日本大百科全書(ニッポニカ) 「御前崎(岬)」の意味・わかりやすい解説
御前崎(岬)
おまえざき
静岡県御前崎市にある岬。岬端(こうたん)は県の最南端にあたり、駿河(するが)湾と遠州灘(えんしゅうなだ)とを分けるように突出する。一帯は牧ノ原台地の延長にあたり、標高30~40メートルほどの隆起海食台地で、第三紀層の相良(さがら)層群の上に白羽礫(しろわれき)層とよばれる海成の円礫層が堆積(たいせき)している。海岸沿いには波食台や岩礁も露出し、宝永地震(ほうえいじしん)(1707)や安政地震(あんせいじしん)(1854)に際しては隆起運動もみられた。東の沖合い3キロメートルほどに御前岩などのある沖御前暗礁があって、航行上の難所であるので、岬端部に江戸時代、灯明(とうみょう)番所が置かれ、イギリス人技師ヘンリー・ブラントンRichard Henry Brunton(1841―1901)によって1872年(明治5)工事着工、1874年に洋式の御前埼灯台(国の重要文化財)が完成した。特別地域気象観測所、無線航路標識などの施設もある。台地周辺ではツバキ、ヤマモモなど暖地性照葉広葉樹の林相に特色があるが、冬の西風が強く、砂丘も発達し、台地西向斜面には風食礫である三稜石(さんりょうせき)があり、「白羽の風食礫産地(しろわのふうしょくれきさんち)」として国指定天然記念物。また、御前崎海岸には毎年アカウミガメが産卵に訪れ、「御前崎のウミガメ及びその産卵地」は国指定の天然記念物である。御前崎遠州灘県立自然公園に指定されている。
[北川光雄]