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自由心証主義 じゆうしんしょうしゅぎPrinzip der freien Beweiswürdigung

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

自由心証主義
じゆうしんしょうしゅぎ
Prinzip der freien Beweiswürdigung

裁判所が事実を認定するに際し,証拠資料の範囲や信用性の程度につき,法律上なんら拘束されず自由に判断できる主義。法定証拠主義に対する。近世フランス訴訟法が採用してから,近代国家はいずれもこれにならっている。 (1) 民事訴訟法は明文でこの主義を認めている。ただし,特別な事情に基づく若干の例外はあるが,原則として証拠方法の範囲を制限せず,または証拠価値に関する規制をしない。したがって,裁判所は証拠調べの結果だけでなく,弁論の全趣旨をも考慮して自由に事実を認定することができる。その際,裁判所は経験 (法) 則および論理法則に従って合理的な判断をすることを要し,これに反した場合には,法令違背に準じて上告理由となる。

(2) 刑事訴訟法にも同様に明文の規定がある。ただ自白証明力には制限が設けられ,補強証拠がなければ自白だけでは有罪を認定することができない点 (憲法 38条3項および刑事訴訟法) で例外が認められ,また事実の認定は必ず証拠によることを要し,弁論の全趣旨によって判断できない点が,民事訴訟の場合と異なる。刑事でも経験 (法) 則および論理法則に従うことを要し,これに反すると訴訟手続の法令違反として控訴,上告理由となる。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

自由心証主義

日本では元々刑事訴訟法318条で裁判官に対して定められ、裁判員法62条で新たに「証拠の証明力は裁判官及び裁判員の自由な判断に委ねる」とされた原則。たとえば、犯行を目撃した証人が「被告が犯人だった」と証言し、その証言を証拠とすることを決めたとき、証言の内容をどのくらい信用するのかというのは、裁判官と裁判員が自由に判断できる。ただし、有罪かどうかは自由気ままに判断できるわけではなく、証拠によって被告が有罪でないことを疑う余地がないほどの確信がなければ、有罪にはできない。自由心証とほぼ同じ考え方が、フランスの「内なる確信(intimeconviction)」。

(2009-01-12 朝日新聞 朝刊 2社会)

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デジタル大辞泉の解説

じゆうしんしょう‐しゅぎ〔ジイウシンシヨウ‐〕【自由心証主義】

裁判に必要な事実の認定について、証拠の評価を裁判官の判断にゆだねるという考え方。日本の民事刑事裁判では、この主義を採用。→法定証拠主義
[補説]日本の裁判員裁判では、裁判官と同様にそれぞれの裁判員も証拠の証明力を自由に評価することができる。

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百科事典マイペディアの解説

自由心証主義【じゆうしんしょうしゅぎ】

証拠資料に基づいて事実の認定をする場合に,証拠の評価について法律上の拘束を設けずに,裁判官の自由な判断にまかせるたてまえ。法律上の拘束を設ける法定証拠主義に対する。

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世界大百科事典 第2版の解説

じゆうしんしょうしゅぎ【自由心証主義】

(1)裁判における事実認定に際し,証拠の証明力の評価について法律によるなんらの拘束も設けず,これを裁判官の自由な判断にゆだねる主義。フランス法の証拠の評価を裁判官の内的確信にゆだねる制度système de l’intime conviction,ドイツ法の自由な証拠評価の主義Prinzip der freien Beweiswürdigungに相当する語である。これに対し一定の証拠に特別の価値を認め,その証拠があるときは必ず一定の事実を認定しなければならないとか,一定の事実を認定するには一定の証拠が必要であるというように,法律によって裁判官の判断を拘束する制度を〈法定証拠主義〉と呼ぶ。

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大辞林 第三版の解説

じゆうしんしょうしゅぎ【自由心証主義】

訴訟において、証拠の範囲や信憑しんぴよう性について裁判官の自由な判断を認め、これに法律上の制限を加えない主義。 ↔ 法定証拠主義

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

自由心証主義
じゆうしんしょうしゅぎ

裁判所が裁判をするのに必要な証拠の証明力を裁判官の自由な判断にゆだねる主義をいう。これに反して、証拠の価値を法律において定めておいて、ある証拠が存在するときは、かならず、ある事実を認めなければならない、としたり、また、ある証拠が存在しなければ、ある事実を認めてはならない、とするように、裁判官の証拠に対する価値判断に制限を加えようとする考え方があり、これを法定証拠主義という。そして前者を積極的法定証拠主義、後者を消極的法定証拠主義と名づけている。たとえば、ドイツでは、カール5世皇帝の1532年のカロリナ法典が、この法定証拠主義をとっていた。そこでは、有罪の言渡しをするためには、自白または信憑(しんぴょう)すべき2名以上の有力証人(目撃証人または聞き証人)の証言を必要とする旨の規定が置かれていた。そして一定の条件のもとで、拷問を行って自白を追求することが許されていた。しかし、近代啓蒙(けいもう)思想の発展とともに、拷問の制度が廃止され、この拷問の廃止ということが、証拠裁判主義、自由心証主義の確立を促すことになった。[内田一郎]

