用品を買い整えることを主目的として開かれる市。歳の市とも書く。毎月定期的に行われる市のうち年末のものをいう。昔はハレ(晴)とケ(褻=日常)との格差が大きく、正月を迎える気持ちも新鮮であったから、秋の農作物の売上げ代金を持って行って市で買い物をした。正月用品のうち自給の困難なもの、日常よりは高級な食べ物や衣類、かねて買いたいと思っていた品物などである。都市に商業が発達し分業態勢が整うと分業化が始まる。社寺の境内で開かれる羽子板(はごいた)市、門松を売る松市、注連(しめ)飾りのガサ市などがある。東京世田谷(せたがや)のぼろ市では雑多な物を売る。東京では深川八幡(はちまん)宮(12月14、15日)、浅草観音(かんのん)羽子板市(17~19日)、麹町(こうじまち)の平河天神(25、26日)、近在では埼玉県さいたま市大宮区の氷川(ひかわ)神社、鎌倉の長谷(はせ)観音の市が著名。大晦日(おおみそか)の市を捨市(すていち)といい、捨て値で売ったが、いまもその傾向は残っている。
[井之口章次]
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…東京都台東区東部,隅田川西岸にある地名。江戸時代より浅草(せんそう)寺の門前町として栄え,明治以降も繁華街として発展した。1878年東京市15区制によって寺を中心とする南北に長い地区が浅草区となり,1947年に下谷区と合併して台東区の一部となった。1873年浅草寺域は浅草公園に指定され,のち園地は一区観音堂,二区仲見世,三区伝法院,四区木馬館一帯,五区花屋敷一帯,六区興行街の6区画に整備された。そのうち六区の興行街は1903年に日本最初の常設映画館〈電気館〉ができて東京の大衆娯楽の代表地となり,浅草公園の代名詞ともなった。…
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