不可欠アミノ酸ともいう。アミノ酸のうち動物の体内では合成ができないか,きわめて合成しにくく,外から食物として取り入れなければならないアミノ酸をいう。独立栄養生物である植物や細菌類では,みずから必要なアミノ酸のすべてを生合成できる。ネズミの詳しい成長実験では,次の10種の必須アミノ酸が確認されている。バリン,ロイシン,イソロイシン,トレオニン,フェニルアラニン,トリプトファン,メチオニン,リシン,ヒスチジン,アルギニンである。このうちアルギニンは動物によってある程度合成されるが,成長期の必要にこたえられるほど合成できない。ヒトの場合,ヒスチジンは成人では可欠アミノ酸であるが,幼児には成長促進の働きがある。この点からヒトではアルギニン,ヒスチジンを除いた8種のアミノ酸を必須とすることができる。それ以外のアミノ酸はそれ相応の炭素骨格さえあれば,グルタミン酸,アスパラギン酸などの窒素源からアミノ基を転移させて生体内で合成することができる。必須アミノ酸はすべてL-型が有効であるが,リシン,トレオニン以外はD-型も有効である。これはD-アミノ酸オキシダーゼによってケイ酸となり,アミノ基転移酵素によってL-型に変わりうるからである。また,相応するα-ケト酸,α-ヒドロキシ酸で代替できるものも多い。また,鳥類では別にグリシンが不可欠であるといわれる。無脊椎動物についての研究は少ないので,脊椎動物の必須アミノ酸がそのまま適用されるかどうか不明である。
必須アミノ酸以外のアミノ酸は,肝臓のほか筋肉,腎臓,腸などで合成および分解される。なお,分枝アミノ酸であるバリン,イソロイシン,ロイシンは脳と筋肉で分解され,その他の必須アミノ酸は主として肝臓で分解される。
→アミノ酸
執筆者:腰原 英利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
食品タンパク質の構成アミノ酸は約20種あり、そのうち栄養上とくに重要なアミノ酸を必須アミノ酸、または不可欠アミノ酸とよぶ。必須アミノ酸はどの1種が欠けても、発育、成長、体の維持に影響し、成長を停止したり、窒素平衡をマイナスにする。必須アミノ酸は体内でまったく合成されないか、合成されても非常にわずかであるため、食事からかならず摂取しなければならないアミノ酸である。
必須アミノ酸はイソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンの9種である。またシスチンはメチオニンの一部を、チロシンはフェニルアラニンの一部を代替できるので、メチオニン+シスチン、フェニルアラニン+チロシンの合計量を計算する。食品タンパク質の栄養価は必須アミノ酸の量によって決まってくる。必要量に対してもっとも不足する必須アミノ酸を第一制限アミノ酸とよび、二番目に不足するアミノ酸を第二制限アミノ酸とよぶ。リジン、メチオニン、トリプトファン、トレオニンの4種の必須アミノ酸が制限アミノ酸になることが多い。
必須アミノ酸以外のアミノ酸を非必須アミノ酸とよぶ。非必須アミノ酸は体内で合成されるので、かならず食事からとらなければならないものではないが、必須アミノ酸のみの場合より非必須アミノ酸を加えたほうが成長もよいので、不必要なアミノ酸という意味ではない。アルギニン、グルタミン酸などがその代表である。
[宮崎基嘉]
不可欠アミノ酸,必要アミノ酸ともいう.タンパク質を構成しているアミノ酸は約20種類であるが,このなかで外から摂取しなければ生育不可能なものと体内で合成できるものとがある.摂取が必要な一群のアミノ酸を必須アミノ酸という.生物体によって異なり,ヒトではイソロイシン,ロイシン,リシン,メチオニン,フェニルアラニン,トレオニン,トリプトファン,バリンの8種類で,ネズミではヒスチジン,アルギニンが加わり,トリではグルタミン酸も必要だといわれる.必須アミノ酸は体内で十分量をほかの化合物から合成できないものであり,一つでも欠けていると,体重の保持あるいは成長に大きく影響し,栄養失調になる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ヒトはタンパク質を構成するアミノ酸20種のうち10種(Arg,Ile,Trp,Thr,Val,His,Phe,Met,Lys,Leu)を十分量合成できず,食物として摂取しなければならない。これを必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)という。高等植物は20種のアミノ酸全部を合成でき,微生物は種により合成能力がまちまちである。…
…このような栄養型を独立栄養(無機栄養,自栄養)という。これに対して動物の多くはきわめて限られた合成能力しかもたず,エネルギー源として炭水化物,脂肪,タンパク質などの高分子化合物を必要とするうえに,体を構成するタンパク質の材料である20余種のアミノ酸のうちの約10種(必須アミノ酸),補酵素などの構成成分として必要なビタミン類,不飽和脂肪酸なども要求し,それらのものを食物として摂食する必要がある。このような栄養型を従属栄養(有機栄養,異栄養)という。…
※「必須アミノ酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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