刑事訴訟における自由心証主義

日本でも明治の初めまで自白必要主義がとられていた。すなわち1873年(明治6)6月の改定律例第318条は、「凡(およそ)罪ヲ断スルハ、口供結案ニ依(よ)ル。若(も)シ甘結セスシテ、死亡スル者ハ、証佐アリト雖(いえど)モ、其(その)罪ヲ論セス」と規定して、有罪判決を言い渡すためには、被告人の自白を必要とするとの原則をとっていた。これは、1876年6月10日太政官(だじょうかん)布告第86号によって、「凡ソ罪ヲ断スルハ証ニ依ル若シ未タ断結セスシテ死亡スル者ハ其罪ヲ論セス」と改められ、ここに自白必要主義は撤廃され、証拠裁判主義が採用された。さらに同年8月28日司法省達第64号は、「断罪証拠条件」として、8種の断罪証拠を列挙したのち、「前件ノ証拠ニ依リ罪ヲ断スルハ専(もっぱ)ラ裁判官ノ信認スル所ニアリ」として、自由心証主義を採用することを明らかにした。1880年の治罪法第146条、1890年の旧旧刑事訴訟法第90条、1922年(大正11)の旧刑事訴訟法第337条、現行刑事訴訟法第318条も一貫して自由心証主義を維持している。すなわち証拠の価値判断について、裁判官の合理的な論理法則、経験法則を踏まえた自由な判断に信頼する立場をとってきたのである。ただ憲法第38条3項、刑事訴訟法第319条2項・3項は、自由心証主義に唯一の例外を設けて、万が一にも誤判が生じるようなことのないようにするため、判決裁判所の面前以外でなされた自白、ないし公判廷の自白であると否とを問わず、およそ自白の証明力に制限を設けて、自白のほかに補強証拠が存在することを要求している。[内田一郎]

民事訴訟における自由心証主義

民事訴訟法においても、その第247条は、裁判所は判決をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果を斟酌(しんしゃく)し、自由な心証により事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する、と規定し、自由心証主義をとることを表明している。つまり、この主義は、裁判所が判決の基礎となる事実を認定する際に、その事実の存否の判定を、裁判官が審理に現れたいっさいの資料状況に基づいて自由な判断により到達する心証に任せようとする原則である。しかしながら、自由心証の基礎となる資料は適法に得られたものであることを要するし、いくら心証の形成が裁判官の自由であるといっても、経験法則や論理法則に従ったものでなければならない。そのため、判決の理由中には、いかなる資料からいかなる確信を得たかを、通常人が納得できる程度に示さねばならないとされている。これらの点に不備があると、法令違反の場合と同様に上告理由となる。ただし、この主義の例外として、特別の理由から一定の事実認定につき証拠方法が制限されている場合がある(たとえば民事訴訟規則15条、23条1項、民事訴訟法160条3項、188条など)。なお、民事訴訟において裁判上の自白があると、弁論主義の行われる範囲内では、その陳述の真否を判断することを要せず、またこれに反する認定もできないが、この場合は、当事者間に争いがないためその事実につき裁判官の認定権が排除されるのであって、自白を法定証拠としているわけではない。[内田武吉・加藤哲夫]

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世界大百科事典内の自由心証主義の言及

【証明】より

…証明は通常,過去の事実に関するものであるため,数学的,論理的,科学的証明に対して歴史的証明といわれる。訴訟上の証明は,何を(証明の対象),何によって(証拠方法),どのように調べ(証拠調べ),どのように認定し(自由心証主義),どの程度で証明があったとするか(証明の程度)が問題となる。 証明の対象は,通常は法規の要件に相当する事実(主要事実)であって,おもに過去の事実の存否であるが,将来の事実の場合もあり,経験則や外国の法規も証明が必要となる場合がある。…

※「自由心証主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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