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応用気候学 おうようきこうがくapplied climatology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

応用気候学
おうようきこうがく
applied climatology

実社会への応用を目的とした気候学の一分科で,環境,産業,災害など人間生活と直接関係する問題に気候学の知識を応用することを目的とする学問分野。取り扱う対象によって産業気候学,生活気候学,防災気候学などの分野に分けられる。諸産業のなかで,特に気候と結びつきの強いのは農業で,農業生産力の増大と安定化に果たす役割は大きい。また,工業の立地にあたって,かつてはイギリスのランカシャー地方で最適の温度・湿度条件が一因となって綿紡績工業が発達し,日本でも輪島の漆器業の成立には湿潤な気候条件が作用するなど,歴史的に気候の役割は工業に対しても重要であり,現在でも工場立地条件として欠かせない一要素である。生活気候学については エルスワース・ハンティントンの『文明と気候』Civilization and Climate(1915)が有名。ハンティントンは気温と能力との関係を実験によって確かめ,人体に刺激的な最適気候は各月の平均気温 4~18℃,相対湿度 70%以下,1年間の低気圧通過回数 20回前後であると考え,これを基準として気候的活動力の世界分布図を作成し,中緯度での高度文明の発達を気候に関連づけて説明した。都市域や工業地帯で重大問題となる大気汚染も,応用気候学に関係している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

応用気候学
おうようきこうがく
applied climatology

気候と人類の生活とのさまざまな面における関係について研究する学問。環境としての気候は地球上どこにでも存在し、直接または間接に人間の生活に対して影響をもたらす。健康な若者であっても、急激な気温変化で体調を狂わせたり、蒸し暑い日には仕事の能率があがらない場合がある。われわれの住居、衣服などは、一面において気候との関係をも考慮すべき点がある。また人類の食料でもある植物は気候条件に左右されやすく、古くから応用気候学のテーマである。さらに昨今のように農業生産の国際的分化が明瞭(めいりょう)になると、他国の気候変動の影響を受けることも出てくる。気候変動自体は気候学の課題であっても、その結果は応用気候学的な意味をもつ。また今日的な問題として、人間による意識的また無意識的な気候の改変の結果と人間生活との関係がある。前者はたとえば流域変更による砂漠の緑地化などがあり、後者は燃焼の結果としての空気中の炭酸ガスの増加と気候との関係、地表面を緑地からコンクリートなどに変化させたことと都市の気候の変化などがあげられる。地球温暖化の生活に及ぼす影響など新しい課題もある。このように応用気候学は非常に幅が広く、気候学の専門家ばかりでなく、多くの研究分野の研究者が、それぞれにまた共同して取り組むべき問題を含んでいる。[吉村 稔]

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世界大百科事典内の応用気候学の言及

【気候学】より

…別の基準で分類すれば,物理的気候学と地理的気候学とになる。系統的気候学は,さらに静気候学(統計気候学),動気候学(気団に注目する気団気候学,天候の推移に注目する天候気候学,天気図に注目する総観気候学などに細分),古気候学(過去の時代の気候変化などを研究する分野),応用気候学に分けられる。また,研究対象となる現象の大きさによって大気候学,中気候学,小気候学,微気候学などに分けられる。…

※「応用気候学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報