精選版 日本国語大辞典 「当前」の意味・読み・例文・類語
あたり‐まえ‥まへ【当前】
- 〘 名詞 〙
- ① 共同労働の収穫を分配するとき、一人あたりの受けるべき配当。一人前の分量。漁獲物などを現物で配分する時、人数分に分けた一山。
- ② ( 形動 ) ( ①を受け取ることは当然の権利であるところから ) 道理から考えて、そうあるべきこと。また、そのさま。当然。
- ③ ( 形動 ) ごく普通のこと。ありふれているさま。
- [初出の実例]「静の字、尋動静とわかつあたりまへの静にはあらず、妄に動ぬを静と云たもの也」(出典:大学垂加先生講義(1679))
- 「なにサ、裸はでんぼうの当り前(メエ)、土仕事にでもかかりゃア、寒の中(うち)でも真っ裸」(出典:歌舞伎・心謎解色糸(1810)大切)
当前の語誌
②の意味については、①の意味から転じたという説の他に、漢語「当然」に「当前」という表記をし、さらにそれを訓読みしたものから出たという説がある。類例に、漢語「同然」が「同前」と表記されるということがある。