日本大百科全書(ニッポニカ) 「牧ノ原」の意味・わかりやすい解説
牧ノ原
まきのはら
静岡県中部、大井川下流と菊川の間に広がる洪積台地。かつての大井川の隆起扇状地。台地面の高さは北の島田市の安田原(あんだばら)で標高約270メートル、南へ緩やかに低まり、南端の御前崎(おまえざき)の隆起海食台では標高50メートルになる。台地面は周辺からの侵食谷によって開析され、樹枝状の形態をもち、岡田原、権現原、長者原、朝比奈原(あさひなばら)など局地的名前も多い。表面は河成の牧ノ原礫(れき)層が堆積(たいせき)しているが、南端では海成の礫層となる。現在は大茶園として知られるが、かつては原野が広がり、馬牧や牧野の存在が地名の起源ともいわれる。茶園の開拓は1869年(明治2)徳川家旧臣の士族や大井川川越人夫の入植によって始まり、近在の農民の開墾も加わり産地化が進んだ。現在約5000ヘクタールの茶園が広がり、農研機構野菜茶業研究所と静岡県農林技術研究所茶業研究センターが栽培・製茶技術を進めている。2002年(平成14)大井川上流に長島ダムが竣工、大井川の洪水調節とともに、台地の農業用水として利用されるようになった。
[北川光雄]