広東住血線虫症(読み)カントンジュウケツセンチュウショウ

デジタル大辞泉 「広東住血線虫症」の意味・読み・例文・類語

カントン‐じゅうけつせんちゅう‐しょう〔‐ヂユウケツセンチユウシヤウ〕【広東住血線虫症】

広東住血線虫寄生による人獣共通感染症。人には幼虫が寄生し、脊髄からに侵入して好酸球性髄膜脳炎を起こす。幼虫が寄生するナメクジアフリカマイマイテナガエビなどを直接あるいは野菜などとともに摂取することにより経口感染する。約2週間の潜伏期を経て、激しい頭痛・発熱嘔吐知覚異常・昏睡などの症状が起こる。2~4週間で自然に治癒することが多いが、感染虫数が多く重篤な場合は死亡することもある。

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内科学 第10版 「広東住血線虫症」の解説

広東住血線虫症(線虫症)

 広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)は広東のネズミから発見された線虫である.成虫は20~34 mm大である.幼虫はネズミ内で一度脳に集まり,その後肺動脈に至る.幼虫が非固有宿主であるヒトに感染すると,多くは脳内で発育が停止し,脳実質・くも膜下・脊髄に寄生し,好酸球性髄膜炎(eosinophilic meningitis)を発症する.虫体を確認することによる診断は難しく,臨床診断が基本である.幼虫はやがて脳内で死滅するため,治療の中心はプレドニゾロンなどの対症療法である.感染予防のためには,流行地で中間宿主(ナメクジ)や待機宿主ヒキガエル肝臓)を生食しないことである.アフリカマイマイは大型陸棲貝であり食用とされるが,1個の貝内に9万個の感染幼虫が寄生していたとの報告がある.台湾,東南アジア,南太平洋諸島に分布し,沖縄でも症例が報告されている.[立川夏夫]
■文献
Farid Z, Patwardhan VN, et al: Parasitism and anemia. Am J Clin Nutr, 22: 498-503, 1969.
Stolk WA, de Vlas SJ, et al: Anti-Wolbachia treatment for lymphatic filariasis. Lancet, 365: 2067, 2005.

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家庭医学館 「広東住血線虫症」の解説

かんとんじゅうけつせんちゅうしょう【広東住血線虫症 Angiostrongyliosis】

[どんな病気か]
 ネズミに寄生する広東住血線虫が人に感染しておこる病気です。全国の港湾地域のネズミから成虫が見つかっています。カタツムリやナメクジが中間宿主のため、調理不十分のカタツムリや野菜に混入したナメクジを誤って食べ、その幼虫を摂取することで感染します。
[症状]
 頭痛、嘔吐(おうと)、めまいにはじまり、好酸球性髄膜脳炎(こうさんきゅうせいずいまくのうえん)をおこします。寄生数が多いときには、死亡することもあります。
[検査と診断]
 髄液(ずいえき)をとって虫体が検出されれば診断がつきます。実際には検出がむずかしいため、血清反応(けっせいはんのう)の結果で診断されます。
[治療]
 チアベンダゾールが効くこともありますが、あまり期待できません。副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンが点滴されたり、髄液をとって脳圧を下げる方法も行なわれます。
[予防]
 生(なま)や加熱不十分なカタツムリを食べないこと、生野菜を食べるときは十分に流水で洗うことです。

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栄養・生化学辞典 「広東住血線虫症」の解説

広東住血線虫症

 小型の線虫で,感染すると好酸球髄膜炎を起こす.ネズミなどが宿主となる.

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