証拠の評価に関する裁判上の用語で,事実の存否に対する内心の判断,意識の状態をいう。〈内的確信〉を意味するフランス法のアンティーム・コンビクシヨンintime convictionの観念に由来し,日本では明治初期からこれが〈心証〉と訳されて用いられている。とくに証拠に基づき事実を認定する裁判官について用いられる場合が多い。裁判官は事件を審理する過程で,個々の証拠に接してこれらの証明力を評価し,それを集積・総合しながら,しだいに事実の存否に対する確信をつくりあげていく。このような裁判官の内心の判断の過程を〈心証の形成〉と呼び,〈自由心証主義〉の下では,裁判官の心証形成に対して法律による特別な規制はなく,その自由な判断にゆだねられているのである。〈心証〉の程度にはさまざまの段階が考えられるが,とくに刑事裁判において被告人に有罪の判決をするためには,〈合理的な疑いを超えるbeyond a reasonable doubt〉高度の確信が生じるまでの心証が形成されることが必要であるとされている。
執筆者:酒巻 匡
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